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蛙のお姫様【仮】  作者: stenn
一章
13/61

賭け

ローエルとオーエン。かなりの確率で名前を間違う…orz。

何で私似た名前を付けるんだろう…( ゜Д゜)

「あいにく僕はデリフィスの御守じゃないんで。それに『泣いて』手伝いたいと『みんな』言ってくれたので僕は早く終わることが出来ました」



 『泣いて』を強調しながら、満足そうにニコニコと微笑む兄様に、私は若干頬を引き攣らせた。どう考えても嘘くさい言葉と笑顔。なんだか今頃、近衛騎士団の皆さんが大きな身体を小さくして兄様がするはずだった『雑務』に追われている姿が目に浮かんだ。近衛騎士団と言えば国一エリートなのに。国一強いのに。不憫だ。兄様が実際どんな手段に出たのかは分からないけれど、見習いの見習いに良いように扱われて。



 涙が出る。


 ――ごめんなさい。



 学院に来てから一体何度そう心の中で――実際に謝罪すればややこしいことになると知った――呪文のように唱えただろうか。それを今一度何度も唱えながら頭を押さえていた。



 常備してある頭痛薬と胃痛薬。まだあっただろうか。



 ソルト様も兄様の真意をくみ取ったらしく少しだけ呆れたようにため息を吐き出し、私に目を向ける。若干『可哀想な子』を見る視線をやめてほしいんですが。何となく居たたまれなくなる。



「というより、僕のライラに触らないでくれます? 団長」



「――とって食べたりしませんよ。私には婚約者がいますし」



 笑顔の応酬が怖い。二人とも目が笑っていないし。しかし、そんな事より私は『婚約者』が気になっていた。いや。確かにいてもおかしくないけれど。おかしくないけれどなんだかひどく悲しかったし、リュートにはどう言えばいいのだろうか。直接確かめたことはないのだけれど、リュートはソルト様が好きだったはずだ。たぶん婚約者である王子様よりも。



 そう言えば、王子様ってどんな顔をしてるのだろう。雲の上すぎてわからないけれど、きっとソルト様には敵わないだろうなと思う。



「……酷い顔です。ライラ」



 どうやら考えすぎて思わず視線を落としていたらしい。兄様の不服気味な声に私は顔を慌てて上げた。



「とにかく。遊び相手はほかの人にさせてください。団長ほどの身分なら子供も大人も自由に動かせるでしょ? ただ。ライラはダメです」



「――どうして?」



「僕のだから。邪魔をする奴は殺します。貴方の弟でも」



 キラキラと輝く最高の笑顔で何言っているのか分からなかった。大体『邪魔』とは何の邪魔なのか皆目見当もつかなかったけれど、分かるのは兄様が本気だと言う事だけだった。威嚇するように伝わって来る殺気。けれどさすがと言うべきなのだろうか。そのことでソルト様が顔色を変えることはない。むしろ楽しそうに喉を鳴らしして見せた。



「邪魔――ですか。……では、一番の邪魔者。『法律』をあなただけに捻じ曲げましょうか? 」



「……」



 ふふふ。不敵に笑うソルト様。いくらソルト様でもそんな事が出来るわけがないし、冗談なのだろうけれど……そんな事は兄様に言わない方がいい。兄様は自分が『欲しい』と思った場合、それが嘘か真かなんて関係ないのだ。約束したが最後。それを相手にどうあっても履行させようとする。そう――どんな手を使っても。



 私が何かを言おうとする前に兄様は口を開いた。その目が星を映したように――錯覚だけど――輝いている。まるでおもちゃを貰った子供の様に。



「本当ですか?」



 一体法律を変えてまで何をしたいんだろう。



 王様になることとか。お金をせしめるとか――無いな。兄様は権力やお金に対して興味が無い。にしても、恐い。何をしてほしいのか想像できないことが何となく怖い。



 私は震える声で兄様を制し、ソルト様に目を向けた。そうとう困ったような顔をしていたに違いない。



「兄様、冗談だから……ソルト様も、そんな事言わないでいただけると助かるのですが」



「冗談ではありませんよ。――ただし、私との賭けに勝てば、ですけど」



「かけ?」


 私は口の中で転がした。



「はい。簡単です。弟とあなたに決闘してもらいます。貴方が負ければ私はオーエンの願いを叶えて。私が負ければローエルと遊んでいただきます」



 ん。何かおかしいきがする。私は小脇に抱えられている少年に目を向けた。話は聞いていないだろう。顔色が赤から青に変わりつつあるが大丈夫だろうか。などと考えながら首を捻る。



「それは。私が負ければ――」



「はい。戸籍変更できますよ」



 絶句して私は思わず兄様を見た。言っている意味が分からなかったのだけれど


、兄様の顔を見て理解した。



 先ほどまでより三倍増しでキラキラしている顔。薄い口許は盛大に歪められ頬は紅潮していた。薄らと聞こえる独り言に私は頭を抱えるしかない。



 『新婚旅行は〜』『ドレスは〜』バカっぽい幸せな独り言。この人本当に天才だろうか。いや、そんな事より。震える声で私は兄様に問いかける。



「いや、あのね。いや。兄様? 聞いて? 法律どうのって問題ではないですけど?」



 大体そんな事『したい』と思ったら強行するしこの人。私の意志はもちろん無い。



「でも、みんなに認められての方がいいですよ」



 いや、私兄様と幸せな『新婚生活』を送る気ないし。実の兄妹だし。それ以上に兄様だし。そんな目でこの先も見ることは絶対にない。



 ここで止めないと。そう思うが私はベネッサの様に喧嘩腰にはなれないのが悲しい。今度家に帰ったら兄様取扱い法を教えてもらおう。たぶん『お姉ちゃんには無理』と一蹴だろうけれど。



「いや、法律が認めても――あのね? 聞いてます?」



「うん」



 聞いていないだろうな。私は兄様を諦めて私たちの会話をニコニコ聞いているソルト様に目を向けた。半ば恨めし気に。だがやはり意に返す様子など無い。



「ソルト様――」



「大丈夫ですよ。心配しなくても。『そんなこと』にはなりませんから」



 何の自信だろうか。どう考えても剣など握ったことも無い私が勝てるはずは――と考えて思い当たった。一縷の望みを掛けて。



「あの。勝負は、何――で?」



 脱穀とか、野菜の皮むきとかなら、勝てる自信がある。大体、爪の先から頭のてっぺんまで整えられたお坊ちゃまが出来るはずなど無いのだから。皿洗いとか、ベッドメイキングでもいい。そう思っていたけれど。



「剣です。一週間後。そうですね。中央鍛錬所で」



 さらりと言われる言葉にがっくりと肩を落とす。



 負け。決定――私の人生終わった。一生兄様のおもちゃって……。目の前のおかしな病気にかかった子供の方がまだいい。



 逃げられないだろうな。一生。ああ。涙が出そうだけど泣けない自分がさらに悲しかった。



「その勝負僕が貰いましたよ。団長」



「どうだか。私が彼女の実力を知らないとお思いですか? それに」



 言うと彼は艶やかに微笑んだ。そう、艶やかに。それはとても美しくとても怖い者の様に見えた。



「私の弟を『邪魔者』とした人には天罰が下ると良いですよ」



 一拍の沈黙。その後で私は再びローエルを見つめた。真っ青になってぐったりしているけれど――大丈夫だろうか。まぁ、少し動いているので大丈夫だろう。



 うん。たぶん。


 それにしても。と私は息を大きく吐き出して心の中を落ち着かせる。そして盛大に叫んでいた。





 ――もちろんだけど心の中で。





 『おまえもか!』





 そんな心を知ってか知らずか、二人の『兄』は笑顔と言う火花を散らしている。




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