表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖臨異餐譚 ~台所でしか無双できないチート転生者の旅に暴食脳筋、病的迷子体質、常時酩酊者を添えて~  作者: 深酒佞
聖臨異餐譚 序 -記憶の始点-

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/110

第11話 始まりへ向かう

 抉界戟(ゼプシュラー)覆心鞘(ヤファーズス)の効果は絶大だった。

 まさか本当に、見た瞬間全員が膝から崩れ落ちてひれ伏すとは思わなかった。いやちょっと期待はしてたけど。凄いな聖王(スプリミオ)の威光。


聖標器(ヴァイネライナ)。かつて聖王(スプリミオ)が扱った、超性能な超武具の総称よ。あなたの持つ抉界戟(ゼプシュラー)覆心鞘(ヤファーズス)もその一部。大半は大陸中に散逸、遺失してしまって行方知れずになっているのだけれど……その二つに限っては特殊で、所在がある程度はっきりしていたの。聖王(スプリミオ)が最初から最後まで使い続けた、という言い伝えによってね。

つまり、抉界戟(ゼプシュラー)はまず間違いなく聖王(スプリミオ)最後の地、グライネロア近辺に覆心鞘(ヤファーズス)ごと眠っているとされてきた。あるいは、聖王(スプリミオ)本人が未だに抱えているか、ね。

もしあなたが聖王(スプリミオ)である証明をする必要が出てきたら、抉界戟(ゼプシュラー)を取り出して見せれば一発よ。そんなものをそんな持ち歩き方してるバ……特徴的な人は他にいないもの》


 以前、ロティに聞いていた抉界戟(ゼプシュラー)についての説明だ。

 わざわざそんな手段で証明しなければならない場面が発生するのか、仮に発生しても極力やりたくないものだと思っていたが……本当にその時が来るとは。というか本当にあれで証明になるとは。


 俺を聖王(スプリミオ)そのもの、あるいはそれに非常に近しい存在だと認識してくれた彼ら、この施設の職員達は、感極まったように涙を流しながらの大騒ぎになっていた。


聖王様(スプリミオ)が……! 現れた! 帰ってこられた……!!」

「やっぱり生きていたんだ! 無事だったんだ!」

「あれが、抉界戟(ゼプシュラー)……! 本物の……!」

「伝説の最後は我々の、統聖国(リウネア)の勝利だったのだ!!」

魔族(ディアティーアン)から私達を、統聖国(リウネア)を守るために甦ったのですね!」


 うーん、自分の事ではないとはいえ、こうももてはやされると、なんどもこそばゆい。

 国を守るなんて意識は正直全く無いんだけど、なんだか勢いだけでそうなっちゃいそうだ。

 ちょっと楽しくなってきてしまったところで、狂騒の中、一人の職員が部屋を飛び出しながら大声で言った。


「俺、本棟のみんなに……いや、街中に伝えてきます! 聖王様(スプリミオ)が来たって!」


 ん……? 喜んでもらえるのはいいけど、あまり大きく広めるのは……大丈夫なのか?

 少し引っかかりを覚えたところに、ロティの神妙な声。


《アレ、止めた方がいいかもしれないわね。この時点で大規模な騒ぎを起こすのは、多分得策じゃない》


 証明の時はあんなに囃し立てたのにここは慎重になるんだ……。

 けどまぁ俺としても、騒動が広がるのはちょっと気が引ける。

 駆け出した職員を引き止めるべく声を上げかけたところで、


「待てッ!!」


 ずっと最前で膝立ちになっていた男性が、先に動いた。

 とても今まで呆然としていたとは思えない勢いで立ち上がり、扉へ走ると廊下の職員へ制止の声をかける。


「戻って来い、外へはまだ知らせるな!」


 ここからでは廊下の様子は見えないが、恐らく声は間に合ったのだろう。

 男性に続き、少し遅れて職員も部屋へ戻ってきた。


 男性は他の職員達にも「少し静かにしていろ」と声を掛けながら、俺の前へと帰ってくる。

 そして片膝立ちになると、


「大変失礼しました、聖王様(スプリミオ)。見苦しく騒ぎ立ててしまい申し訳ございません」


 とうやうやしく頭を下げて言った。


「え、いや、いいですよ別にそんな。というか俺の方こそ、皆さんの言う聖王(スプリミオ)本人じゃなくて同じ体なだけの別物なのに、なんか期待させてしまって申し訳ないと言いますか……」

「いえ、我々にとっては貴方は聖王(スプリミオ)そのもの。違うと申されましても、貴方の言われるところの『本人』との違いを確認する術は我々にはございません」


 それはまぁ確かにそうか。二百年前の人物に直接会ったことのある人なんて今はいないだろうし。


「ただ……失礼ながら、聖王様(スプリミオ)。貴方の帰還は、国民には一時的に伏せさせていただきたく存じます」


 と、彼は頭を下げたままそう提言してきた。


「あぁ、はい。それは構いません、というより俺としてもその方が多分ありがたいんですが……ちなみに何故でしょうか?」

聖王(スプリミオ)の帰還という報せは、いたずらに広めるとこの国全体を、あるいは旧魔領(ヴォフディアーテ)さえも混乱に陥らせるでしょう。ただ拡散させるのではなく、然るべき機会を計った上で、大々的に公表すべきではないかと」


 なるほど、そういうものか。俺としても自分が原因で大騒ぎになるのはなんか気が引けるし、彼の言う通りにしてもらうとしよう。


「じゃあ、それでお願いします。……ところで」


 彼の意見に頷き、ついでにちょっと気になっていた事を訊かせてもらう。


「はい、どうなされましたか」

「その……話し方なんですけど、もう少しこう、普通になりませんか。最初みたいな感じに。あと名前も聞いておきたいんですけど……」


 そう言うと、彼は心底困ったような表情になる。


「私などがそんな、恐れ多い。あのような失礼極まりない態度で接した事、むしろ咎められるべき醜態であるかと存じます。私の名についても、聖王様(スプリミオ)の耳に入れる価値はございません」

「いや……俺としてはあれくらいの話し方のほうが楽でいいんですけど……駄目ですか?」


 あれはあれでちょっと圧が怖かったけど、今みたいなガチガチに堅い態度で来られるよりは助かる気がする。そう思って提案してみたのだが。


聖王様(スプリミオ)からの頼みとあらば……そのようにさせて頂きます。いや……、……そうしよう」


 観念したように、彼はその話し方を、くだけた調子に変えてくれた。ごめんね無理言って。


「あー……、僕、のことはハストと呼んで……くれ。それで、先程の話の続きなので……だが……」


 どうにもぎこちない調子で話し始めるハスト氏。ごめんね無理言って。


聖王(スプリミオ)の帰還という一大事件については、とてもこのロテュメアのみで処理しきれる範疇の内容では、……ない。情報公開の機会を伺うと話した件についてもな。……そこでだ」


 一呼吸置くと、ハストさんは窓の外、何処かの方角を指し示しながらこう続けた。


聖王様(スプリミオ)には、これからセラン・リウーネへ向かっていただきたい。この大陸南端、統聖国(リウネア)の中心である為聖庁(デューア・リウーネ)が存在する街。――聖王(スプリミオ)の伝説の、始まりの地だ」


 聖王(スプリミオ)の、始まりの地。

 その言葉は、何故か俺の心を強く焚きつけるようで。


「……はい」


 湧き出した使命感のようなものに駆られ、意識せず、深く頷いていた。

 応じるようにハストさんも頷き返すと、更に続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ