理由解明
棟万千はカケラに引きずられるように病院に来た。
「でっけ……」
月満総合記念病院は学園から一番近いかつ市内で一番大きい病院だ。
「ほーら、早く行くよ」
受付で開口一番カケラはーーー
「医院長のカケラが来たと伝えてください」
受付の女性は首を傾げながら内線の受話器を取った。
反応を見る限り信じたようだ。女性に導かれ院長室に通される。
「どうしたカケラ」
「お仕事中にごめんなさい。トウ君が先週のテールリーグで体調崩しちゃったみたいで。どうにかならない?」
「彼がそのトウ君か?」
医院長は棟万千に視線を向けた。
棟万千を見るその眼は学園内で感じるどの視線とも違った。
恨んでいるような、喜んでいるような、羨ましがられているような、そんな感情が読み取れた。
「おじいちゃんに聞いたぞ。誕生日プレゼントと引き換えに参加させたって」
「だって、サソリだからってみんながトウ君を見下すんだもん」
「まあ、話は分かった。斎藤先生を呼ぼう。この病院で一番腕のいい尻尾科の先生だからな」
医院長は内線で斎藤医師を呼び出した。
「会議室に来るように言ったから、今から行きなさい」
「ありがとう! お父さん!」
「イグサ君、娘が迷惑をかけるよ」
「………いえ」
院長室を出てすぐの会議室でくたばりながら斎藤医師を待つ。
「尻尾科の一番腕のいい先生に診てもらえるって。よかったね」
棟万千からひったくった問診票を書きながらカケラが言った。
尻尾が生やせるようになって尻尾の不調は最初内科の仕事だった。
しかし、内科の範疇ではないことが度々起きたので、対応できるように尻尾科ができた。作られたばかりのの頃は不要ではないかと言われていたが、尻尾の普及率が爆発的に増えたので結局今も残されている。
「(しかし、サソリ程度に医者呼びつけるって親子共々すげえな)」
三十分ほどして斎藤と名乗る医者がやって来た。
「お待たせいたしました。今日はどうされました?」
カケラが問診票を渡してから話を始める。
「今日は友達の彼の付き添いで来ました。調子悪いらしくて」
「そう、ですか……」
斎藤医師は問診票を一読してから棟万千の尻尾を聞いて目を細めた。学園内で散々見た軽蔑の目だ。
「わかりました。腕は良くても人間は出来ていないようですね。そんな顔をする人には彼を任せられません。」
そういって棟万千に肩を貸して立ち去ろうとする。
「お、お待ちください! ぜひやらせてください!」
「そうですか。じゃあ、お願いします」
それからやっと診察が始まった。
棟万千は症状を聞かれたので毒の使い過ぎたのだろうということ、発症は先週の日曜日の夜だが翌日から既に怪しかったということ、市販薬でごまかしていたが一向に良くならないこと、などを伝えた。
「血液検査しましょうか。おそらく短期間で毒を生産しすぎて免疫機能が過剰に反応して炎症が起こっているのでしょう。数値によっては入院も考えましょう」
結果、診察通り炎症が起きており数値は既定の三倍を記録した。つまり、即日入院である。
病室に着いた棟万千はベッドに顔から突っ込んだ。
入院に必要な荷物はカケラが後で持ってきてくれるそうだ。
何で知ってるんだ、というツッコミはしないでおこう。
「(この病室って一泊いくらなんだ)」
ぼーっとする頭で入院費を調べてみる。
病院のサイトによると一泊二万以上するようだ。
「うへえ……」
そんなことをしていると眠気が来たので寝た。
炎症止めが点滴で投与されてかなり楽になったものの、副作用で常に頭がぼーっとした。
再燃と寛解を二日間繰り返し、大事をとって火曜日にやっと退院できた。
当然月・火の授業は出られなかったが、内容はカケラがノートを見せながら説明をしてくれた。カケラのおかげで授業に遅れなさそうだ。
水曜日からはいつも通りの日常だった。カケラがつきまとい、それについて学園中からいちゃもんをつけられ、教師からはよくわからない難題を押し付けられる。それ以外は特に変わらない日常が過ぎて終業式の日になった。
当然テストは全教科95点以上を取ったので三学期も特特クラスキープだ。
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