同志
※トーナメントの詳細は書きません。っいうか。
書いたら思いっきり内容がずれてったので(;^ω^)アクション好きなので書きたかったんだけどなぁ…。どうもなぁ。
「まぁ。一応『剣技』は私の方で何とかいたしますが……さすがにローエル様に上辺や、一夜漬けは通じないですわよね。体力の問題も力の問題もありますし」
「――ローエルって強いの?」
発展途上の細い身体。私よりも少し高い身長。顔は整い過ぎていて、どこをどう見ても言動以外は貴族の子供。威勢がいいばかりで剣を振るう様には見えなかった。
「ソルト様の弟ですよ――実力は学年一と聞いてます」
学年一。私は頭を抱えた。
彼は私はより二学年上で年齢はそうも変わらない一五歳。いや、外見上はその言動の為かもっと幼く見えるけれど。ちなみにこの学院に入学する平均年齢が十五から十六なので――私と兄様は特殊――現状彼の周りには十九から二十の大人な体格の人間が多いはずだ。その中で学年一とは相当なものだろう。
ふと、その状況をあっさり追い抜いた兄様が浮かんで私はため息を深く落とした。
「……」
「にしても、少しは抵抗を見せた方が良いと思うのに。素直過ぎるし、消極的すぎますわ。特に魔王に関してはそう思いますわよ。この学院にも来たくて来たわけではないでしょうに」
「兄様相手に抵抗は無意味だよ」
私は言葉を落すように発した。そう言えばベネッサもすごい剣幕でそんな事を言っていた気がするけど私はどうしても兄様に強く言う事が出来なかった。
横でため息が落とされるのが聞こえる。
「ライラ。相手には言わないと伝わらないことはだくさんありますのよ? そして、魔王が『意志をくみ取る』なんてまねできないのはご存じでしょう?」
遠くで授業の始まる鐘が鳴っている。低く、どこまでも遠くに響き渡るように。気づけばここで話し込んでいるのは私とリュートだけ。後は不気味に静まり返っていた。しかしそれを意に返す様子はなく、リュートはまっすぐな視線を私に向け、私は少し逃げ場を失い目を泳がせる。
「どうして?」
「私は――」
重苦しい沈黙が走っていた。
『どうして』そんな理由は簡単だった。強く言って、私は『困らせたくない』のだ。自分が困っても困らせたくない。大きな事故に会って記憶を無くして、目覚めたとき。本当は誰もが泣きそうな顔をしたことを覚えている。それがとても申し訳なくて、悲しくて――。だからあんな顔は二度とさせたくなかったのだ。例え一瞬でも――同時にあの後の少し嬉しそうな顔は忘れもしないが。
それに。何か。ある。それが何か分からないけれど。もしかしたら記憶を失う前。私は兄様に何かしてしまったんではないのだろうか。
ぐっと私は唇を結んだ。困ったようにリュートが何か言おうとしたのだけれど、それよりも先によく透る声が私の耳に届いた。
「おい!」
「あら? ローエル様」
そこには久しぶりに見る少年の姿がある。相変わらず派手な顔。笑えば可愛いのに仏頂面をして私を見ている。
腰のベルトには長い棒切れが差し込まれていた。『帯剣』をこの学院では禁じられているのでその代わりだろうが、なんだか滑稽だ。
「珍しいですわね――ソルト様に叩き起こされましたか?」
「るせー。リュート。兄上たちは出かけてるんだ。そんな事より、ライラ」
思わず名前で呼ばれて目を見開いた。嫌と言うわけではないけれど、リュート以外の他人からそう呼ばれたのはあまりにも久しぶりだったからだ。なんだか、少しくすぐったい感じがする。微かに赤くなる頬を隠そうとしていると、そんな事など気にも留めず彼は歩み寄った。突然絡める様に握りしめられる両手。なんだか分からず彼に視線を送るとどこまでも真剣な表情が返される。
そう――どこか決意したように。
「絶対、助けてやるからな。力になるぜ!」
少しだけ高慢に放たれた言葉の意味が分からない。助ける。一体何からだろう。私としては今すぐこのよく分からない状況――試合に出ること――から救って欲しいけれど。
「え? 試合放棄――?」
その希望に満ちた言葉はどうやら聞こえなかったらしい。彼は言葉を遮るように続けた。
「あの『魔王』にいろいろ下僕の様に扱われて困ってんだろ? 妹だからって酷いよな?」
何故、彼の中でそんな事になったのか分からない。現実は兄様の事で――兄様の暴走にはほとほと困り果てているけれど――基本的には困っていないし、脅えて暮らしている訳でもない。下僕のような扱いも受けたことなど無いし、いつだって兄様は優しい。いつだって『私だけ』には。
一瞬げんなりしそうになった顔を殆ど無理やり私は上げた。
とにもかくにも兄様が悪く言われるのは慣れている――大概兄様の自業自得なので――けれどやはり面を持っていわれるとあまり心地のいいものではない。
「どうせ――」
「私は『そんなふう』に扱われたことはないですし――兄様は本来優しい人です。なにも知らないのにどうこう、言わないでいただけますか?」
「……」
私の反抗にローエルは驚いた様に眼を開くが、すぐに私から目を反らした。口許から零れる声。それはよ私に届くことはないがその動きから『やっぱり』とることができる。
ローエルは悔しそうに私を見た。
「俺は、負けないからな?」
ポツリ。落とすように言葉を発する。
「え?」
何に、だろうか。考えていると決意したように私に向かって勢いよく指さした。まるで――そう。『果たし状』でも突きつけられるような雰囲気だ。
「いくらきれいに洗脳されてても、俺の『同志』だ! お前を絶対助け出して見せるからなぁ! ――絶対、試合に勝ってやるかんな!」
きれいなフォームだ。と思わず思ってしまった。言う事だけ言って逃げる様に走っていく少年の足は異様に早い。止める暇も無かった程だった。
唖然とその背中を私は見送っていたが、その進行方向は授業が行われている校舎では無い。どこに行くつもりなのだろうか。
というか。同志って――嫌だ。
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