表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖臨異餐譚 ~台所でしか無双できないチート転生者の旅に暴食脳筋、病的迷子体質、常時酩酊者を添えて~  作者: 深酒佞
魔王軍会議

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/110

幕間7 疵傀

「で、虚躯(フィジア)聖王(スプリミオ)について。なんか妙に遠回りしたけど、ある程度結論の方向性は既に出てるんだよねこれ」


 そう言って嘆息するユラエナに続いて、発言したのはエイゼンだった。


「……直接行って仕留める。それでいいだろう」


 この会議で初めて喋ったエイゼンに虚を突かれた顔をしつつ、ユラエナは頷いて続ける。


「そう。カナヴェーヌやトープドールがやったように、あたし達の誰かが直接統聖国(リウネア)に乗り込んで聖王(スプリミオ)を倒し、体を回収する。……うーん、移動手段はともかく、やっぱりそれが最適解ってことになるよねぇ」


 ユラエナの言葉に何か引っかかりを覚えたらしいエイゼンが問う。


「誰かが、ではなく全員で、一斉に攻め込めば早いのではないか」

「なんか急に喋るねエイゼン。でもそれは無理なんだよ。――《《あたし達の性質上》》」


 首を振るユラエナ。


「そうか、エイゼンは知らなかったんだっけ。『疵傀(ガヴェンスト)』の性質というか、制限について」


 黙って言葉を待つエイゼンに、ユラエナはしばし考えをまとめるよう目を閉じ、話し始めた。


「……あたし達『疵傀(ガヴェンスト)』は、魔王(ルゼルメイ)によって過去から召喚――再現かな?――された、歴史上の英雄だか何だかの幻影。魔王(ルゼルメイ)からの力の供給が無いと、この世界に存在を維持できないモノ。この前提は大丈夫だよね」


 首肯するエイゼン。ユラエナは続ける。


「問題なのは、この祈力(シェナ)の供給は距離の影響を受けるってとこ。メルから離れれば離れるほど、受けられる力の量が減衰する。そうすると存在強度が低下――平たく言うと弱体化するんだよね」

「……そうなのか」


 エイゼンの呟き。普段から無愛想で感情の読みづらいエイゼンだったが、この一言からは明らかな驚きが見て取れた。


「更に厄介なのが、供給対象が離れることでメル側の負荷も増大するって点。リュケオン、バシェナロアくらいまでの距離なら割と問題無く維持できるみたいだけど、それ以遠は厳しい。セラン・ウェーラーが多分限界かな」


 ユラエナが目を向けると、ルゼルメイは伏し目がちに頷いた。


「セラン・ウェーラーより南……統聖国(リウネア)にまであたし達『疵傀(ガヴェンスト)』が行こうと思ったら、メルに莫大な負担を押し付けながら、戦力の弱体という枷まで背負うことになる。一人でもそんななのに、複数人を送り込むなんて話になったら……負荷は計り知れない」


 無言で顔を見合わせたのはトープドールとミアム、そしてカナヴェーヌだった。


「ある程度の戦力を維持したまま同時に統聖国(リウネア)まで送れるのは、恐らく三人が限度。エイゼンが言うような集団での攻撃はできないってことだね」

「そうか……失礼した」


 引き下がるエイゼンの表情は、どこか落胆したように見えた。


「ルゼルメイ様も一緒に、全員で行けばいいのではないですか? 俺が担いでいきますので」


 ドゥーガーの提案に、しかしユラエナは首を横に振る。


「それも駄目なんだよ。メルがここ、グライネロアを離れると、それはそれで出力が低下する。この地の力をメルが汲み上げて配ってるようなもんだからね。ところで担ぐならあたしを担いでみない? その弾けるような筋肉であたしを包まない?」

「……いえ、遠慮しておきます」

「ちぇー」


 困ったような笑顔で断るドゥーガーに、ユラエナは残念そうに口を尖らせた。


「ごめんなさい……わたしの力がもっと強ければ……」


 俯いて自嘲気味に呟くルゼルメイ。

 それを聞いて、ユラエナは大皿の焚蜜麦(メクヌーエ)に手を伸ばしながら、敢えて淡々と答えた。


「メルの責任じゃないよ。そもそも常人には一人を一時的に召喚することすら困難な疵傀(ガヴェンスト)を、十五人も維持してる時点でメルの力は完全に規格外なんだし。その上距離まで確保しろなんて要求、贅沢にも程がある」

「十六人です」

「……うっさいな数え忘れてたよクレウグを。いないんだもん今。悪かったって」


 余計な揚げ足を取るカナヴェーヌに毒づきながら二つ目の焚蜜麦(メクヌーエ)を口に運ぶユラエナ。


 そんな他愛の無いやり取りに、ルゼルメイは沈んでいた顔をほころばせる。


「……ごめんね、ありがとう」


 その小さな声がユラエナに届いたのかは定かでない。

 ユラエナに合わせるよう、ルゼルメイも焚蜜麦(メクヌーエ)を口にした。

 つられて何人かが焚蜜麦(メクヌーエ)を手に取る。

 かすかな咀嚼音だけが響く食堂。しばらく無言の時間が流れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ