エピソード10 迎撃
Episode10
登場人物
濱平 万里:主人公
加地 伊織:ご主人様
西野 仁美:アレが怖い
その他五行聖獣軍団の皆さん
第6師団作戦室
瑠奈:「コーヒーもらって来たよ! はい、万里ちゃんの分。」
アレ以来、何故か池内の態度が馴れ馴れしい。
香澄:「懐かれた様ね。」
優美:「みたいね。」
香澄:「まっ、良かったわね、友達が出来て。」
優美:「後は任せたわ。」
万里:「そんなぁ、助けて下さい。」
瑠奈:「伊織クン、私もしかしたら女の子好きかも知れない…」
伊織:「今度、「飲み」に誘うと良いと思いますよ…。」
何か彼氏居ない歴19年のJDとして、間違った道を突き進んでいる様な気がする…
碧:「ところで、あの宙に浮かんでる人達はどうするんですか?」
西野:「救出に行けば二次遭難する可能性が高いので、対処法が解明されるまでは手が出せません。 今は「ニガヨモギ」対応の方が緊急です。」
モニターには宙刷りになったままの旅客機が映し出されていた。
飛行機の窓から、しきりに合図を送る乗客の姿が見える。
南:「映像モニターに出ます。」
映像が切り替わって、天文台からの写真に切り替わる。 いっぱい点が有ってどれが何だかさっぱり解らない。
西野:「これが「ニガヨモギ」です。」
南:「これまで未確認の天体です。 2003 QQ47とも別の天体です。 直径約500m、アポフィス級のサイズです。 トリノスケール5から9に変更されました。」
南:「推定接近速度、秒速30km、推定到達時間15時間です。」
南:「およそ2分遅れのデータです。」
伊織:「結局、何処に堕ちそうなんだ?」
南:「このままの速度変化が無ければ、カリフォルニアに落下する計算です。」
伊織:「アメリカの人達、さぞかしパニックだろうな…」
西野:「落下地点は情報公開されていません。」
香澄:「隠せば隠す程、漏れるんじゃないの?」
西野:「その点は大丈夫です、こんな時の為に情報網が統制されています。」
伊織:「そんな事って、あり得るの?」
西野:「もともと利益に反する情報は削除される仕組みになってますから。」
西野:「外向きには「巨大ミミズ」の洪水被害でネット通信が麻痺状態に陥っている事になっています。」
香澄:「そう言えば、昨日の夜一時的に通信が回復したけど、」
西野:「あの後、別の理由で回線を再度遮断しました。」
碧:「落下地点に居る人は、家族と最後の時を悲しむ事も出来ない訳?」
西野:「悲しんだ所でどうにも出来ないのです。 せめて何も知らないまま、苦しみは一瞬で終わる方が人道的だという判断です。」
伊織:「映画みたいにこういう時こそ核ミサイルで軌道を変えるとか出来ないんですか?」
西野:「地上からのミサイルは全て空の超常現象で捉えられてしまう為に、大気圏を突破出来ません。 ミサイルを発射可能な人工衛星も全て空に捉えられてしまっていて、「ニガヨモギ」に到達出来るミサイルは無いんです。」
西野:「我々のとり得る最適の手段は、衝突地点から出来るだけ多くの重要物資を運び出す事と、衝突後の速やかな救助活動を準備する事です。」
西野:「既に「51州」による「ニガヨモギ」到達後の社会システムのシミュレーションが完了し、脱出の準備が進められています。」
香澄:「51州って?」
西野:「アメリカの人類救済プログラムです。」
恐らく、衝突したら核ミサイルどころではない災害が起きるのだろう。
伊織:「気分悪いな。」
香澄:「さてと、伊織…どうしましょう…。」
碧:「青龍になにか出来る事は無いの?」
香澄:「「さりな」の期待値は大きいよね、でも青龍の力は有機反応系メインの作り替える力だものね。 宇宙から飛来する岩の塊りをどうこうするのは、むしろ黄龍の役目かも知れないわね。」
碧:「それじゃあ、私と青龍はあの、空に残された人達を転送するって言うのはどうかな?」
香澄:「私達の能力は対象が認識されていなければ効力を発揮出来ないわ。 この前濱平さんを転送出来たのは、彼女の交信能力のお陰で対象が明確だったからよ。」
私、思い切って手を上げる。
万里:「あの、ちょっと良いですか。」
万里:「この間、皆さんと交信した時に、私と源さんの会話が直接難波さんの意識の中に届いた事が有ったんです。 これってつまり、私が交信した内容を直接吾妻さんの意識に伝えられるって事じゃないですか。」
香澄:「言いたい事は分かったけど、リスクが大きいわね。 それに貴方の交信も狙った対象を100%交信出来ている訳じゃない。 やるとしても一度誰かを使って実験してみた方が良いわね。」
香澄:「伊織、どうする?」
万里:源ってリーダーっぽいと思ってたけど、こういう決断は伊織クンに確認するんだ、ちょっと意外かも…。
伊織:「やれる事は全部やっちまおう。 涼子とクロ子は「巨大ミミズ」退治、香澄とお竜は「ニガヨモギ」を止める。 吾妻と貧血は濱平さんと組んで転送の実験をやってみよう。」
碧:「何で私だけ苗字かなぁ、何かやな感じ。…それで、誰で実験するの?」
伊織:「こういう時に役に立ってくれるのは「山猫」だろう。」
香澄:「分かったわ、ご主人様の命令に従いましょう。」
香澄:「後、前回の「巨大ミミズ」の時みたいに、何者かが邪魔しに来る可能性があるわ、」
優美:「分かったわ、私と池内でフォローすれば良いのね。」
香澄:「よろしくね、伊織と吾妻を失ったら、私達はゲームオーバーよ。」
体操服の大尉がモジモジしながら近づいて来た。
西野:「あのぉ、ここでやるんですか? 一応此処作戦室なので、出来れば別の部屋で…」
源、睨みつける。
香澄:「何か問題でも?」
西野:「ごめんなさい、ごめんなさい…。 無いです。」
西野、うずくまって半泣き…
伊織、コインを二つに分ける。
どうやらこれが「変身」の合図らしい。
一瞬の沈黙の後、聖獣が召還されてくる。 見た目は何ら変わらないが…
伊織:「さてと、みんなやる事分かってるかな。」
何だか、幼稚園の先生みたい、
シロ:「僕はやる事が無いのだ、つまらないのだ。」
あの高飛車美少女が、何故かオタクっ娘に…
朱雀:「とうとう「神」に喧嘩売るって事だな。」
伊織:「止めといた方が良かったか?」
朱雀:「問題ない。」
あのカマトト女が、何故かワイルドに…
クロ子:「伊織お兄ちゃん! ワクワクするね!」
あの無口な世話焼き少女が、何故かキャピキャピ妹キャラに…
貧血:「濱平様、よろしくお願いします。」
万里:「あぁ、こちらこそ…よろしく。」
あの体育会系JKが、何故かメイドさんに…
伊織:「お竜、あの「ニガヨモギ」っていう岩の塊りをどうにか出来そうか?」
お竜:「感知出来ます。 存在感有りますね。」
お竜:「こんな大きな物を動かした事が無いので何とも言えませんが、…どうします。」
伊織:「地球に当たらない様にして…そうだな、太陽にでも落とすか。」
お竜:「了解です。」
伊織:「それで、クロ子はこの前の続きだ。」
クロ子:「あのおっきなミミズを凍らせて縮こませれば良いのよね。」
伊織:「こっから海見えないけど、行けそうか?」
クロ子:「涼子…頑張る! 涼子イクよ! 」
伊織、スルー
伊織:「よろしく頼んだよ。」
伊織:「さてと、濱平さん、先ずは山猫と交信してもらえますか。」
万里:「ええ、やってみます。」
伊織:「それで、貧血は、濱平さんと交信して、濱平さんが交信している山猫を感知出来るか試してみて。
貧血:「承知しました ご主人様。」
…30分経過
依然として山猫との交信は出来ていなかった。
万里:今度会ったら100発位ぶん殴ってやろうと思ってたのに…
貧血:「ちょっと、休みましょうか…。」
万里:「御免ね、何だか上手く集中出来なくって、」
何だか、ちょっと落ち込んだりして…
南:「 海面 、平常時海抜プラス6mまで沈下しました。」
クロ子:「お兄ちゃん! 海面、沈下、したって!」
伊織、スルー
伊織:「すごいね、クロ子偉いぞ!」
南:「「ニガヨモギ」進路、速度ともに変化ありません。」
お竜:「伊織さん、挫けていいですかぁ?」
お竜、溜息…
伊織:「駄目だ、動かすのが無理なら…粉々に砕けないか?」
お竜:「わかりましたぁ、やってみます。」
伊織:「西野さん、ところでこの実況データってどこから来てるんですか?」
西野:「世界中の観測データを此処に優先的に送ってもらっています。」
伊織:「全世界が協力し合っているって事ですか。」
西野:「そうです。大日本神国というのは「神の戦争」を生き残るために旧体制のしがらみを一切背負わない超法規国家として存在しています。 各国でも同様のシステムが立ち上がり、それぞれが独立連動しながら人類の最善の為に活動しています。 アメリカの「51州」も同じです。 領土も負債も一切持たず、旧体制のインフラは優先的に使い放題。 まさに、なりふり構わぬ最後の足掻きです。」
西野:「その中でも 我々の部隊は特別なんです。 陸軍第6師団、第一特殊旅団とは、貴方達聖獣の能力を行使する部隊なのです。 世界各国をみても、聖獣の力を手中に収めて、自由に行使出来る部隊は我が師団をおいて他には存在しません。」
西野、ちょっと鼻高々
伊織:「俺達は西野さん達に調教されて使われてる事になってる訳ですか?」
西野:「はい、表向きはそうです。」
西野:「実際は逆ですけど…、」
西野、涙目…
伊織:「まあ、いいか。 何だか色々情報も解説してもらえるみたいだし。」
西野:「頑張ります!」
伊織:「処で、…アレって、何なの。」
西野:「…。」
突然、クロ子が昏倒した。
伊織:「クロ子!」
伊織が駆け寄る…、意識が無い。
続いて、お竜が失神…。
伊織:「敵の攻撃か?」
シロ:「気配がしないのだ…。」
貧血:「うっ!」
貧血が倒れる…、失神。
伊織:「どこから、どうやって攻撃してるんだ?」
部屋には、何の気配もない。
微かに…
シロ、昏倒…
西野:「これは、毒ガスだ!」
毒ガスを、こんな風にピンポイントで使える物なのか??
南、机の下に常備している全面ガスマスクを伊織と私に放り投げる!
西野、部屋の隅のロッカーから追加のマスクを取り出して、朱雀と南に投げる、残りは自分に装着。
西野:「目を閉じて装着! ベルトを調節して、まず息を吐く!」
西野:「大丈夫か!」
南:「異常有りません!」
何故だか、伊織と朱雀はマスクをしていない!
伊織:「相手が聖獣ならマスクの中に毒ガスを発生させる事くらい訳無い。」
朱雀:「!」
朱雀の発生した炎が、筒状になって空中を移動するガスを燃焼する!
まるで蛇の様に、ガスが宙を泳いで来る…
もう一つ、燃焼!
伊織:「面白いな…。」
これで、直接ターゲットの鼻にガスを送り込んだのか…
でも 一体、誰が??
万里:「来る!」
この感覚は、スコルだ!
朱雀が臨戦態勢を整える。
作戦室の空間が裂けて、中から赤毛の男が姿を現わす。




