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蛙のお姫様【仮】  作者: stenn
二章
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「そうはいかないよ?」



「――アフ将校――何をしているの?」



 軽く青年は鼻を鳴らすと肩を竦めて見せた。



「うーん。やっぱ計画なんて『くそくらえ』だと思って。よく考えたら盗めばいいわけだし。何より、僕の『妹』が何の願いもかなえられず死んでいくところなんて見たくないんだよ」



 パチンと頭から通常響くはずの無い音がする。もう一度パチンと。何度か響いた後で青年が『鬘』を取るとサラリと黒い髪が落ちた。



「禿げるかと思いましたよ」



 呟きながら瞼に触れるとガラスのような薄い物を両眼から取り出していく。灰色の眼――だった。それを地面に叩きつけると思いっきり踏みつぶしている。



「おまけに痛いし――よくこんなもの付けてられますね? あんたらの国は」



 もう――完全に『兄様』だった。ある意味ローエルよりも冷たい視線がリュートを射貫く。けれどリュートは驚いてい居るためか理解に時間がかかっている為かそれに気づくことは無かった。



 ただ、ようやく理解したらしい彼女は睨み付けるように兄様に目を向けていた。



「いも――オーエン・ストローズっ!」



 刹那、警備兵が私達を囲むようにして動いたけれど兄様は動じた様子はなく、相変わらずの笑顔で私を覗き込んでいる。



「にい、さま?」


 助けに来てくれたことが信じられなくて、確かめるように呼ぶと兄様は優しく微笑んで見せた。



「ん――大丈夫だな。怪我はないですね。よし、そのまま坐ってな。兄様があのガキ殺して『一生』護るから」



「……」



 感動も何もかもが吹き飛びそうになるいい笑顔に私の顔が軽く引き攣った。



 ――忘れてたけど変態だった。そう言えば。一生が不吉だ。不吉すぎる。いや、そんな事よりローエルを殺されては困る。おそらく本気だろうから。



 やめて――そう言おうと思ったがもうすでに兄様は私など見ていなかった。その視線の先にはリュートがいる。



「よく来たわね? ここから出れると思って?」



「ははっ。僕にできないことはありませんよ? それに、この国に来て僕がぼんやり下らないスパイ活動だけしてるとでも?」



 一瞬の沈黙。リュートは何かを悟ったらしく米神を押さえながらため息を吐き出した。



「ああ――無いわね」



「でしょう? 死にたくなかったら雑魚の皆さん。出て行った方がいいですよ?」



 ニコリと言い切る兄様。まだ警告するだけ優しいのかもしれない。何となくそう思ったりもするんだけれど。『彼等』に時間を与えることはないようだ。



 パチン。


 指を弾いたかと思うと、刹那――足元からさあっと霧のようなものが上がった。それはまるで噴水のように。それは拡大し、この広間全体を覆っていく。まるでカーテンが覆う様にして『霧』の向こうは見えなくなっていた。



 ――そして『霧』に飲み込まれ触れたものは――何か線が切れたようにしてその場に倒れこみ微動すらしなくなる。



 私、兄様、ローエル、リュートを除いて――。



「……精霊?」



 訝しげに言ったのはリュートだった。



 兄様は外見上何ら変わることはなかった。その両眼も変わらない、その身に精霊を降ろしている訳でもなく、涼しい顔をして立っていた。どこからどう見ても兄様だ。もちろん破壊された『義眼』は足元にそのまま転がっている。



「そ。本物。あんたらとは違ってね、でも、それさえ使えたら死ぬことも無かったのになぁ。可哀想に」


 そんな事など露程も思っていないだろう笑顔で兄様は倒れている男たちを見回すとリュートに目を戻す。


 ありえない。愕然とした顔つきのリュートは口の中でそう転がしている様に見えた。だが人の事を言っている場合ではなく私も驚きを隠せないでいた。『そんなことできるはずなんて、ない』と思っていたから。基本多くの普通の人間は『精霊』を実物だとは思っていない――私を含めて――し見ることも叶わない。捕まえ使役することは不可能に近く――それを目の前の兄様は何の苦も見せずやって見せていた。デリオロンの技術なしに。



 よく考えなくても、兄様のしていることは世界の情勢を変える――そう思うが、本人は何とも思っていないかどうでもよさそうに立っている。



「天才だから」



 どんな理由だ。と突っ込みたくなる言葉だけど納得できてしまうのがどことなく悔しい。



(ブレイヤール)出ておいで」



『きゃう』



 兄様が軽く言うと現れたのは一匹の――子犬だ。拙い脚で駆け寄ると兄様の懐に恐れもせずに飛び込んでいた。


 ……。


 ものすごい勢いで尾尻が揺れているのだけれど。私はぼんやりとそれを見つめていた。

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