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椿のとげ  作者: 谷口咲来
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《  have a dream  》




――…‥むかし昔。


あるところにそれはそれは美しい娘が誕生した。


誰もがその美しさに目を見張り、成長していくにつれてその心の美しさにも誰もがため息をついた。


草や木、花。


虫も動物も、人間も。


なんだって彼女は愛していた。


それは優しい心があってこその大きな愛だった。




そして、彼女は年頃になり沢山の異性に愛された。


たくさん求められるが答える事は出来ない。




―全てを愛す―


それは彼女の生きる意味


でも、そんなことは誰にも出来ないという事を悟り始めた。



そんな時ある男性が


『僕と結婚してくれないと飛び降りる!』


と、彼女に迫った。


彼の勝手な勘違い。


だけど、勘違いさせたのは彼女だ。


悩み悩んでも答えは出せなかった。


正直に本当のことを伝えると、彼は心底傷ついた顔をして足を踏み外し落ちて行った。




その時彼女は心を失った。



いつの間にか、暗くて狭い部屋の中で暮らし、ただ時が過ぎるのを耐えていた。


だから、部屋にある小さな窓から見える空が彼女のすべてだった。


そして、彼女は月に魅入った。


美しい月夜には歌を口ずさんだ。










そして、2年の月日が経ったある日。


その日も美しい月夜で彼女は歌を口ずさむ。


その時、窓から男の手が伸びた。


あまりに急なことに驚く。でも、この屋敷の者が此処に来るはずもない。


侵入者だと気付くが、助けを求めることは出来なかった。


何故なら


(( ココ ニ ワタシ ヲ タスケテ クレル ヒト ハ イナイ カラ ))



思考が止まるのを感じる。


そして、人の気配‥‥!?



前には男の姿があった。



この小さな窓から入れるわけもない。

呆然と月の光で顔の見えない彼を見ていた。






「オマエハココカラデタクハナイノカ?」



急に口を開いた彼は片言の言葉だ。


無性に腹が立った。


「‥‥‥出たいわ!それでも私は罪を重ねたくはない!もう二度とあんな事は‥‥ッ!!!!」



私は何故こんなむきになっているのだろうか?



「ナラバ、オレトコイ。」


「? 何を言って…」


「クルノカ、コナイノカ。ドッチダ。」




その二択は、これから人生を決めるものへと変わった。

行かなければ、きっと死ぬまで此処から出ることは出来ないだろう。


だが、変わらない毎日が約束される。



もし着いて行けば、全く違う世界へ連れて行かれ、安全な毎日からはから掛け離れることだろう。


だが、私の生涯がこの小さな窓の世界だけではないのは約束される。



なら、私は…‥






「行くわ。私を連れていって下さい!」



顔の見えない彼がフッと微笑んだ気がした。



「キマリダ。ギシキガヒツヨウダ。」



近くにやって来る足音。


コツン コツン コツン


彼女の頬に手を伸ばす。


軽く上を向かせ‥‥ 



「ッ!ん‥‥何を、して、ンン!」



彼は彼女の首筋に噛み付き、口を押さえた。



「オトナシクシテイロ。スグオワル。」



何がすぐ終わるのだ。



痛みに耐えながら、首筋から伝わる熱いものが身体全体に行き届くと首筋にある彼の口が離される。



「コレデオマエモオレトオナジモノニナッタ。」


「どういうことですか!?」


怪訝を隠し切れずに眉間に皴を寄せる。



「バンパイア‥‥イヤ。キュウケツキダ」


「キュウケツキって…ぇ?」









「今日はここまでです」


「え〜〜ぇ!なんでェ」


「というより、これ以上はわからないのですよ。」


「………ねぇ。これは、ダレの話なの?お母さん」



「さぁ…昔ばなしだから本当のお話ではないのかもしれませんね」



遠い目でしている。



「このお話。誰も知らないのよ」


「まあ、そうなのですか」


穏やかに笑うその姿は、お母さんが崇める聖母マリア様と同じ顔だと思う。



「でもこれは母さんにとっても大事なお話だから、貴方が本当に大切な人にだけしか教えないで欲しいわ」


「うん」










本当言うと今の話も聞いたことがある。この話の続きも‥‥。


いつからか、母の記憶の時間が少しずつ短くなることがわかった。


最初は小さな物忘れが続き、いつもの買い物に行って迷子になった。


そして記憶がどこかで止まったまま少しずつ記憶をなくしていった。


今はもう‥‥5時間くらいしかその日の記憶を覚えていられない。


いつしか私を見て急に大きくなったと驚いた。






お母さんの中の私は何歳?










いつか私の名前を呼ばなくなるかもしれないの‥‥?




「‥‥‥キ」




「先行っちゃいますよ」



それでも、今がある。



「もうい‥‥‥……













「あり‥ガト。さ、ヨ‥‥」




「かァサン?―――――――












「あれ?」


・・・・・夢みた?

久しぶりに見たかも…



ずいぶん、生々しく覚えている夢だ。

それに自分が全く違う人物だった。しかも、女の子



誰だったのだろう…




はたと気付くと、8時半。後30分で遅刻だ。




俺は、東条哉斗。

歳は16。高1だ。


顔はまぁ普通。キモくて困った事はないからな。


だけど女は苦手だ。色んな事があって…だからといって、困る事もないから充実はしている。






「行ってくる!」


「「「いってらっしゃぁい」」」


3つ子の妹達。


どうも俺に懐いてくるから素直に可愛いと思える。

(待て。シスコンじゃないぞ)


だけど……



「顔洗った?」


「おぅ」


「ご飯食べなくて大丈夫?」


「あぁ」


「ネクタイ忘れてるよ?」


「ハッ!?それを先に言え!」



クスクスクスクス♪



こういう所はやっぱり女だと思う。


わけもなく、からかう所が・・・はっきり言ってめんどくさい。




「哉斗クン♪遅刻だよ?」


「マジっ!?やばい!」


「「「いってらぁ」」」



チョット睨んで


ガチャッ・・・バタン




「今日も最後はシカトだね。琉夷(ルイ)


「やっぱり、今日も女が苦手みたい。哉斗クン。ねッ琉明(ルア)?」


「うん。でも、これでまだ彼女作らないでしょう。哉斗クンは私達のだもん。でしょッ♪琉生(ルウ)


「だね♪」










彼の言う可愛い妹達がこんな事を考えているとは知る由もない。






――ガラッ 



一斉に視線が集まる。


これはいつものことだ。



「哉斗ぉ!やったな、まだ来てねぇぞ。」



橘 慶妬(ケイト)


俺の‥‥友人(?)かな。やたらと構って来て、今じゃ一番一緒にいる仲だ。



「やったッ☆」


『キャーーーーーーーーーーッ!!!!』


『哉斗様が笑っていらっしゃいますぅ涙』


『嬉し過ぎるわぁ‥‥』






ハァ‥‥



深いため息をつく。


それに気付くと、いつの間にか静まり返っている。


お嬢様共はそういう弁えはちゃんとしてくれてかなり助かっている。


中学は……‥・いや。



この私立は超エリート学校で一般で受かる確率は無に等しい。(自慢ではないが、一般入学は俺一人だ)

だからというわけでもないが、周りは皆金持ちばっかだ。



―――でも、様呼ばわりは勘弁してほしいのが本音だ。






今日も何も変わらない1日だろうと、席から窓を眺めながら思った。



いい天気だな‥…



今は、桜が舞う季節




ありがとうございました。どうでしたでしょうか?この話はこれからラブストーリーを元に違う路線もちらほらと出していきますので、ご了承ください。主人公は一応男の子のつもりですが、女の子を中心とした話です。女の子は運命に翻弄されながら抗いながら精一杯恋して生きている‥‥そんな素敵な女の子を描きたいと思います。続きもお楽しみに。

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