95/243
春
優しい春が今年も訪れる
山々に響くやまびこ
隠した反逆の刺々しい雨の音
青い車が通り過ぎる頃
出したくもない出し惜しみに
心のかけらを詰め合わせる
ペダルを漕いで 強い日差し
いつもの風と同じように
手のひらの先に浴びる あの夢の話
透き通る 曲がりくねる道を歩く
虫の声 はしゃぐ気持ち 桃色の味
気持ちを塞ぎ 耳を塞ぎ
何にも見えなくなった後で
歌えなくなった歌を もう一度
心の底から叫んでやる
言わなかった言葉たちで
宣戦布告 瞼を閉じた
良いところばかりを掻い摘んで
さらけ出そう すべてを
殺伐とした 街の形を睨みつける
優しい春の風が吹く