いつもの顔
触れれば どこの何よりも
ふわふわしている まあるい 毛並み
誰もがほころぶ その優しさを
くり抜いた穴から 顔を出す
とっておくことが できなくて
小さいパンを 腹へおしこむ
何にも言わず ただひたすら
一日千秋の思いでいる
窮屈を拒んで 形あるだけ
痛みを抱えて 飛び込んで行った
いつもの顔で 身を委ねてくれる
いつもの顔で こっちをのぞいて
いつもの顔で 気持ちを振った
いつもの顔で 和らぐ その頬
どんなに自由の身を得ても
すぐさま戻る 輪っかに繋がる
大きな太鼓 みんなに知らせる
滅多に言わない つよがりは
年に一度の お楽しみ
一段のぼって 何かを見ている
下手な鼻歌 夢の中へ
小さな敷居も 上目遣いで
一歩も入らず 首を傾げる
無口な君が 目を細めた
できたことも できなくなって
いつかの夜明け 目をつぶった
遠くに離れて 一月足らず
ハブラシ片手に 視界はぼやける
いつもの顔で 眠りについて
いつもの顔で こっちをのぞいて
いつもの顔で 気持ちを望めば
いつもの顔で 色は鮮やか
いつもの顔を 思い出すよ
ふわふわしている まあるい 毛並み
誰もがほころぶ その優しさを
くり抜いた穴から 顔を出す
たくさんくれた 温かなひと時
無口な声は もう聞こえないけど
君の真上 咲き誇る
満開の桜 咲き誇る