第一回目謎契約終了――一体何だったのか
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★ようやく謎の契約が終了し、念願の自立が目前に。そこにあの伯爵様が……?
★前回のチンピラ回は人気がないことが分かりました^^;、もの凄く楽しんで書いたので残念です^^;
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離れにポツンと取り残されて放置され、巡り巡ってまた晩秋。
ランベール様からの手紙は契約最終日の十日ほど前、最後の手紙だけを残し、使用人を十人くらい引き連れたフリップさんが回収した。
最後の手紙には、『長い間お疲れ様でした。最終日の正午、ウエスト邸正門から東寄りの沿道にてお待ちしております。住まいもご用意しております』とだけ書いてあった。
終了日は早朝から屋敷の方があわただしかった。半年以上ぶりに高飛車メイドが現れ、バッタバッタと離れを片付けはじめた。
(久しぶり。アンタ今まで何してたの?)
朝食後には石化執事さんがやって来た。
(この人、あと何カウントで砕け散るの?)
「アイラ嬢、一年間お疲れ様でございました。本日の午後当主様がお会いしますので、応接間でお待ち下さい」
当主様――ヴェストル伯爵ジェシー・ウエスト(クズ)か。国外から帰って来たんだ、だから屋敷が大騒ぎなんだ。どんな奴か見てみたいけれど、正午にはランベール様が迎えに来るし……。
(今回だけは勘弁してやる!)
「ありがとう、ございます。迎えが、来ていますので、失礼、します」
「これまで当家の使用人が大変失礼をいたしました。謝罪は後ほどさせていただきますので……」
「はぃ……」
謝罪してくれるんだ。
わたしは執事さんから渡された契約終了の書類にサインし、正午前にはトランクを持って離れを後にした。
だいたいこの契約自体が謎なんだよ。誰がこんなアホクズ契約を考えたんだよ――クズ伯爵か。
石化執事さんからは雀の涙程度の謝罪金をいただき、指輪も返しましたよ。こんなはした金で済む話ではないと思うけれど、これ以上面倒は起こしたくない。
(やっと自由を取り戻したわ!)
これでわたしを監禁したクズ叔父とも、わたしをただの置物として利用したクズ伯爵とも、わたしを放置DVしたクズ使用人がいるウエスト邸とも、狂暴クズ令嬢とも永遠におサラバ!
アイラに転生してから二度目の冬。今度こそ念願の自立をするのよ。そのためにお金を貯めて、一軒家を買おう。
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目標:一軒家!
∴ ∴ ∴
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約束通り、正午前にはランベール様が迎えに来てくれた。
何と、二人乗りオープン、白馬の馬車! これからパーティーへ行くみたい。
ス・テ・キ。
しかも、いつもはラフなスタイルのランベール様、今日はピカピカのシルクハットで正装じゃないの?
おおう、ますますス・テ・キ。
「アイラ嬢、乗ってください!」
「はい、ランベール様!」
馬車に飛び乗った。
ランベール様が、わたしの身体を支えてくれた。
そしてかすみ草の花束を頂いた。
「一年ぶりですね、心配していましたがお元気そうで安心しました。さあこの監獄を出ましょう。あなたの住まいへご案内しますよ」
もう二度とウエスト邸には関わらないし、サウス家にも戻らない。
「無事再会できましたね、アイラ嬢」
わたしの両手を軽く握るランベール様。手袋越しの感触がくすぐったい。
ずっとずっと、ランベール様に会いたかった。
【待ってくれ!】
(えっ?)
走り出した馬車から振り返ったら、足の長い、黒っぽい何かが瞳に映った。
(誰?)
「振り返ってはいけません!」
「ハ、ハイ……」
ランベール様がわたしの肩をキツく抱いた。
「ウォルティー、最速で逃げ切って!」
「はいよ、ギーズ卿」
馬車は猛スピードで走り去った。
※
オープンキャブでランベール様から伝えられたことは――。
「サウス家の叔父には、あなたはギーズ出版社で働くことになったと、そのうち伝えておきましょう。今知らせて連れ戻されたくはないでしょう?」
「も、もちろん! 何から何まで、ありがとう、ございます」
サウス家になんて戻らない。
マリオンさんとタンディーさんには会いたいけれど。
「ところで、ウエスト邸でのあなたへの扱いを不当だと訴えますか?」
「え? それは、考えても、いませんでした」
「訴えることもできるんですよ」
「う~ん、あの人たちとは、もう、会いたくないです。こりごり」
「分かりました、アイラ嬢の評判にも関わる問題ですからね。不満は残りますが、今回は不問としましょう」
そして何と、アパートを借りることができたのです。住居費も出版社から支給されるんですって。
キッチン兼居間と寝室とバストイレがある、清潔感のある1DKアパート。女性専用、女性大家さんと家政婦さんがいて、朝食の用意や洗濯もしてくれる。長期滞在ビジネスホテルみたい。
(念願の自立!)
しかも、わたしの短編集が出版されていたのです。
ランベール様、フリップさん、アーチーさん、女性店員さん、ありがとう。
わたし――アイラ・サウス、十七歳。
何とかこの世界で生き長らえました!
※
朝ダラダラ起床すると、コンコンというノック音とともに家政婦さんが朝食を持ってくる。
ベーコンエッグ・丸パン・各種ジャムとバター・ジュース・紅茶。
朝食後、一年前まで通っていたティールームで執筆。
ハイネックのブラウスに同色のアンダースカート、青いリボンを飾った比翼ボタンのアイボリーロングワンピースを上に重ね、足はハイソックスとペッタンコ靴。
これがわたしの仕事着。
最近視力が弱くなってきたので、仕事をするときは眼鏡もしているんだ。
コートと帽子はランベール様に頂いた最高に暖か~い高級品。今は冬だからね。コレだけは『ザ・愛人』という感じ。
「アイラ嬢、久しぶりですね、今までどうしてました?」
「エヘヘ、長期旅行へ、行ってたの」
「ほぅ、うらやましいですねぇ」
ティールームのマスターともすっかりお友だちになりましたよ。
窓から外が見える最奥の席を独占契約したので、そこで一日中小説を書く。ときどきはギーズ出版社でイベント関係のお手伝い。家賃を払ってもらう代わりに臨時バイトくらいはしなくては。
そろそろ『カナン・ノース』というペンネームで、出版界隈のパーティーへ出席してみようかな。仮面舞踏会へ行って、『わたし、ミリー・サウスって言うのぉ、ヨロシク!』って、悪女っぽく名乗るのもいいよね。
ヲホホホホ。
最近ランベール様からお洋服を頂くようになった。
コルセットは自分で着用できる前ボタンのソフトなもの。ドレスはキャンディー色の可愛い系。二十五歳になる北橘佳奈にはチョット痛いけれど、儚げでお人形さんみたいなアイラ・サウスにはぴったりかも。
胸のサイズが微妙に合わないんだけど?
誰が揃えてくれたのかな?
こうしてようやく、わたしの異世界生活が軌道に乗ったのであった。
とても充実していて、何もかもが輝いていた。
異世界で得たわたしの幸せ。
※
それから五ヶ月近くたって……。
いつものティールームで、お洒落した人たちが行きかう街路の様子を眺めていた矢先のこと。
「相席を許していただけますか、レディー?」
ファッ、な、何か、スゲ~の来たよ!
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☞これで【第二部】は終わりです。次回から『【第三部】後悔と迷走のボッチ伯爵ジェシー・ウエスト』がはじまります。今まで空気以下だった(長いあいだスミマセン)謎の富豪貴族ジェシーの後悔・迷走・挽回ターンです。
☞第三部は来週から再開します。
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