転生少女の残念記?
あたしの名前はセリーヌ・ロワ・ディ・コルト、10歳。
1歳の時に風邪を拗らせ高熱をだし、そのおかげで前世?の記憶を取り戻しました。
前世の記憶っていっても特別な記憶なんかないですよ?高校までで途絶えてますし。
特に雑学に秀でていたわけじゃないし、あんまり読書が好きだった訳でもなく、記憶が戻っても特別な力に目覚めたなんてもちろんないです。
ええ、当初は混乱で泣きわめきましたよ!
まだ幼く発声器官が未発達で助かりました。訳の解らない言葉で泣き叫ぶ幼女!下手すると幽閉されたり殺されていたかもわかんないですね!
それでも、この世界に生まれて良かったな~と思うほど優雅な生活に心は癒されていきました。
なんと言っても自分はお嬢様、更にはメイド付ですよメイド付!
更にはあたしからすればお嬢様通り越してお姫様扱いの憧れの生活です。目指せ優雅な食っちゃ寝生活!
でも、そんな生活がある意味一変したのはあたしが3歳の時、両親揃って事故であっさりと他界しました。
たった3年の間でしたけど、父と母はあたしを可愛がってくれました。前世なんてそっちのけ、この時も思いっきり泣きました。
それはともかく、あたしに兄弟は無し!両親はそこそこ財産持った土地持ち貴族!両親の葬儀はなんか知らないおじさんが率先してやってくれました。そして、その後もそのおじさんが屋敷に常駐してお父様の代わりをしています。はっきり言って終わったって思いました!
更には、見た事もない親戚は出るわ、よく解らない貴族が尋ねてくるわ!まだ3歳のあたしを他所にすったもんだの末に齢3歳であたしは屋敷で軟禁生活?
未だに何がどうなったのかは全然知らされていませんよ。
そして10歳になる今現在まで一度たりとも屋敷から一歩も外へ出た事がありません。
最低限?の文字、計算の勉強、歴史や地理の勉強なんかは家庭教師の先生が教えてくれます。
もしかして幽閉生活?って思わないでもないですけど、まぁ衣食住が満たされている限り文句はありませんけどね!
何と言っても憧れの食っちゃ寝生活ですから!
「お嬢様、本日のご予定はいかがいたしましょうか?」
いつものようにあたし付メイドのセリーヌが朝食の後お伺いをたててきます。
ちなみに、朝はフカフカのパンに、スクランブルエッグ、紅茶にデザートでオレンジです。
前世?と変わらない朝食に満足!
この世界の生活水準って前世と変わらないのかな?スイッチ一つで部屋は明るくなるし、部屋はいつでも快適温度、部屋についているトイレは水洗です、残念ながらウォシュレットはないですけどね。あと不満はゆったり入れるお風呂がないくらいかな?
そんなわたしの目下の問題は運動不足?だんだんっていうかとっくにっていうかポッチャリさんの仲間入りをしてしまっているのです。これは、由々しき問題です。
食っちゃ寝したいからといって真ん丸になりたい訳ではありませんよ!一応女の子ですから!
楽して痩せれるなら大歓迎なのです!っという事でセリーヌさんにお尋ねしましょう。
「セリーヌ、楽して痩せる方法はない?」
「は?」
「えっと、この頃なんかポッチャリしてきてない?ほら、この辺とか・・・」
「そうですねぇ、お嬢様は運動されませんから、それならまずお庭の散歩からされますか?」
セリーヌの何気ない言葉に、あたしは驚きを露わにします。お庭に散歩!え?散歩してもいいの?
あたしが、あまりに吃驚しているのに、今度はセリーヌも吃驚しています。どうやら、今まで外へ出なかったのはあたしが望まなかったからだったみたいです。
「うん、お庭を歩いてみましょう」
セリーヌと、はじめて屋敷の外へと足を踏み出しました。
「おお~~」
思わず驚きの声がでますよ。庭は公園ですね、しかもそこらじゅうに花が咲き乱れてます。
「ふわぁ~~~」
あたしがあっちへフラフラ、こっちへフラフラしているうちに、なぜか段々と庭の人口密度が上がっていきます。
「うん?」
いつの間にかお庭にいる人達皆があたしを見ています。なんでしょうこれ、ちょっと怖いですね。
おどおどしているあたしを他所に、屋敷から慌てたようすでおじさんが飛び出してきました。
「フローリア!どうした」
「え?あの、お外に出てみたかっただけですが」
余りの勢いにあたしは驚きでドングリ眼です。その様子におじさんはホッとしたように息を吐きます。
「うむ、そうか。外はどうだ、美しかろう」
腰を落し、視線をあたしに合わせておじさんが優しく尋ねてきます。
あれ?なんか予想してたのと違う感じがします。あたしって軟禁されてたんじゃないのかな?
「はい、お庭がすっごく綺麗です。いろんな花が咲いてますし、妖精さんが飛び交って・・・妖精?!」
妖精ですよ妖精!ふわぁ~~庭のいたる所に妖精が飛び交っています。さっきまで見えなかったのに突然なんで見えるようになったんでしょう?っていうか妖精っていたんですね!
「ん?妖精は初めて見るのか?そうか、今まで外に出た事が無かったからな」
「妖精たちは余程の事が無いと建物の中へは入って来ませんからね」
おじさんも、セリーヌも妖精が見えて当たり前の表情です。
おお、この世界はファンタジーだったのですね!今まで思いっきり損してたじゃないですか!
「も、もしかして魔法なんかも本当にあったりしちゃう?!」
今まで読んできた物語では、普通に魔術師がいたり、獣人がいたり、もちろん龍だっていました。
妖精がいるんだから魔法だってあってもおかしくはないですよね!
勢い込んで尋ねるあたしの様子に目を丸くしながらも二人は普通に返事をしてくれました。
「うむ、あるな」
「魔法ですか?ありますよ?」
な、なんという事でしょう、まるで、それがどうした?っと言った様子で回答されます。
「覚えたいです!魔法覚えたいです!」
「ん?そうか、では家庭教師を頼むか」
あまりにあっさりと許可が下りたので逆に吃驚です。
でも、これで憧れの魔法使いになれるのです。空だって飛べるかもしれません。
っと思っていた時期がありましたね・・・
初めて外へと出た日から一年が過ぎました。あの日の翌日から魔法使いの家庭教師だって付きました。
でも、魔法って、魔法って、考えてたのと全然違うんです!
例をあげると、火をつける為に妖精さんにちょっとマナをあげる。一人の妖精さんでは出来ることが限られるので、大きな火を出すにはいっぱいの妖精さんにマナをあげてお願いしないといけません。
これって妖精魔法ではないでしょうか?ゲームとかだと精霊魔法?
あたしは耳が尖ってなんかいませんよ?
マナがあるなら、ファイヤーアローや、ファイヤーボールなんか出来そうなんですけど出来ないんです!
マナを様々な形へと媒介してくれるのが精霊さんだそうです。
あと、更に残念なのは獣人さんとかはいませんでした・・・見て見たかったのに。
でも、魔獣はいましたよ!おじさんが小さな犬の様な魔獣をプレゼントしてくれました。
「う~~~わん!」
「がぅ」
うん、コミニュケーションはばっちりです。ルンと名付けた魔獣は、真っ白ふわふわでまだ豆芝くらいの大きさです。けど、あと一年もすればあたしを乗っけても問題ないくらいに大きくなるそうです。
あ、魔獣って言ってもマナをご飯にするので人を襲う事はないそうです。どちらかと言えば普通の猪や牛なんかの家畜の方が危険だそうです。
その他にも、この世界では妖精さんのお手伝いで作物が出来るので、いっつも豊作です!
何をするにも妖精さんのお手伝いで成り立っているので、妖精さんに嫌われたら生活が出来なくなります。
「お嬢様、しっかりお勉強しないと妖精さんに嫌われて苦労しますよ?」
小さい頃から言われていたこの言葉の意味がやっと解りました。
でも、なんで勉強しないと嫌われてしまうのでしょう?
ちなみに、妖精さんは負の感情を嫌うので、悪い事を考えてる人には近づかなくなるそうです。おかげで、この世界では戦争もありません。
そういえば、いまさらですけどあたしは両親を失ったショックで引き籠りになっていたと思われていたそうです。最初の数ヶ月は泣き暮らしてた記憶があるので一概に否定はできませんけど、それで10歳まで放置と言うのもどうなんでしょう?
どう接していいか解らなかったのでメイドさん達に任せて放置していたそうです。けど!それってどうなんでしょう?おじさんが未だ独身な理由がなんとなく解る気がします。
「大人になって困らない様に教育はしていた!」
「情操教育って言葉をご存知ですか?」
「絵本や童話を与えていた!」
「・・・・・・・」
うん、なんというか、ダメな大人の典型でしょうか?
「妖精には嫌われておらん!」
そうですね、すべて妖精基準ですもんね、この世界。
「おお!フローリア!お前が欲しがっていた魔獣の子供が入荷したそうだぞ」
魔道具を使って妖精と何か話をしていたおじさんが、突然満面の笑顔でそう告げます。
とにかく、この世界はすべて妖精さんの御蔭で成り立っているのです。
電話の代わりも妖精さんです。どんなに離れてても一瞬で意思疎通ができるのです。だから遠く離れた人との会話も妖精さん伝いにあっという間です!伝言方式なので、時々意味を間違えてしまう人もいるそうですけど。
「ほんと?ルンにお嫁さんがくるのね!」
「どっちもまだお嫁さんにはまだ幼いがなぁ」
おじさんはそんな事を言ってますが、先程までの空気を換えようとしているのがありありです。
いっつもお菓子やプレゼントで許されるとは限らないのですよ!
今回はゆるしてあげますけど!
この世界の料理は普通においしいです。実際前世の世界よりも数倍食べ物は豊富で美味しいのではないのかって思っちゃいます。
冷蔵庫もあります。エアコンだってあります。万年温暖な気候なのでエアコンをわざわざ家に設置する人はいないみたいですけど。それに、事故と病気以外の危険はありません。みんなのんびりふわふわです。
病気は薬草がメインですね、治癒魔法は無いみたいです。妖精さんに伝え間違うとある意味事故が発生してしまいますから。ある意味これも伝言ゲームの怖さでしょうか?
妖精さんの最大の欠点は記憶力だそうですから。
娯楽でも、この世界は優秀です。
妖精さんが動かす駒が盤上でバタバタ動く妖精戯という将棋の様な遊びもあります。これってすっごい楽しいのです。インターネットやテレビなんかは無いですけど、無くても特に困りませんから。
あたしも別にいらないっかな?って感じです。それよりも魔獣でもふもふ幸せです。
でも、最近ふと思います。あたしの転生の意味ってあるんでしょうか?
魔王なんて聞いたこと無いですし、神様も聞きません。みんな今の生活に満足してます。
この世界に住む人は、道楽や趣味で料理や娯楽もどんどん発明します。
だからあたしものんびり頑張って生きて行こうと思いますよ?
「ガゥ」
ほら、ルンもそれで良いっていってますもの。
あらすじでも書いたのですが、転生した先が争いのない平和で、みんな幸せな世界でも良いじゃない!って気分で書いてみました。もともと短編でっと書いてみたんですけど、プロローグみたいでなんか短編としてなりたってないような・・・