88/243
月を割る
歪んだ空 雲がなにかを主張する
理不尽な金縛り 震える手先を
オレンジ色の 水平線へ
波は穏やか 古い船
渡り鳥が 中途半端なスピードで
横切る 夕暮れ
風はゆっくりと吹く 月がのぼる
等間隔に並べられた空き缶と
置いてきぼりにしてきた 約束と
はにかむように 腰を添える
どこまでも続くような
月光の中、地平線を眺めていた
何の役にも立たないものを
ただひたすら守るだけ
攻撃された 弱気心は
綺麗な水を 歪ませている
本当はどこにもないものを
ただ大切に守っている
馬鹿にされようが関係はない
完結された一章を
遠い記憶をめくっていく
人の気持ちを無視する中毒者
味方はどこにもいないのに
乱撃戦をやめはしない
隠している本能を
解放させる秒読みが始まる
黙って過ごした日々がまもなく
爆発をして壊れてゆく
守りに入ったフリをしたけど
我慢の限界 月を割る
モンシロチョウが飛ぶ頃に
言わずにいた言葉を
すべてさらけ出してやる