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踏み出す足と最終駅
深緑の情けない表情
憧れだらけのやぶれた襖
教科書通りのコーディネート
撃たれたベルトが目に余る
驚きひとつもないままに
駆け足で降りる無人駅
背伸びした化粧は大人びた色気
足の傷が正体を現す
目覚まし時計の顔を並べて
僅かな気持ちで送る箱
電灯虚しく季節は変わる
熱を帯びた肘と肘
二度と気持ちは触れ合わない
マーブル模様の床を見下ろし
砕けた本音を腐らせない
かぶれていくモノ横に見て
拭った汗の青写真
きりきり舞いの衣装はいずれ
乾いた生活潤す旗
唯一信じた切らない髪
ガタガタうるさいショベルカー
欠点踏んだ対峙した時代
あの頃確かに見たものは
ハッピーソングのクライマックス
時代遅れの襟を整え
踏み出す足と最終駅
帰る場所は何処にもなく
帰り方も忘れてしまった
叩いた埃は落ちてゆく
えんじ色した窓の外
闇に光ったほこりの数と
だいたい同じシワの数
得体の知れない終末へ
最終列車が車輪を動かす