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あこがれ
白い谷へ堕ちゆく酒ビン
隣同士並んだ綺麗な春は
優しく空へ包まれる
ざらつく芝生は洞窟へ重なる
厚い綿をつたった指先は
数千本の流れ星を撫でる
冷たい瓶は結露をつけて
甘い匂いの蒸気は揺れる
弱者はオーロラ見つめながら
ぬるま湯の瞼抱きしめる
波際を足跡がゆっくりと進む
駆け抜けたメロディーは
一音一音鼓膜に届く
見たことのない風景の写真
一番甘いチョコレート
下から聞こえる川の流れ
上から降りゆく雨音のしずく
深い海へと沈没船
きっと愛と呼ぶのだろう
詰め込まれた欲望は
忘れかけたわたしのあこがれ