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エピソード1 吾妻 碧

濱平万里 妖精のカケラ シリーズ第三弾

妖精の封印の続編です。

Episode1

登場人物

濱平 万里:主人公


そうだよ、

これは彼女の心


もう21時過ぎだというのに伊織と三船は庭で拳法の練習をしていた。 


私はと言うと、いびつにひん曲がった縁側に腰掛けてそれをぼっと眺めている。 11月も終わりだから息が白い。


(何食わぬ素振りで君の顔を盗み見る)


伊織が拳法の練習するのを見るのは初めてだった。


(離ればなれになる前にその面影を焼き付ける)


私が一番昔からあいつの事を知っているつもりだった。 私が知っているあいつは情けなくて何をやってもドジで、だから私が面倒見てやらなきゃ駄目なんだ。



(苦しいよ、 ずっと心の奥に伝えなきゃいけない言葉をしまっているから。 今日こそ伝えなきゃ、もう二度と言えなくなってしまう気がする)


それは焦って言うような事なの?

こんなの一時の気の迷いに決まってる。 それか、色々危険な体験を共有すると芽生えるって言うある種の勘違いに決まってる。 



碧:「あっ、やられた。」


三船の中段突きが綺麗に極まって、伊織が地面に崩れ落ちる、…何だか暫く動けないらしい。


碧:「男って野蛮ね。」



伊織が照れ隠しに私を見て苦笑いする。 

(その笑顔を見られただけで今日一日が報われた気がする)


…冴えない男よね。



「伊織! しっかりしなさいよ!」


(幾ら強がって平静を装っていても、その名を呼ぶ度に胸の奥が締め付けられるように痛い。)



溜息…、


何時からだろう。 なんでこんなにあいつの事が気になるんだろう。

(私に気づいているの、私が君に恋している事を知っているの?)


大体あいつは、私の事なんかただの幼馴染としか思っていないに決まってる。



掌の傷を確かめる。

それは二人の絆、全てはつい半年ほど前 この傷から始まった。

(違う、もっと昔から私達は出会っていた。 再開は運命の証)


要するに腐れ縁?


別に好きとか言う訳ではない、と思う。

(でもかまって貰えないのは何だか寂しい)



もやもやとした気持ちは、承認を求める。


いびつにひん曲がった縁側の隣に腰掛けて足をブランブランさせている少女に質問する。


碧:「ねえ、伊織の彼女って誰かな?」


少女は躊躇無く少女自身を指差す。


碧:こいつメ…いつの間にこんな生意気に?


碧:「あんたは妹キャラなんでしょ?」


少女は黙って頷く



もやもやとした気持ちは、絆を求める。


キスはした…何度も、若さ故の過ちだったかも知れないけど。


だからと言って、別にあんな男に初めてを捧げる気など毛頭ない。

(でも求められないのは何だか寂しい)



碧:変なの、私おかしいんじゃないの?


自分自身に言ってみる。


冷静な自分と、冷静でない自分とが揺らぎ合うのを楽しんでいる。



碧:甘えたいな、甘えさせてあげたいな、


結局、そういう処に帰着するのだろう。


決して好きと言う訳ではない、と思う。






碧2:「吾妻さん、」


心の中のもう一人の自分が呼びかける。

自分がずっと隠し続けてきたもう一人の私、…本当はなりたかった自分


碧:「なあに?」


心の中で私達は会話する。 おんなじ自分同士なのに、…変なの


碧2:「危険が近づいています。」

碧:「危険って?」

碧2:「何かが、ご主人様を殺しに来るようです。」

碧:「へえ、」


あいつはご主人様って柄じゃない、


碧:所詮伊織は伊織じゃないの! 


心からそう思う。 あいつは、私の伊織なんだ。



碧2:「どうします?」

碧:「そんなの決まってるじゃない…、」


私は縁側から立ち上がる、


碧「返り討ちにするわよ! 涼子、準備はいい?」


少女、縁側から飛び降りて、…大きく頷く




やがて玄関と裏口、それぞれ2人ずつ黒のスーツを着込んだいかつい男が押し入ってくる。 …めいめいに、銃を携行している。


三船:「どなたかな? こんな時間に物騒なモノ持って…。」


一応この家の主である三船三十朗さんが応対? する。

私を居候させてくれている、優しいおじさまだ。 …色々細かいけど。



男:「おとなしく言う事を聞けば、危害は加えない。」

碧:「あんた達じゃ無いわよね…危険って。」

男:「危険かどうかはお前達次第だ。」


男が高圧的に近づいて来る…三船が、すっと前に出て拳銃を持った男の手に触れた…かと思うと、いつの間にか拳銃は三船の手に移っていた。 何故だか男は地べたに跪いている。



三船:「駄目だな、こんな危ないモノ持って女の子に近づいたりしちゃ…。」


他の男達が一斉に銃口を三船に向ける。

警告無しに銃声がして…


三船はいつの間にか照準から外れている。


三船が取り上げた拳銃は地べたに落ちて…ふっと気を取られた隙に今銃を発射した男の首がそれは無理だろうと言うくらい後ろに押し曲げられて、…堕ちる 。 つまり気絶してそのまま地べたに転がった。


碧:「ほんと、男って野蛮ね。」



既に三人目が銃口を三船の胸に押し当てている…三船は頭のてっぺんから地面に突立った仮想軸を中心に身体をパタンと回転させて照準から逃れると、あっという間に男の手首は捻られてその銃口が銃の持ち主の顔に向けられる。 一瞬たじろいだ男は自分でもよく分からないまま首を転がされて同じ様に気を失っている。


再び、三船が取り上げた銃を地面に落とす。


三船:「システマ勉強しといて良かったな、イアン様々ってところかな。」

伊織:「いや、普通ネットのビデオ見たくらいでここ迄出来ませんって…」



残った1人は少し躊躇している。

これなら平和裏に全て片がつくだろう…と、思っていたら


動悸が高まる。




碧2:「来ます! 上空。」


見上げると、夜の空に3人?の人間が浮かんでいた。

ジェット機のような音が近づいてくる。



男「早く、私と一緒に来るんだ、」


黒服が焦ってる。 でも…

焦ったってしょうがないじゃない、相手は空飛んでんだし…



伊織「三船さん、おかしなのが出て来たので、とりあえずこの人と逃げてください。」


三船「とは言っても3人畳んじゃったしな、それにどうせ何処へ逃げても同じなんだろう? 良いよ、ここで見物させてもらうさ。」



一人生き残った黒服が空飛ぶ人間に向かって発砲を開始する。

確かに命中している、筈なのに… 一向にひるむ気配がない。



私はもう一人の私に命令する

碧:「青龍! あのヘンテコリンなのをヒヤシンスに変えちゃってよ!」


私の頭の上に、仄青く揺らめく陽炎のようなビジョンが出現する。 その姿は30cmばかりのトカゲ。


碧2=青龍=貧血:「駄目です、吾妻さん! 私の力が通用しません。」



やがて、空飛ぶ人間達は、高度を下げて…着地する。

見覚えのある額の銀の番号札


碧:「こいつら、ロンドンで遭ったのと同じ奴等ね。」



黒服は遠慮無しに拳銃を撃ち続け、銃弾は確かに番号札の男に直撃しているが、男はどこ吹く風 。



やがて番号札の男は伊織の姿を確認すると、伊織に向けて左手を差し出した。 その男の左腕が縦に裂けて、内側から砲身が出現する。



躊躇無く発射される砲弾。


いつの間にか、庭の立木と家屋の間に張り巡らされていたカーボンファイバーのネットが砲弾を捕まえて…伊織に到達するのを防ぐ。



伊織:「これってロケット弾?」


言わんこっちゃなく、目前で炸裂 する弾頭!

しかしそれも、突如出現した分厚い氷の壁が爆熱風を遮る。


碧:「ナイスフォローね、涼子!」


ツインテールの小柄な少女がちょっと得意げに鼻を高くする。


その首に、ネックレスの様に巻き付く仄黒い陽炎の揺らめきの様な蛇のビジョン。



三船:「いつもこんなことしてるの? …大変だね。」

伊織:「そんなショッチュウじゃないですよ…」



どうやら周囲3方を番号札の男に囲まれる。

男達は背中に担いだホルダーから巨大なナイフを取り出して構える。


そこへ急襲するヘリコプター、

ヘリが何かを投下する、三つ、四つ、合計六つ



三船:「次は何だ?」

伊織:「何か落しましたね。」



落下傘で降りてくるそれは、まるでアニメに出てくる様なロボット?


落下の衝撃で庭の周囲の塀やら植木やらをなぎ倒していく…



三船「いつもこんな感じなの? 困ったもんだね。」

伊織「スミマセン。 後で直しときます…」


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