46/243
密室
鍵はしばらく赤いまま
誰も気付かぬ空間で
叫ぶ声は壁にぶつかり
そのまま身体に当たるだけ
熱気の矛先、未だ未定
転がり落ちるガラクタは
内ポケットの大切なもの
安息のベールは吹き飛んだ
夜霧の向こうは遠い雨
角張った予定調和
水面密かに滑っていく
ふざけた兜を研磨した
再なる駆け落ち一駅の夢
鍵は未だに赤いまま
擦れる滑車は頭の上
芯を残して葉はなくなる
つぶてのような点々は
かぶれた皮膚の悲鳴の証
それすら鼓膜を突き破る
熱気の矛先、未だ未定
ノックの音が聞こえてくる
鍵を開ければ、熱気がゆく
バケツに溜まった水に浮かぶ
眉を歪めた顔がある