小さい兄さんの一息
双子の兄弟、兄と弟は『アレ』が全く違う。
「今日も勉強疲れたー!」
と、大声で言い、息を吐く。
1人での下校、別に友達がいない訳じゃない。方向が違う、それだけ。
中学3年生、初めての受験。中学には受験しないで自動的に入れたから。バスが1時間に1本で、新幹線もない、そんな田舎ってこともあって。
人生初めての受験、高校受験で、ハイレベルな所は狙っていない、地元の進学校に入ろうと思っているから、多少は楽だ。けど、人生で初めてなこともあって、ものすごくドキドキしている。
試験の雰囲気は分からない。けど、ピリピリしてそう、とは思う。
オレは生徒会長ってこともあり、余計に緊張している。
まだ、夏だけど。部活を引退したばかりの、9月。9月も夏だ、暑いから。なんなら10月も夏。
夏って何だっけ。
「…アレが飲みたい」
ボソリ、と呟く。
田舎の中学校だから、『学校では水しか飲んではいけない』というルールがある。2026年なんだが。昭和みたいなルール、呆れる。嫌になる。
アレを飲みたくて、早歩きになる。
仕事帰りのサラリーマンみたいな気持ち。けど、オレはアルコールじゃなく、アレ。
そう、アレ。
①箱からコーヒーのスティックを取り出す。もちろんブラック。
②コップに『カルシウムたっぷり!』とうたった牛乳を200mlそそぐ。
③スティックを手で開け、牛乳が入ったコップに入れる。
④箸で混ぜる。
⑤飲む。牛乳のまろやかさとブラックの苦さが上手い具合に交差し、美味い!
カフェインも尚よし。
夕方だけど、カフェオレだから『眠れん!』とはならない。
「カフェオレうめえっ」
一気飲みし、言う。
『アレ』とは『カフェオレ』のこと。
カフェオレのスティックじゃなく、『カルシウムたっぷり!』の牛乳とブラックのスティックなのが肝心。『カルシウムたっぷり!』なのが。
オレは中3ってのに、入学式で買ってもらった制服が未だに…。
アイツは何回も変えてもらってるのに。
「仕事終わりの1杯は美味いなっ、やっぱり」
うんうん、うなずく。
中学生の仕事は『勉強』をすること。
オレは生徒会長だし、受験も近くはあるし、勉強を頑張らないと。
責任と緊張。それに勝たないといけない。
学校でもこのカフェオレを飲めたら、美味くて授業ももっと頑張れるかはいいんだが。給食では牛乳出すくせに、水しかダメとか。
「なんだ、兄ちゃん帰ってたのか」
のんびりとした声が後ろから聞こえる。
「僕もなんか飲も」
自然とオレの隣に立つ。
のんきな表情をした、双子の弟。
明らかに、弟の方がでかいんだが?
イラッとする。
「僕も牛乳飲も」
「ダメだ、お前は絶対にダメだ」
「えー、なんで?」
「弟なんだからオレよりも小さくあれよ! 双子で同じクラスだから笑われるんだよ! オレが!」
だから『カルシウムたっぷり!』の牛乳を毎日1杯飲んでるのに全く効き目がねえっ!
「てか、お前、またでかくなったか?」
「思春期だからね」
ニコッ、とされる。
オレも思春期なんだが…。
未だに制服のサイズが入学した日と変わらずという。大きめのを買ってもらったけど、ゆるさは変わらず。畜生。
「もうお前はブラックコーヒー飲んでろ、それ以上でかくなるな」
「でかすぎってことはないんだけどなー」
「は?」
「何でもありませーん」
『カルシウムたっぷり!』の牛乳、マジでオレの身長をなんとかしてくれ。
給食でも牛乳飲むし(普通の牛乳だが)、毎日2杯飲んでるってことになるんだけど、やっぱり『カルシウムたっぷり!』を毎日1本飲んだ方がいいのか?
もちろん1Lを。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
コメディーかヒューマンドラマか、コメディー寄りのヒューマンドラマ?




