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蛙のお姫様【仮】  作者: stenn
二章
37/61

駄犬

 いい加減面倒になって来た敬語に私はうんざりしていた。屋敷の者には『敬語必須』と言われているのだが最近いいんではないだろうか。などと勝手に思い始めている。第一義兄はとっくに敬語をやめて執事と話していたし。義兄曰く『ばれなければ何でもいい』のだそうだ。その為に執事を押さえてあるとカラカラ笑っていた。どこをどうしたのか知らないが恐ろしい人間だ。



 それにしても――遅い。取るべきなのか取らざるべきなのか思案しているのだろう。私の手、そして自身の手と見比べてはおどおどしていた。



「え、でも」



 困惑した少年の代わりに手を差し出したのはオーエンだ。私は半眼で見るとパチと軽い音をさせて彼の滑らかな手を弾いた。



 何わ考えているのだろう。天才――らしいが天才の考えている事はよく分からない。昔から。



「オーエンは違うだろ?」



「ちえ」



「――ったく。ローエルさ……もうローエルでいいや!」



 さらに面倒になって敬語をやめた。私は軽く苛立つとローエルの幼い手を握りしめてゆっくりと引っ張っていた。案外皮が肩い掌は義兄と同じ。剣を普段から持っている者の手の様に思えた。



 その割には腰が引き気味なんだけれど。未だに『ゴメンナサイ』と呟いているし。



「オーエン。あたしこの子送り届けるよ、裏に回れば見つからなと思うんだ」



 基本領主様にお目に掛かれない農奴。卑しい物とされている為、正面の門を通ることも許されてはいなかった。なので正門むを叩いて『迷子です』というわけにもいかない。裏から『迷子です』と言ってもいいが――なんとなく使用人と会うのは避けたかった。なのでこっそりと。だ。



「ええ? 俺とのけいこは?」



 『愛の記録が』が。などと謎の言葉を言っているオーエンを無視し、私は彼を連れて歩く。オーエンは付いてきたそうに見ていたがはっきり言って邪魔――この子を脅し続けるに違いない――なので近くにあった小石をぼんやりと梯子の上でさぼっていた庭師にぶつけた。勿論隠れながらであるけれど。



「あっ!」



 クリーンヒット。がらがらと梯子から大げさな音を立てて落ちると跳んできた方向を確認。義兄に狙いを定めたかと思ったのだが、さすが、もういなかった。



「ち」



「本気だったよ、ね? 本気でしたよね? 捕まればいいと――思ってたよね?」



 なぜか再び脅えはじめるローエル。微かに涙目を浮かべていた。そんなに脅えなくてもいい気がするのだが。採って食うわけでもないのだし。



「ん?」



 そこまで考えてはたと思い当たった。私は怖いのだろうか――と。



 笑わないし、表情が乏しいことも自覚している。鏡をあまりに無いので分からないが目つきでも悪いのだろうか。それとも形相――。家族にはよくかわいいと褒め称え――信じてはいないが――られるのだが。どっちにしろ何か悲しくなってきた。



 それが悲しいことだと言う感覚は私にだって少しはある。が、治し方がわく分からなくて何とも言えない、笑っているようないないような唇を微かに開けた表情を造ってしまう。それを見てローエルが怯えたので元に戻した。



「一度捕まればいいと思うんだ。あの男。いつも見つかるのはあたしばかりだからな」



 そう。いつも怒られるのは私だった。妹が大切なら率先して出ればいいのにと思うが。彼が私の代わりに何か罰を受けたと言う事は無い。罰は大抵重労働――こっそりと手伝ってはくれるが、言いたい。一度怒られろ。



 怒られる『フリ』だけは特技なくせに。なんだか腹が立つ。



「そんなもんなの?」



 大きな赤い双眸が覗き込む。綺麗な色だ。見たことなんて無いけれど宝石みたいにキラキラ輝いている。



「そんなもんだよ?」



 私は軽く笑うと少年はなぜか目を見張った。



 まさか、恐かった……とか。自然に出た笑顔を怖れられるとさすがに傷つく。だか――少年は私に合わせるように笑ったのだ。



 花が咲いた様に。今までの泣き虫とは別人のようだった。



「そうなんですかぁ。ありがとうございます」



「……え? あ。うん」



 何が。とは思ったけれどまぁ、いいか。



 庭園を抜けて屋敷の裏口に辿り付いたのは良いのだがそこにはメイド長のマーテが誰かと話し込んでいた。厳しい横顔は触れたら怒鳴られそうな勢いだ。見付かれば重労働だけではすまされ無いかもしれない。



 私は考えながらローエルを見ると彼は不安そうに見返していた。握られた手に少しだけ力が入るのは何かを期待しているのだろうか。



「行かないの?」



 仕方ない。無事に返せばいいことだし。私は息を付いた。



「少し遊んでかない?」



「――うんっ!」



 赤い頬をさらに赤く染めるとローエルは目を輝かせて威勢よく返事をしていた。その姿は餌を目の前にした犬のようで私は苦笑を浮かべる。



「なんか、シャーリィが人間になったみたいだ」



 ローエルはシャーリィを知らない。微かに首を傾げたどたどしく呟くと嬉しいのかニコリと笑った。

シャーリィ♀=ゴールデンレトリバーな感じ

どうでもいい情報→重労働とは言ってもとても軽いものです。使用人としてはもっと吊るしたり鞭で叩いたりしたいらしい……(>_<)がすべては兄様の意向☆この人は何者なんだよ。ほんとに…作者が困惑。

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