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テールリーグ 一戦目

『続いて第三戦は、キリンの尻尾の木嶋ミツトシ対サソリの尻尾の棟万千イグサだああ』

入場すると木嶋のときは歓声が上がり棟万千のときはブーイングが上がった。

「とんでもない嫌われようだな。ま、サソリだもんな。動物至上主義の世の中でサソリを生やした奴の気がしれんな」

木嶋は鼻で笑った。

『なお尻尾の針による注入は禁止です。これは相手が中毒にならないように、という学園側の配慮です』

後付けのようなハンデに耳を疑ったが、反論したところでどうせ聞いてくれないことはわかりきっている。

「うだうだ言ったところでしゃーないか」

「負ける覚悟は決まったか?」

「どーだろーねえ」

カーンッと開戦の音がした。

「先手必勝だ!」

木嶋は考えがあるのかないのか突進してきた。

棟万千は身体の向きを変えるだけで避けた。

今度は壁を蹴って突っ込んでくるので半歩動いて避けた。特に意味もなく木嶋が蹴った壁を見る。

「(わあお、蹴ったとこヒビ入ってるわ。キリンの脚力すげえな)」

木嶋は絶えず突進してきた。

「(これは、たぶん、考えなしだな)」

棟万千は木嶋の攻撃を最小限の動きで避けながら、いつかテレビでみたキリンの情報を思い出していた。

キリンの武器は長い首と脚力。もちろん尻尾を生やしたところで首や脚が伸びるわけではないが、脚力は爆発的に上がる。

「(確か頭に血液を送るために心臓がデカくて血圧が高いんだっけ? あとは本気で蹴ると人間の胴体くらいなら簡単に風穴が開く。尻尾の効果で通常なら息が上がる心拍でも息が上がることがない。つまりキリンの尻尾の能力は圧倒的持久力と脚力ってところか)」

そんなことを考えている間に木嶋は蹴りに移行している。

強力な脚力から繰り出される蹴りは空気を塊として押し出している。

「おー、キリンなら突進よりそっちの方が向いてると思うぞ」

試合開始から約二分。木嶋の顔には少し焦りが浮かんできている。

「何で、避け、」

観戦者からは早く仕留めろなどと野次が飛んでいる。

「(さーて、どーっすかなあ)」

棟万千の頭にはどんな倒し方をすれば文句を言われないか、それだけがあった。

持久戦は鍛えているから多少耐えられるがキリン相手には心許ない。

近接戦は不利、直接針が刺せない以上尻尾を伸ばすのも得策ではない。

考えながらカケラがいる月満専用ブースに視線をやると心配そうな顔をしてガラスに貼り付いている。ハンデのことは全く知らなかったようだ。

カケラは棟万千の視線に気がつくとガラスに「W」「?」を書いた。

意味を察した棟万千はニッと笑ってブイサインを返した。

「何よそ見してんだよ」

木嶋の攻撃がやっと棟万千の顔を掠めた。

「やっと当たったな」

「話を逸らすな」

「逸らせるほど余裕とは思わないのか?」

「余裕がないから、とも考えられるぞ?」

「じゃあ、逸らしたついでに」

顔の位置まで持ってきた針から霧を噴射した。

「わぷっ! 何すん……」

聞くよりも先に木嶋の身体が答えた。膝から崩れ、間もなく顔から倒れた。

「うわー、今のイッタソー」

「この、くそ」

木嶋は起き上がろうと力を込めている。もがくこと三分、制限時間になりゴングが鳴って棟万千の勝利が決まった。

アナウンスの声色から嫌と言うほど渋々なのが伝わる。


初日は木嶋との一戦で終わった。早々に寮に戻り次戦の作戦を立てる、でもなく日課の腕立て伏せ・腹筋・スクワットをしていた。

「それにしてもよくわかったね」

当然のようにカケラもいる。

「あー、あれか? 別にあれぐらい考えるまでもねえよ」

試合中にカケラが向けた「W」はwin、「?」は疑問形、つまりカケラは棟万千に「勝てる?」と訊いたのだ。

「つーか、俺が注射を封じられたくらいで負けると思ったのか?」

「だってえ」

「っつあー、今日の分終わりっと」

浴室に向かい、汗を流す。

「つーかツキさんよ、俺の強さを誰よりも信じているのは君でしょうが」

浴室から声を飛ばす。

「だったらそのまま疑わず信じとけ。わかったか?」

うん!とカケラの嬉しそうな声が聞こえた。

お読みいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします

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