絶望?
キリが良いところで切ったため今回少ないです。ごめんなさい<m(__)m>
「――まったく。ソルト様は何を吹き込んだのかしら?」
ため息一つ。呆れ気味に呟いたのはリュートだった。
「やっぱりソルト様が?」
にこやかな笑顔を思い出す。近衛騎士団長の肩書とその甘いマスク。そんな根も葉も無いことを吹き込むようには見えないし、弟を溺愛しているようにも見えないのだけど。
図書館で出くわした日から何度も思うが、人は見かけによらずだ。兄様然りだけれど。人間不信に陥りそうだ。
「……しかないですわ。あの子も基本的に『兄上大好き』ですから」
言うと柔らかく笑うと目を細めた。それはソルト様がローエルにする表情とよく似ている。どうしてだか、そう思った。リュートにとってローエルは関わりたくない人間の一人のはずだったのだけれど。よく分からない。
分からないことは考え無いようにして言葉の隅。引っかかるものに眉尻を上げた。
「『も』ってなに?」
確かに兄様は好きだけれど――まるで『ブラコン』と言われているようでなんだか嫌だ。私は『普通』だ。絶対普通だ。そう思っている。他人がどう思おうと。
しかしながら、彼女は私の質問に答えることなく空を仰ぐ。
広がる蒼穹に綿雲がゆったりと流れている。それを目で軽く追った後で私に目を向けた。まるで空を映したかのような瞳で。
「そんな事より。どうしますの? 唯一の解決策を失ってしまいましたけれど?」
「え?」
言われていることが分からず私は眼を瞬かせた。
「勝つにはたぶんローエル様に頼み込むしかなかったのでは?」
「――」
「けれど、やる気満々でしたわね。――女の子相手に。本当に何を吹き込まれているのか。あの感じだと賭けの全体も聞かされてませんわよねぇ。――ってライラ?」
呼ばれて私はようやく我に返っていた。ええと。少し記憶が無くなったのは気のせいだろう。うん。何も聞いてなどいない。私は何も――。少なくともそう思いたかったのだけれど。
「ああああ!」
意味の分からない叫びをあげて私は地面に崩れこんだ。
すっかり忘れていたのだ。きっと一番簡単で確実な事、本人に頼み込むと言う事を。先ほどの会話さえなければ――多分――まだ何とかなったかもしれないと言うのに。あろうことか、やる気にさせて返してしまった。なんて。なんて。
「馬鹿なんだろう――」
私は震える声を落としていた。暗く立ち込める未来に私は大きく頭を垂れた。
人並みの人生がさわさわと砂の様に消えていく。母と父の様に笑い合って畑を耕して――優しい子供たち。うん。無いね。無い。兄様だし。子供は無理だし。大体、兄様にそんな感情持ち合わせていないし。
それなりに幸せなのだろうけれど……事務的で冷たい未来が見える。見えすぎて泣けてしまう。兄様だけが幸せな世界だ――。
「まぁ、なに?」
私の丸くなった背中にポンポンと軽く掌が置かれた。――どこか労わるように。慰めてくれるのだろうか。
「骨は拾いますわ」
顔を上げると突き放すような笑顔に私は絶望を覚えるしか無かった。




