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車窓
緑ばかりの景色が続く
時折見える 鉄塔は
何年も前から錆び始めている
機能を果たさぬ滑り台
深々と被るニット帽の先
遠くでトラックのクラクション
人工的な道筋がぶつかる
いつの間にかできた駅
無人にその場を少し温めている
ロクでもないと見下ろした
ジャージ姿は 鏡に映る 昨日の姿
眠らない夜をやり切れずに過ごして
懐かしい匂いの峠を下る
期限の切れた家が並び
あとは惰性に身を委ねる
そんなため息が当たり前になり
とっくに瞳は死んでいる
何処かに失くした 約束は
星と共に爆発を終える
排気ガスが視界を支配させた
歩道橋とアメ玉を思い出す
葉が落ちる 瓦礫は増える
ここには居ない
誰も居ない