テールリーグ 二戦目~決勝
二戦目から決勝まで一気にいきます
二戦目。初戦が思いのほかかかり三日目になった。
「さて行きますかね」
初日と同じように【針による注入】は禁止だった。加えて【散布および塗布】も禁止された。
「なら、そうだなあ」
注入、散布、塗布を好んで使っているのは楽だからだ。相手の進路上に撒いておけば勝手に喰らってくれる。
「面倒だし量も必要だから正直やりたくないんだけど」
棟万千は地面に手をついた。
相手の尻尾はサメ。効果は地中・水中問わず潜れることだ。
しばらくして苦しそうに喉を抑えた相手が地中から出てきた。
「浸透なら注入でも散布でも塗布でもないから文句ないよな?」
またも渋々な声で勝利のアナウンスをされた。
翌日の三戦目、案の定【浸透】も禁止されたので針から毒の塊を出し、投げつけた。当たった相手は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。
相手が戦闘不能になり仕方なく棟万千が勝利とする旨がアナウンスされた。
「ルールの穴をつきやがって! いい加減負けろよ! お前の勝ちなんか誰も望んじゃいねえんだよ!」
そうだそうだと野次が飛ぶ。
「誰も、か。そいつぁちと違うな。少なくとも一人は望んでくれてるぞ」
四戦目は【毒及び分泌物の一切の使用】を禁止された。
さすがに堪忍袋の緒が切れたカケラが抗議に行ったが、大丈夫だと棟万千自身が言った。
相手はチーターの尻尾。地上最速と名高いチーターだか、そのスピードはせいぜい20秒だ。人間の持久力と合わせても長くて一分が限界だ。
スピード故に曲線に弱く、動体視力を鍛えている棟万千に対してスピードは武器にすらならない。
むしろ初戦の木嶋の方がパワーがあって苦戦した。
一分が経過して案の定相手が力尽きた。
「ゲホ、ゴホ、ゲホ……」
膝に手をついて肩で息をしている。
「おー、立っていられるとはすごいねえ。鍛えればもっと長く走れるんじゃない? ま、そのスピードに足の回転がついていければ、だけど」
棟万千が何かするまでもなく四戦目は終わった。
五戦目、六戦目と順調に勝ち進んでついに決勝を迎えるのみとなった。
決勝は各会場の勝者が第一会場にて三つ巴をする。
熱気が充満し、棟万千が負けるのを今か今かと待ち望んでいる。
「やあっと最後か」
この時、棟万千は【毒及び分泌物の一切の使用】【尻尾を動かす】ことを禁止されていた。決勝でついに移動が禁止された。
「くあ……(どうしても俺を優勝させたくないらしいな。ん?)」
第一会場の勝者と第二会場の勝者がヒソヒソと話をしている。どうせどちらかが協力を申し出たのだろう。
カーンッとこの一週間で耳にタコができるほど聞いたゴングが鳴った。
と同時に二人が突っ込んでくる。
「っと、よっ」
上体を逸らしたり、身体の角度を変えたり、片足を軸に回転したりと棟万千はその場で対応した。
周りには軽々と避けているように見えるかもしれないが、実際はかなりギリギリだ。移動できないこともそうだが、第一の勝者も第二の勝者も犬系の尻尾だからだ。犬系の特徴は無尽蔵の体力だ。加えて両者とも世間的に狩猟犬と呼ばれる犬種の尻尾で機動力もある。
「良い連携だな」
右の攻撃をかわせば左からくる。後ろ、前と一切の反撃を許さない猛攻。
昨日今日でこれならどこに行っても重宝されるだろう。
「ま、付け焼刃には変わらないな」
向かって来る拳を掴んで引き寄せる。
「よお」
「は、放せ!」
「卑怯だぞ!」
「どこが? 俺は向かってきたモノを掴んだだけだぞ?」
二人は離れようと後ろに力を込めているので、お望み通り手を放してやるとバランスを崩して尻もちをついた。
「毒持ちだとこんなこともできるようになるんだぜ」
棟万千は二人と視線を合わせてから一瞬目を見開いた。
二人はビクッと小さく反応するとガタガタと震えだした。
まばたきもせず、棟万千を見つめ脂汗を流し短く浅く息をしている。
「決勝まで来たことは素直にすごいと思うぞ。だがまあ、相手が悪かったな」
棟万千が利き手を二人に伸ばそうとすると
「「う、わああああああ!」」
叫びながら我先にと入退場口に駆けだした。
「あらら? 退場は負けを認めたことになるけどお」
バタバタと何故かおぼつかない足で逃げていく二人に声をかけたが、振り向きもしない。どうやら聞こえていないらしい。
『えー、第一会場勝者武田・第二会場勝者佐藤の退場により棟万千の勝利い』
倦厭の情がのった棟万千の勝利コールに喝采を上げる者は一人を除いていなかった。当然表彰式などなく賞金袋は控室で乱暴に投げつけられて本年度のテールリーグは幕を閉じた。
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