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未だ触れず
頼りなく近づいた香り
素直になれず少し離れる
こっちを覗いた目先には
気にし過ぎる姿がある
月と月が重なった時
包まれる光に漏電する
少し手を伸ばしたならば
我慢をせずに伸ばせたならば
届く距離にある鼓動
ふんわり微笑む心の中は
ほとんど知らない嘘がある
蛍光ペンでなぞった文字は
二人だけしか知らないもの
黒を白で挟んで笑う
見たことがない瞳が写る
少し曲がった花をなぞって
合わせた歩幅で街を歩く
乾いた喉に溢れる液体
噛り付いた果実のように
うまく酸味を残している
竹やぶかき分け進んでいく
名前も知らない花が咲く
本音と建前ぐるぐるまわし
微妙な距離の会話の中
薄いバリアを壊した明日は
原因不明の痛みを作る
砕けた笑いに身を委ねて
未だ触れずにいる
すぐ来る再開、頬は上がった