酷い有様
格郎がドマルンマを出てから一ヶ月がたった。この一ヶ月でトハクゥルにも大分近付いたが、その分魔物の出現も増えてきていた。村に立ち寄れば、既に魔物の手に落ちていたこともあった。格郎が出会った魔物の中には知能の高いものや強い膂力をを持つものなど様々いたが、今対峙している魔物は知能の高い、強い膂力を持った魔物であった。
「フー…フー…」
獣ような息遣いをする黒い肌の魔物。弓と矢を背負い、腰には剣を下げていた。身の丈は2mはあるであろう。全身の筋肉は隆起し、血管は浮かび上がっていた。
「…」
馬はやられてしまった。魔物が放った弓矢があたり、首を吹き飛ばされた。尋常ならざる膂力。投げ出される前に馬から飛び降りたが、更にそこを狙って矢を放ってきた。空中では避けられないので咄嗟に剣でいなした。知能も高い。弓の扱いもうまい。
「…なるほど」
おまけに頭数もそろえていた。囲まれている。格郎は油断なく構えた。
「…急いでるんだが」
言い終える前に飛びかかってきた。
最悪だった。馬もやられ剣も砕かれボロボロだ。馬を失ったのは痛すぎる。移動速度が大幅に落ちる。さっきの一戦も含めて大幅な時間のロスだった。
「あぁ…くそったれ」
魔物の肉と臓物はあちらこちらに散らかっていた。血と糞の臭いのする血だまりの中で、格郎は呻いた。