戯れ
掲載日:2026/05/04
いつものように庭へ行くと、
草むらに寝そべった彼女が手を空で遊ばせていた。
きっと手持ち無沙汰なのだ。
隣に寝そべった俺を見向きもせず、
彼女は喋り出した。
「あーあ、君とのおしゃべりにも飽きちゃった」
「それは残念」
「また~、思ってないくせに」
「君こそ」
「あら、私が飽き性なの知らなかった?」
「知ってるよ」
「ここを出たらさ、
私も正式なあなたたちの標的になるかな」
「おそらくね。上は正直、君に手を焼いてる。
反逆とみなして、そう出る可能性の方が高い」
「やだー、殺されちゃうー」
「君は簡単にやられてくれなさそうだ」
「何それ、経験上の勘ってやつ?」
「そんなところかな」
「光栄ね。でも…」
彼女は俺に覆いかぶさり、自身の首を掴ませる。
「君に殺されるのは悪くないなー」
全く、彼女らしい宣戦布告だ。
「俺も、君になら喰べられてもいい」
「アハハ! ねえ、その仏頂面どうにかならない?」
そう言いながら、彼女は俺の小指を噛む。
彼女から受ける傷には不思議と痛みを感じられる。
「不味。これじゃあ私意外、
誰にも喰べてもらえないね」
「君を殺せるのも俺くらいだ」
「ふふ、楽しめそう」
その日を最後に、彼女はこの施設から姿を消した。




