校内で事件
朝のホームルーム中、突如サイレンが鳴り響いた。
『校内に尾暴者が現れました! 先生方は職員室に、生徒は教室に鍵をかけ外に出ないように! これは訓練ではありません! 繰り返します! これは訓練ではありません!』
どよめきが教室に広がる。担任は学級委員長に鍵を閉めるように言って出ていた。
「皆静かにしてよう!」
鍵をかけたあと学級委員長が声をかけた。
「カケラさん! 安心してください! 必ず俺が守りますから!」
「カケラさん! 俺のほうが守れます!」
「俺も! あなたを守れます!」
クラスの男子はチャンスとばかりに自分を売り込み始めた。しかし、カケラが頼ったのは……
「トウ君」
「大丈夫だ」
イスを寄せてきたので棟万千はカケラの頭をぽんぽんした。
「おい、俺らも守ってくれよ!」
「テメーらの尻尾は飾りか? 自分でどうにかしやがれ」
いつもいじめてくる奴らなど正直知ったこっちゃない。が、いつもの恩返しというわけではないがカケラだけは守ってやるつもりだ。
カケラの後ろでは酷くご立腹な顔が複数個、棟万千を睨んでいる。
「(これは後が怖いねえ)」
無意識にカケラの頭をヨシヨシしながら微塵も思ってないことを考えていた。
「(片付かねえなあ)」
暇なので読書をしていたらいつの間にか二十分が経過していた。担任は未だ戻ってこず、解決の放送もない。いつの間にかカケラは棟万千の膝の上で読書している。乗っているのは片膝ゆえに痛くなってきた。そして読みやすいように腰を捻っていたので腰もまあまあ痛くなってきた。
ガタンッと音がした方をみると、体育教師が扉に張り付いていた。
「うわ!」
扉とは対角の場所に自然と集まる。
「こわあ、なにあれ」
目が血走って、一向に取っ手に手をかけないところをみると、思考しているのかも怪しい。
「大丈夫か、ツキ」
「大丈夫、たぶん……」
膝の上ではカケラが小刻みに震えている。
「はあ……。ちょっとどいてくれるか?」
「え、私をおいてくの!?」
「なわけないから一旦どけ。あれをどうにかしないとだろ?」
カケラは渋々棟万千の膝の上からどいた。
「安心しろ。例え俺がやられても、お前には頼れる肉壁たちがいる」
「私が頼るのはたぶん今後もトウ君以外いないよ」
「それは嬉しい言葉だね」
再度ガタンッと音がして今度は扉が外れた。
「(尻尾は猫。猫は柔軟性が上がる、か)」
試しに尻尾を猫じゃらしの要領で動かしてみると、あっさり食いついた。
「(やっぱちゃんと思考が出来てないな、これ)」
尻尾を囮にするとまたもあっさりと後ろに回って絞め落しすことができた。
「……殺したのか?」
「窒息させただけだ。死んでない」
キーンコーンカーンコーン
「何で今チャイムが……?」
続けてスピーカーが男性の声を吐き出す。
『棟万千イグサ、今すぐ体育館に来い』
どうやら呼び出しのようだ。
「行くことないよトウ君」
「いつもならな。でも今の声、教師の誰でもなかった。どうせ犯人だ。行ってちょっと倒してくる」
「私も行く」
「確実に危ないぞ。俺もどこまで守れるか」
「足手まといにはならないよ」
「……わかった」
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