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聖臨異餐譚 ~台所でしか無双できないチート転生者の旅に暴食脳筋、病的迷子体質、常時酩酊者を添えて~  作者: 深酒佞
魔王軍会議

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幕間4 戦果と悲鳴の花

「えー……っと、まずはトープドールのやらかしと処遇について」


 大きな長机を囲むよう並んで座る魔王軍(シャギス・ディエンス)の面々に、進行役のユラエナが手元の紙を見ながら読み上げる。


「私の?」


 意外そうなトープドールの声に頷き、ユラエナは続ける。


「そこのトープドール君は、わざわざ南部に遠征して発見した聖標器(ヴァイネライナ)を、あろうことか聖王(スプリミオ)を呼び出す餌に使い、しかも勝手に戦って負けて奪われました」


 淡々と、だが明確に棘を含んだ口調で言うユラエナ。


「まぁ聖王(スプリミオ)に戦いを挑む事自体の是非は置いといて、手に入ったはずの聖標器(ヴァイネライナ)を放棄したのは魔王軍(あたしら)的に結構な大問題だよね。……で、なんか言うことある?」


 それを受け、訂正の声を上げるトープドール。


「待ってほしい。奪われたわけではなく在り処を教えただけだ」

「同じだよ」


 トープドールの異議をあっさりと切り捨て、ユラエナは続けてミアムにも言及する。


「なんかミアムも一枚噛んでる、っていうか一緒に行ってたらしいけど、どういう事?」


 困り顔で答えるミアム。


「ん~……あたしはむしろトープドール君を止めるために付いていったつもりなんだけどね。放っとくとどっちかが死ぬまで戦いそうだから、制御する役目……みたいな? あと呼び出しの手紙は代筆したかな」

「……ミアム、もしかしてあの時持ってった換身符(ジュスカフト)……」

「うん、トープドール君と聖王スプリミオちゃんに使わせた」

「そういう事かー……いや、気付けばよかった、あの時点で」


 頭を抱えるユラエナだったが、ふと何かに思い当たった様子で顔を上げ、ミアムとトープドールに問いかける。


「……じゃあさ、聖王(スプリミオ)の戦いは見たんだよね。何か、攻略の糸口みたいなのは見つけた? よね?」


 う~ん、と記憶を辿るミアム。しばし考え、


「炎を起こす術は使ってたかな、壁みたいに。あと抉界戟(ゼプシュラー)っていうんだっけ。長い槍? 斧? なんかそんな感じのを振り回してたよ、二本」

「敏捷性から考えるに、身体強化系の纏臨式カフラントは展開していたように思う。あと詳細は不明だが、相手の行動を阻害する呪いのような術も使うようだ。恐らくは、その武器による刺突を介してね」


 聞いた情報を紙に書き付けるユラエナ。


「なるほど……炎祇(ヴァーハート)はまず間違いなく絡んでそうだね。あとは呪祇(シュネオン)と……戦祇(エープウェール)か、力祇(マーガウス)辺りが濃厚かな。カナンに近い路線なら風祇フェウェンも有り得るか。ちょっとこれだけじゃ主約(エプラネ)までは確定できないけど、絞れるだけでも有り難い」


 一通り書き終えると、ユラエナは満足そうな顔でトープドールに言う。


「よくやった。いずれ本格的に戦う時のためにも、この情報が得られたのは重要だよ。君の暴走にも意味はあったね」


 得意気な顔で答えるトープドール。


「そうか、それは良かった。ならば私の行動についてはお咎め無しということかな?」

「それとは話が別。考慮には入れるけど、一定の罰は受けてもらうよ」

「……むぅ」


 打診は容赦無く却下され、得意気な顔は瞬く間に消え失せた。


「で、処分内容だけど……」


 少し考えるような素振りを見せるも、ユラエナは予め決まっていたことを読み上げるようにスラスラとトープドールに告げる。


「うん、という訳でトープドール。君には明日から三ヶ月の館内謹慎、及び皿洗いと庭の草刈りと倉庫整理を命じます」

「その程度で良いのか。心得た、任せておきたまえ」


 快諾するトープドールに若干の不安を覚えつつ、ユラエナはひとつ咳払いして、次の議題を読み上げようと資料に目を落とす。


「んふっふっはははザマぁないですねぇトープドール。三ヶ月といわず未来永劫、庭の草相手に刃を振るい続けてはどうです? ご安心下さい貴方が這いつくばって草を刈ってる間に私が悠々と聖王(スプリミオ)の首をあ痛ァー!!」

「真っ先に刈り取るべきは貴様の舌のようだな。言い残す事はその叫び声で充分か? 刈った舌は裏庭の花壇に植えてやるから安心するがいい。毎年綺麗な悲鳴を咲かせるよう努めてやろう」

「変なの植えないでね。ノーヤ君が泣くよ」

「せめて一年程度で勘弁してもらえないだろうか。私とて外出はしたい、と言うより聖王(スプリミオ)殿の成長を見たい」

「真に受けないでいいしトープドール君たぶん全然反省してないよねそれ」


 資料を確認している間に何やら騒いでいた外野はまるっきり無視し、ユラエナは次の議題を読み上げた。


「えー……そんじゃね、次。さっきもちらっと話に上がった聖標器(ヴァイネライナ)について」


 脛の痛みを堪えるカナヴェーヌの呻き声だけを残して静まった室内に、ユラエナの気怠げな声が響く。


「トープドールとミアムはずっと外に出てて知らないだろうからこれは情報の共有だね。トープドールが見つけた……渇尽牙(サディオーグ)だったかな? とは別に、こちらでも一つ、聖標器(ヴァイネライナ)の在処を発見しています」


 ミアムとトープドールの驚く声が重なる。


「南部、セラン・ユプセン近郊の遺跡に存在するらしいことがわかった『拒葉剣(ベヌウィデン)』。今、それを回収しにクレウグが向かってる」


 その言葉にじわりとざわつく室内。


「クレウグさんが……?」

「そういえばいませんわね……」

「やべェ、全ッ然気付かなかった……エイゼン様と違って黙ってると存在感皆無だからなあの人」

「喋っても皆無ですけどね」

「正面から堂々と名乗りを上げて決闘しても暗殺扱いされそうだものね、彼」

「はーい、クレウグ談議はそんくらいにしといてー」


 思わぬ方向に盛り上がりかけた一団を制し、ユラエナは何か言いたげなトープドールに問いかける。


「どうかした、トープドール?」

「うむ、新しく聖標器(ヴァイネライナ)を発見したと言ったが、どう探したのかと思ってな。私も中々に苦労した。そう立て続けに二つも見つかるとは到底思えないのだが……」

「あぁ、それについては――」

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