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居心地
座席に向かう ふらつく足元
背筋を伸ばして 近くの海辺へ
やらなくてもいいことも
意識を飛ばす材料になる
ひと段落終えたところで
読みかけの本に手を伸ばす
停車の度に 強く求めて
眠ったふり 差し込む日差し
各駅停車で丁寧に
預けた身体を受け止める
少し濃いめの化粧をまとい
帰路へ着く者 起きたての欲望
グレーの色した カーディガン
誇張をし過ぎた くしゃみの季節
そのまま寄せる 空想の階段
遠い場所から遠い場所へ
数分間の居心地の中
末期の感情 独り舞台
明日もそして明後日も
やるせない想いを抱えて飛び乗る
袖から飛び出た 欲望の空へ
眠りは浅く 知らない内に
トタンの屋根 剥がれ落ちる
錆びた扉 懐かしい気分