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呼んでおくれ
いつでもいいから呼んでおくれ
服の裾を引っ張って
気がつくように呼んでおくれ
準備はさほどできていない
余裕もそれほど持ち合わせていない
何も見ずに歩いているけど
気がつくように呼んでおくれ
なるべく素直に見てみるから
脳裏の遠くの山を越えて
遠くで過ごす知らない図形
絶対的な居心地と
よく似た空の名の下に
誰も知らない花を植えよう
すくすく育ったその隣に
小さな花を育てよう
何色だってかまわない
花言葉も知らなくていい
花じゃなくてもかまわない
これからよく見る掌と
色んな海も映画も歌も
無意味な時間も楽しもう
小さな声でもかまわないから
向かいのホームや
喫茶店の隣の席
雪の積もった真夏日や
緑に吹かれた氷点下
時計の針はそろそろ動いて
すれ違い様のふきのとう
隠れた気持ちはきっとそんな
綺麗なままの青色だといい
ふわふわ歩くその歩幅で
何故かぴったりくっ付いている
どうかそこから呼んでおくれ
マイペースな電波を飛ばして
気がつくように呼んでおくれ