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蛙のお姫様【仮】  作者: stenn
一章
6/61

回収

 もはや変態で危険人物なのは兄様の気がするが――気のせいだろうか。兄様の宣言に私も男も固まっていたがやがて私たち以外の第三者が現れたことによって事態は収束した。



 パンパン。手を叩く乾いた音が辺りに響く――。



「はいはい。そこまで、そこまで。向こうで伸びている賊をぼこぼこにしたのは君ですか?」



 そこには何と言うか。眉目秀麗な青年が立っていた。サラサラと風に靡く蜜色の髪。琥珀の双眸。整った顔立ち。すらりと伸びた手足。ニコニコと笑顔を浮かべる完璧な青年は、隣に不満そうな顔を浮かべている男と同じような衣服を纏っている。であるのにこれほど印象が違うのはやはり顔の差だろうか。さわやかな風が吹き抜けて行くようだ。



 おうちに帰りたい。呪文の様に心の中唱えた言葉が浄化されるように塵となって消えて行った。



 ともかくこれ以上は無駄。そんな事を悟ったかの様に兄様は持っていた剣を鞘の納めながらその青年を不機嫌そうに見た。消化不良といった所だろう。



「――だって。妹に埃吹っかけたし」



 ほうっと見惚れている私を睨んだあと、ポツリ落とす。



「……末恐ろしい子ですね。大人五人を自分自身は無傷で倒すとか――一瞬で。」



 クスクスと彼は柔らかく笑って見せた。



 それにしてもーーと私は青年の肩越し、男たちがいたはずのところに目を向けた。いつの間に来たのだろう。件の男たちが伸びている所に馬車が付けてあったのだ。領主様の質素なそれとは比べ物にならないくらい贅沢な装飾と金が施された馬車。それを取り囲むように白い衣服を着た男たちが馬に騎乗している。ちなみに馬から降りている者達もいたが彼等は何が作業を行っているようだった。



 きっと伸びている男たちに付いて調べているのだろうか。



 落ちた荷物を拾い上げながら――途中『ライラ観察日記』とか書いてある嫌なものを見たけれど見なかったことにした――そう考えていると一人の男がこちらに向けて走って来る。まだ若い。少年と言っていいほどの彼はどこか緊張した面持ちだった。幼さが残る顔に赤みが差している。



「奴らの捕縛整いました」



「うん――ここだと、クリェデール伯爵の土地ですねぇ。……すぐさま連絡を付けてそこに移送して置く様に」



 『は』青年に要件を伝えた男は短く言うと去っていく。そのまま切れ長の目をこの中で一番大きな男に向けた。それはどこか冷たく鈍い光を宿していた。責める様に。ただ、男――デリフィスは気にも留めていないようで肩を竦めただけだったけれど。



「で、デリフィス。何してるんですか? こんな子供と遊ぶことを許可した覚えはありませんが。しかも、我らが姫を護ってくれた子供なのですよ?」



「姫――?」



 兄様が小首を傾げると私もつられるようにして傾げていた。兄妹そろって同じような顔をしていたらしい。それが面白かったのか、青年は肩を揺らして笑う。そのしぐさがどこかきれいでやはり私は見惚れてしまった。



「ああ、ああ。すまねぇ。けど、嬢ちゃん一人で小僧のところに行かせるわけにはいかないだろ? それを――このガキは勘違いして襲ってくるし」



 年甲斐もなく唇を尖らせた男に青年は呆れたようにため息一つ落とした。



「……まぁ、いいでしょう。デリフィス。その話は後で聞くとして――貴方たち。姫様が会いたがっておられます」



「ひめさま……姫様――」



 なんだか、聞きなれない言葉に私はぼんやりと言葉をなぞっていた。私達に縁遠い姫様と言えば――なんだろう。綺麗な服を着て毎日ごろごろして働きもせず『おほほ』と笑っているイメージしかない。目は尖ってて意地が悪い。逆らったものは皆殺しにして――。母は私にそう教えたけれど、当の本人が言うのだ。『姫様に生まれたかったわぁ』と。悪の権化にでもなりたいのだろうか。



 よく分からないけれど私は嫌だ。農業楽しいし。学校を出たらここに帰って手伝いたいと思ってる。兄様はそのまま王都に残るだろうし。


 私は何をしていいか分からないし。



 とにかく『姫様』についてはそんなイメージだったので行きたくなかった。自身でも気付いていなかったんだけどどうやら兄様の服の裾を握っていたらしい。それを察したのだろう。兄様はじっと大きな黒い両眼で青年を見上げた。



「――いいですよ。俺たちは。そんな高貴な人間と関わりたくないし。というか関係ない。第一そんな身分ではないし」



「そうですか? でも。もうそれは無駄なようですよ?」



 向こうで、馬車の扉が音も無く開き、鮮やかな空色のドレスを纏った女の人が地面に降り立った。


『ヒャッハー』な人たちはここに姫様一行が通ることを知って待ち伏せしてました…>_<;で、子供にボコられる哀れな人たちです。

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