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【完結】転生薄幸令嬢の奇妙な愛人契約――イケオジパトロンか富豪貴族か――えっ二股愛人ですと?  作者: 赤城ハルナ
【第五部】追いかけてきた過去、絡まる運命

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怒りのスキャンダル王 Ver.1/オマエたちに明日はない

〜〜〜〜〜〜

★【第五部】はサウス家と元祖アイラの過去が入ります。

★ランベール・ギーズ発狂寸前。庇護者アイラを傷つける疫病神ジェシー・ウエストに我慢ならないようです。

〜〜〜〜〜〜

「……パーパ……マーマ」


 あぁ、僕のエンジェル……なぜ、どうして、こんなことに……。


 あの男を信じて預けたのに……。

 アレは消さなければならない。



※



「俺をお嬢様の護衛にしてください」


 ギーズ出版社の記者セレーナから紹介されたのは、薄い茶髪にソバカス、澄みきった青い目という、愛嬌のある青年だった。


「君は……?」

「トマス・タンディー、セレーナの知り合いです」


 この青年は、普段はタンディーゴルフクラブの支配人をしているという。そういえば、セレーナはときどきゴルフ場の取材をしていた。


「君はサウス家のご令嬢と知り合いなのか?」

「ええ、タンディーゴルフ場を開発するときに投資してくれたのはアイラお嬢様のお父上でした。そのこともあってときどきお嬢様はゴルフクラブに遊びに来ていたんです。その後ご両親が事故で亡くなり、俺はサウス邸の執事に頼まれてしばらく彼女の護衛をしていました」


「ほう? 屋敷内で護衛?」

「……新しい当主様は信用できないと」

「そのことは薄々知っていた。アイラの置かれた境遇も」

「これは……言いにくいことなのですが……」

「僕は彼女のパトロンだ、保護者だ。知るべきことがあるのなら話してくれ」


「彼女に言葉を教えたのは俺です」


「言葉を? それはどういうことだ」

「お嬢様はなかなか言葉を話せなく……」


 トマスから事情を聞き、僕はあ然とした。

 彼女は障害を持っていたらしく、馬車の事故に遭うまで言葉を発することができなかったというのだ!


(初見で普通ではないと思ったが……いや、決してそんなことはない。長編小説を書けるくらいだ、話すことができなかっただけだろう。あの目は色素が薄いだけなのだろう。ときどき呪文のような言葉を発するが……)


「そのことを知っているのは……」

「サウス家とタンディー家のみです。ご両親は彼女を世間の目にさらさなかったので」


 彼女の将来をもう一度考え直さなければならない。


「初代出資者のためのVIPルームがゴルフクラブの三階にあります。ご両親の死後ゴルフ場株は様々な人に売られましたが、そこにはまだご両親の肖像画が残っています。一時(いっとき)でもいいので、お嬢様を預かれませんか? もう一度言葉を取り戻そうと思います」


「……信用していいのか?」

「『セカオピ』にかけて」

「うむ、いいだろう」



※



 サウス家のクズ叔父。

 オリエンス侯爵クズ令嬢。

 ジェシー・ウエストのクズ母。


 コイツラにはキツイお仕置きが必要だ。


 そして――ジェシー・ウエストとかいう疫病神!


 何が伯爵家当主だ、大馬鹿か!? アイラに災いしかもたらさないではないか!

 隙だらけのマヌケをどうしたものか!

 伯爵でなかったら今ごろ潰しているというのに!


『契約で縛り付けて、伯爵様はアイラ嬢をどうしたいのですか?』

「契約というのは表向きの理由で……できるなら彼女を妻に、と思っています』


(寝言は寝て言え!)


 泥沼の境遇からようやく這い出し、大空へ羽ばたこうとしていたのに、世の中はどこまでも彼女に厳しい。

 ウエスト邸で新しく使用人を雇うことを耳に入れたとき、セントレ家の影をひとり忍ばせていた。だから彼女に何かあったときにはすぐ対処できるようになってはいた。


 しかしあの日――。


 アイラが事件に巻き込まれたという早馬の知らせで、僕はヴェストル領へ急いだ。あろうことか、彼女はあの男の母親からの仕打ちで負傷していたのだ!

 しかも言葉を失って!

 うなされて!


 ジェシー・ウエストという男は信用ならない。


 あれ以来、彼女の侍女はセレーナを付けている。護衛にはセレーナの知り合いタンディー家の次男を派遣した。身体が回復してからは、タンディーゴルフクラブで面倒を見てもらっている。

 ヤツは反対したが、構うものか。



※



 ウォルティー調べによると、アイラには遺言で認められた遺産が支払われていなかった。正当な遺産を彼女の元へ戻さなければならない。


 いっそのこと養女にしよう。そうすれば、万が一あのマヌケが彼女を望んだとしても、守ることができる。

 いや、あの男へは渡さない。



※



「アイラ・サウス嬢を養女にしようと思う。承諾してくれるかな、最愛の奥様」

 僕は奥様に告げた。


 以前から考えていたことだ。

 その決断ができなかったのは、サウス家とウエスト家に挟まれた彼女の立場があやふやだったからだ。現在アイラはサウス家から独立し、ギーズ出版社で働いていることになっている。

 サウス家は彼女に興味がないらしく、何の連絡もない。


 だがもう時間がない。グズグズしているとあの男に掠め取られてしまう。


「ランベールが当主よ。好きにすればいいじゃない。あなたがあの娘に執着してるのは分かっているのよ。いつだってわたしよりもあの娘を優先していたもの、妬けるわ」

「決して奥様よりも優先していたわけではありませんよ」

「愛人じゃなかったの?」

「それはないよ、僕は奥様一筋なんだから」

「嘘つきね!」

「嘘などでは……エレンこそ、エスコートはいつもフリップではありませんか!」

「あれは……お飾りよ、お・か・ざ・り。わたしの言うことは何でも聞くから都合がイイの。隣に侍らせれば映えるでしょう?」

「あなたという人は……」


(それでいいのか、フリップ。お前はエレンに殉ずるのか、馬鹿な男だな)


「伯爵様はどうなの? あの子を気に入ってそうだけど」

「そもそもあの男が元凶だ」

「フ〜ン、パパに言ったらサウス家に興味を持つかもよ」

「何を考えておいでかな、奥様」

「だって、ランベールのものはわたしのものだもの。サウス家のものを頂くことにするわ」


「……」


 恐ろしい人だ。


 あとになって知ったことだが、セントレはサウス家の借金を肩代わりする代わりに、男爵領を担保にさせたらしい。

 裏で誰が動いたかは言うまでもないだろう。



※



 次の日僕はウォルティーにいくつかの指示を出した。

 アイラ嬢の遺産相続申立ての手続きと、現男爵家当主への制裁、オリエンス侯爵家令嬢エリーゼ・イーストの嫁ぎ先だ。


(これが終わったとき、世界はアイラを傷つけないだろう)



~ランベール・ギーズ裏工作に続く~

~~~~~~~~

☞デキる男ランベール・ギーズ、容赦ない裏工作がはじまろうとしています。

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