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近い月
ぼんやり浮かぶは近い月
旗は揺れる無造作に
数個の電球増えてきて
涙とまつげがくっつくところ
ポンプのように足りない心は
吐けない痛みを滑らしている
ぶら下がったタンポポは
飛ばずにそこに居座るだけ
銀に光る背伸びの塊
古い匂いがする襖
赤い造花は痛々しくも
こぼれた形へ流れ込む
黄ばんだ傘は主張はせずに
雑木林をくぐり抜ける
挟んだ輪っかにめくるめく
気を緩んだ微笑みは
少し期待を外れている
特にいらない下手なねぎらい
咥える口は何か言いたげ
ぼんやり浮かぶは近い月
ちくちく伸びる万華鏡
無音の音がうるさく響けば
目を閉じひたすら思うがままに