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蛙のお姫様【仮】  作者: stenn
一章
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ヒーロー

すいません。ヒーローはあほの子です…>_<;

で、一体兄様はどんな権力を…(;゜Д゜)

「あのっ……!」



「ヒーローになりたくねーのかよ?」



 不満そうだが当然そんな者にはなりたくないしなる気も無かった。静かに目立たず生きることが希望だ。――ただでさえ兄様のおかげで目立ちまくっているのに。



 なんか頭痛がして来たので頭を押さえながら私はあっさりと返した。



「なりたくないです。というより私は明日のテストにパスしたいんで一人でそれを続けてください――というか。貴方は?」



『世の中にヒーローになりたくない奴なんているものか』何の先入観なのだろう。ぼやいてから彼は近くの本を手に取った。表紙を軽く眺めるとぽんと私に押し付ける。それを見ながら私は少しだけ小首を傾げた。何故なら、それは私が探していた本でもあったからだ。



 独り言聞いていたのだろうか。であるなら恥ずかしすぎる。彼はそんな私に気にも留めずに半ば不満そうに唇を尖らせた。



「ちぇ。俺はローエルだよ――あんたは?」



「え? ええと、私はライラ・ストローズ」



 一瞬の沈黙。その後で彼は驚いた様に大きな目を見開いた。ただなぜだろうか。その目の奥は嬉々としている様に見える。



 嫌な予感しかしないのは気のせいだろうか。



 一拍置いて薄い唇が開かれる。


「……まさか、オーエンの妹?」



「ええ」



「――あの変態だって悪名高いオーエンの?」



 さらりと放たれた言葉に私の頬が引き攣った。悪名高い――変態って。まぁ、おかしな人には違いない。私は何とか『ええ』と肯定の言葉を絞り出した。



 しかし。



「妹の為なら国王殺害まで企てようとしたあれの?」



「……」



 さすがに頷けない。何をしているんだろう。兄様。というかよく無事だな。私も、家族も。そんなことしたら今頃死んでいてもおかしくないけど無事だ。国家逆罪に掛けられることも無く、磔にされることも無く今日も無事に過ごしている。



 もはや兄様がどんな権力を持って、どんな伝手があるのかもはや謎だ。



「あの――」



「もういいですから! 罪状、畳みかけるの止めて。兄様の所為で私泣きそうですから!」



 半ば悲痛に叫ぶ私とは反対に彼はにこりと微笑んだ。



「そうか? じゃあやっぱ、特訓しようぜ?」



 何故、そうなる。思考回路が見てみたいと心底思う。私は彼に押し付けられた本を掲げながら半眼で返した。



「いや、だからね。明日テストが」



「えー、いいじゃん。特訓、特訓! テストなんて本を読んでおけば充分だろ?」



 半ばせがむように言う。なんだか幼い子供の相手をしているようだ。『いーじゃん』を連呼する彼に頭が痛くなる。



 私は頭痛をごまかすように叫んでいた。



「良くないです! それに私は『剣』とか握れないんですが! 兄様ならともかく」



 そう言えば三年前のあの日、兄様に問うたことを私は頭の隅で思い出していた。



 『どこで喧嘩を勉強したんですか?』問えば兄様は苦笑を浮かべて『それは――本を読んだからですよ』と言う答えだった。『後は――そうですね。たまに領主様の鍛錬を見ていたからでしょうか?』見ただけで、読んだだけで覚える兄様。怖すぎる。そしてその行動に耐えうるあの身体も。



 兄様が五人くらいいたら世界が支配できそうだ……。いや――一人だけでも十分か。



「じゃ、俺が教えてやるからさ。いこーぜ!」



 再び引っ張られる腕。持っていた本は軽い音を立てて足元に落ちる。私は振りほどこうと足掻いたがそれは力強く私の力ではどうやら無理なようだ。



「ええと、ね――だから」



 聞いてもらえそうにもない。『仲間、仲間』と呟きながらキラキラ輝かせた眼は再びどこかに行っているようだった。


 

 帰っては来ない。



 兄様だけでも持て余しているのに……これ以上私の周り、頭痛の元なんてものを増やしたくは無かった。であると言うのに。



 籤運と言うか、なんというか。あまりにもめぐりあわせの悪さにもう笑うしかない。私は自嘲気味な笑顔を浮かべたまま、図書館を引きずられていく。



 バサバサと落ちる本。それをローエンは気にも留めなかった。ただでさえ散らばっている図書館。清掃係の人は悲鳴を上げてしまうかもしれない。



 ごめんなさい。なんてこと考えながら私はこの少年から逃げる方法を必死に探していた。



 このままではきっと何かの修行が始まってしまう。それは学院を護るヒーローなのかもしれないし、あるいは世界を護る勇者なのかもしれないが、そんなものなんてなりたくもない。



 敵は脳内だし――。



 どんな羞恥プレイだ。考えるだけで泣きそうになってしまう。



 いっそ、一番使いたくない手――兄様を使おうか。



 頼った事など一度も無いけれど。頼ったら泣いて喜ぶだろうか。なんだか、それもそれで嫌だ。



「はいはい。そこまでです」



 考えを断ち切るように響く声に私は弾ける様にして顔を上げていた。


 まるで救いの神のような澄んだ声。縋るような思いで声の方向に目を向けるとそこには見覚えのある青年が扉にもたれ掛るようにして立っていた。



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