27 モンスターたちの好み
「ナイスよ、太一!」
「ついに成し遂げましたね」
配信を終わると、キューちゃんともみじは駆け寄ってきた母さんと婆ちゃんに、確保されてしまった。僕がちゃんと堪能するには琥珀が必要だー。
それがキューちゃん解放の条件になってしまった。
横暴です!
「おば様、お婆様。念のために2人はダンジョンに連れて行って」
「あれ? なんか問題ってあるの?」
レーナ姉ちゃんが言うには、僕の魔力ご飯だけじゃ体調を崩す可能性もあるってことだった。今までは平気だったけど、やっぱテイマーとは違うから気を付けたほうがいいってさ。
「そう……ですね。私たちのことしか考えていませんでした」
「ゴメンね、キューちゃん」
「でもたぶん大丈夫だとは思う」
あくまでも、念のためってこと。
「あ、それにさ、冒険者さんと遊ぶのも大事だからね!」
色々と気付くこともあったもんね。
力加減のこともあるし。
赤ちゃんでもモンスターだもん。
「力は強いからね」
「ミルクとだんがんくんも、力加減を覚えつつある」
「分かりました。約束しましょう」
「大事なことだもんね。母さんも約束するわ」
ということで今夜はキューちゃんも他のみんなと一緒に、過ごしてもらうことにしたよ。
寂しそうにしてたけど、僕とレーナ姉ちゃんは容赦しないのだ。
つまり翌朝には追加でガマンをさせてしまうのです!
「言っとくけど今日も連れ出しちゃダメだからね!」
「冒険者たちと遊ばせる」
「「…………」」
凄く不満そう。でもダメです!
これは僕が魔力過多症の人の力になりたいっていうのもあるから、力加減を覚えてもらうことはとても大事なんだ。
すぐにできることじゃないから、そんなに急いではないけどね。
「来週くらいには夜はウチに連れてきてもいいんじゃない?」
「そうね」
夕方くらいまではダンジョンで働くんだし。母さんと婆ちゃんは1層だから、キューちゃんともみじは連れて行っちゃダメだしね。
さすがにお持ち帰りが、ずっとダメってわけじゃないよ。
「出陣」
「おー!」
「「ぉー……」」
どんだけショックなのさ……ちゃんと朝ごはん食べたのにね?
僕たちはダンジョン1層で、冒険者さんたちに朝の挨拶。
今日もよろしくお願いしますっ。
「なにか不便なところがあったら教えてください。できるだけ調整していく予定なのでっ」
「要望ノートとか置いておけばいいんじゃないか?」
冒険者さんから提案が出ると、レーナ姉ちゃんにガシッと抱き付かれた。
ダ、ダイジョブだってば!
今は出そうとしてないでしょ?
「右手が動いた」
「ぐぬー!?」
「あはは、動画とか配信のままなんだな。ノートくらいこっちで用意するから気にしなさんな」
「よく考えたら、ダンジョンマスターで出さなくても家に帰ればあるよ?」
「仕事終わりに持ってこよう。足りなくなるかもしれないから、何冊か置いておくのがいいわ」
「はーい。じゃあBランクの人と僕らは2層に行きましょー」
今回のBランク冒険者さんは1人だけ。なのでレーナ姉ちゃんと僕もなるべくみんなと遊んであげるんだー。今日は新しい子のサラちゃんともみじ、あんまり参加していなかったキューちゃんの好みを探っていくよ。
「不肖山谷、気になることがある。キューちゃんは普段、家ではどんな感じなんだ?」
「基本のんびりね」
「うん。母さんか婆ちゃんに抱っこされてたり、おんぶされてたり」
でも最初は色んなところに興味を持ってウロチョロしてたっけ。
見たことない物に興味があるって感じかな?
「ってことは、サラちゃんと一緒にさ、色んなことを試すのがいいのかなあ」
「そうね」
「だったら今あるオモチャで遊んでみようか」
「私はフリスビーを担当する」
「ならばこの俺、不肖山谷は縄跳びをしてみよう」
「僕も混ざりたいけど……運動してくるね」
今日のお供はベイトリスザルのサンちゃん、もんきち、ひまわり、レモン。
自転車に乗ったり、僕に乗ったり、走って着いてきたり。花ちゃんは僕を乗せたがり過ぎるので、遊ぶのを優先してもらってるよ。
「行って来まーす」
「行ってらっしゃい」
「あとでな!」
レーナ姉ちゃん作のカリキュラムで少しは体力がついてる。
僕は強化されてまーす。
実はこないだから10周じゃなくて12周になったんだよ!
でもスキルの熟練度は、よく分からないままかなー?
成長したらハッキリとした違いってあるのかな?
あとで聞いてみよーっと。
結局は体力勝負って言ってたから、まずは目標の20周を目指して泉周りのサイクリングで体力強化だね。
「ふぅ……はぁ……ひぃぃ」
ちょっと増えただけなのに結構疲れるう。
もんきちとレモンが、王様のヤツをやってくれてる。
サンちゃんとひまわりは、僕の汗を拭いてくれてるよ。
「ありがとー」
ベイトリスザルって賢すぎない?
寝てる僕の着替えもやってくれたことあるしさあ、凄いよね。
「ふぅぅ~……じゃあ他のみんなと合流しよっか」
息も落ち着いてきたので芝生公園のほうに向かうことにした。そしたらレーナ姉ちゃんと不肖さんが飛び跳ねてるのが見える……ね?
なんか明らかに人間が飛ぶ高さじゃないけ……ど?
それに合わせてジャンプしてる子たちは、サラちゃんと鹿園さんたちだ。ホワイトデスくんやフェアリーバットくんたちは、その周りをクルクル飛び回ってる。
飛行組に釣られてスケアリーウルフのみんなも駆け回ってるね。
花ちゃんはのんびり見守ってる感じかな?
その花ちゃんの頭の上で、蓮の花をはさんでキューちゃんともみじがバンザイバンザイしてる。
そんな不思議な光景が見えた。
「ただいまー」
「おかえり、太一くん」
「お疲れ、太一くん。いやあ、みんな体力が凄いな!」
「そうなんですよね。やっぱり前に冒険者さんから教わったアスレチック、早めに作ってあげたいかもっ!」
「そ、そいつできるヤツだな。不肖山谷もなにかアイデアを出したいところだ」
「私も太一くんも悔しくなったアイデア」
不肖さんも悔しそうな顔してる。
アスレチックはねえ、いいアイデアだもんね。
レーナ姉ちゃんと一緒に調べてたりもしたんだけどさ……。
その前にモンスター召喚しちゃった。
「ところでさ、なんでジャンプしてたの?」
「鹿園さんたちとサラちゃんが好きな遊びだったんだ」
「そう。跳ねるのが好みみたいよ」
なるほどー。
「キューちゃんともみじは?」
「デッドリーベアは……なんと言うか新しいものには興味を示す、か?」
「そうね……そしてすぐに飽きる」
「それで花ちゃんの上でバンザイしてるのかあ」
「色々と探検できる場所があると喜ぶかもな」
「おおっ、ナイスアイデア!」
「アイデアを煮詰めるべき」
モンスターのみんなも思い思いにまどろんでる感じ。だから今のうちにアスレチック場のアイデアを不肖さんも交えて一緒に考えることにした。




