フィカスビルディング殺人事件
『だーかーらー!!俺はやってねぇんだって!!』
_________【供述調書】2026年4月8日金井明容疑者は容疑を否認。
2026年4月7日、都内のフィカスビルディング4階の416号室からの異臭を不快に思った415号室の住人が大家に連絡し大家が何度か注意状を送るが7日に至るまで反応がなく近くの交番に注意してくれるように頼んだ。
同日すぐ近くにいた木村望美巡査が駆け付け30分ほど声をかけても返事がなかったのでマスターキーで開けたところ被害者の立山冬佳26歳が玄関で死亡していた。玄関も閉まっていて窓もあいていなかった。
同年4月8日、彼女の恋人であった金井明38歳を連行。金井は工事現場で働いていた際、昨年の11月に負傷し被害者の働いていた三峰総合病院で被害者の担当患者になった、そこから多少強引なアプローチがあったことが被害者の同僚から確認されている。さらに、犯行時刻にアリバイがなく立山の家の合い鍵を唯一所持していたため警察は彼が犯人で動機は痴情のもつれという意向で捜査を進めている。
そして現在私、木村望美は金井明の取り調べを続行している。
『金井さん、落ち着いてください。死亡推定時刻の4月5日の夜ごろ何をしていたか。それか最近あなたの持っている立山さんの合い鍵を落としたりなくしたりしたことはありましたか。』
「だから!俺が冬佳を殺すわけねぇって言ってんだよ!鍵だって落としてねぇし!大体一人暮らしの俺に都合よくアリバイがあるほうがおかしいだろ!!」
『金井さん落ち着いてください貴方を疑っている訳じゃないんです』
「じゃあ何なんだよ!この取り調べはよ!疑ってなきゃ何だってんだよ!」
話が通じない、完全に混乱している。キリがない........ため息をつきながら暴れまわる彼をなだめようとする。
『もう一度確認します。一つずつ事実確認です。貴方は最近立山さんの合い鍵を落とした覚えはない。』
「あぁ、そうだって言ってんだろ。」
『4月5日のアリバイはまだ思い出せませんか』
「一人暮らしだからな」
供述書に書いたことには全く進展がない。進展がないどころかますます金井が犯人に近づいてくる。そんな思いが口にせずとも伝わってしまったのか金井の機嫌も悪くなってしまう。
「お茶はいかがですかぁ?」
場の雰囲気をぶち壊すように入ってきた成人男性はスーツでかわいらしいフリフリのエプロンをしていた。
『ちょっと!?どなたですか,,,ここへの立ち入りは関係』
「____警部!おいていかないでください!」
上司である三重さんが遅れて入ってくる
『____警部???』
この男が?
「ほらのいたのいたー」
『.............ちょっと!』
椅子に座って回転しながらぶつかってくる男に反抗するが隊格差にはかなわず椅子から押し出されてしまう。
「初めまして金井明さん。私は【みめいかいと】です。未解決の未に、明らかにするの明、解決の解に人と書きます。いい名前でしょう?未解決を明らかに解く人、刑事にぴったりだと思いません?」
『ちょっと三重さん!あの人なんなんですか!』
「失礼なこと言うな....あの方は警部なんだよ」
ちょっと変わったなと付け加えて少しいやそうに小さな声で言う三重にもう一度男を見ると未明警部は金井に取り調べを始めている。
「金井さんが最後に立山さんとお会いになったのはいつですか?」
「4月1日に俺の仕事場に弁当を届けてくれたんだよ」
「ほぉー愛妻弁当ってやつですか。それからは会ってないと、今立山さんの家の合い鍵を持っているか確認できますか?」
椅子でくるくる回転しながらまるでカフェで雑談するかのように話す未明警部。
「鍵なら..........ほら」
ポケットから鍵の束を出す金井。5つほど連なったかわいらしいキーホルダー付きの鍵の束を出す。
「なくしてなかったとして、金井さんの鍵の束に誰かが触れる時間はありましたか?」
「,,,,,,,いや、仕事場の乗り物のエンジンの鍵がないと困るし着替えても入れ替えてるな」
仕事中も持っている........いや、そもそも金井の発言を信じていいのか.......
「わかりました。もう一度念のため確認しておきますが」
未明警部が椅子から立ち金井に顔を近づけた、うろたえる金井の肩をがっしりとつかみのぞき込んでいる。
「________貴方、本当に犯人ではないんですね?」
「ぁ......あぁ....... 俺は犯人じゃない」
パッと花の咲くようなにこやかな笑みになり肩から手を離し一度大きな音を立てて手を叩く。
「分かりました!では、責任をもって私が主導で捜査を再開します。」
______は?
『ちょっと待ってください!そんな勝手な!』
「君は巡査で三重君は巡査部長、そして私は警部だ。この場では私に決定権がある。.........それに、この国はグレーは白なんだよ。今捜査しないならどうせホシは上がらない」
コートを着て取調室から出ようとする彼を無理に引き留める。
『確かに私は巡査で貴方は警部ですが!それとこれとは関係なくこの話はすでに上にも報告書が上がっているはずです!』
「これかな?」
彼が取り出した書類は確かにこの事件についての上への報告書だった。
『.......どうして持ってるんですか』
「通りがかりの子が落としていった。とでも言っておこうかな.......私が一言冤罪かもしれないとでもいえば上の爺共は動かないよ」
『.........私も行きます』
んふふ、と気色の悪い笑い方で先を歩いていく彼だったが否定はされなかったので急いで後を着いていく。現場に到着するとすでに鑑識は仕事を終わらせていて物静かだった。
「この部屋を密室と判断したのはどうして?」
『そこに鍵があったんです。私が開けるまでドアは閉まっていました』
現場をひょうひょうと歩いていく彼にあきれながらため息交じりにこたえるが聞いているのかいないのか彼は被害者の死んでいたあたりに寝ころび始めていた。
「どうして彼女は.........玄関で死んでいたんだと思う?」
『______ぇ?それはそこで殺されたからですよね』
「私はたった今金井が犯人である可能性をほとんど消したよ」
『ちょっと待ってください!』
満足したのか早々と立ち上がり歩いていく彼を追いかける。
『どういうことですか?きちんと説明してください!』
「嫌だ。ところでドラマでよくある警察と一緒に部屋に入った第一発見者がそれとなく部屋に鍵を戻す、なんてことはなかったかな?」
『それはありません。私が入ったときにほかの人に玄関をまたがせませんでしたし大家さんは素手だったので指紋が付きます』




