いつもの事件
「なあ、俺達ってただ休日の買い物に来たんだよな?」
「そうだよ?」
「じゃあ、この状況は何だよ?」
棟万千とカケラは学園近くの銀行に来ていた。
映画・買い物・買い食いをするには財布の中身が心元なかったからだ。
そしてその立ち寄った銀行で強盗事件が発生した。
銀行員、客は例外なく後ろ手に結束バンドで拘束されている。
「(ツキが月満の令嬢だとバレてないのがせめてもの……)」
「リーダー! こいつ、月満の令嬢ですよ!」
「(バレたわ)」
「月満っていやあこの世で一番金持ちじゃねえか! こんなちんけな銀行襲うより金になるな!」
ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべて近づいてくるので棟万千は間に入った。
「おいガキ、邪魔すんな」
「あ、いや、ごめんなさい。なんか身体が勝手に……」
いつもと違う弱気な態度で話した。
「月満、もいいですけど僕はどうですか?」
男が棟万千の胸ぐらを持って立たせる。
「お前はこいつより価値があるのか?」
「僕、こう見えて棟万千家の長男なんです。棟万千家は医療機器メーカーでそれだけは月満に勝っています」
「……あれ? でも確か長男は養子で死んだって噂が、あったよう、な?」
それを聞いた棟万千は口角を上げた。
「なぁんだ、知ってたのか。騙されてくれたら面倒がなかったのに」
棟万千はふうっと息を吹きかけた。
「……うぐ!」
男は棟万千を放し、目を抑えた。
「何したの?」
「催涙だ。尻尾から出せるんなら口からも出せるんじゃねえかなと思ってよ」
「思いついてもやらないでしょ、普通」
「思いつかないの間違いだろ(笑)」
男は充血した目から涙を流しながら睨んでくる。
「クソ! お前も人質にして棟万千からも金取ってやる!」
「ざんねーん。俺は確かに棟万千の人間だが養子でな。棟万千家から見て人質としての俺の価値はこの場にいる一般人の誰よりも低い。なんせ棟万千は直系を重んじる家だからな」
針で手の拘束を解くとズボンのポケットに手を入れた。
「なんだ、口ぶりからして、てっきり銃相手にやるもんだと思ったが。結局はただのガキの強がりだな」
男は未だ涙が止まらない顔で笑った。
「攻撃ならしてるぞ?」
それを聞いてふらあっと身体が傾く。立ち眩みだろうか。いや、体調に問題はなかったはずだ。
視界は催涙のせいで不良だが、なんというか、全身に力が入らない。重力に負けるのをなんとか耐えている感覚がする。
「意外と汎用性高いんだな、この尻尾って」
上を向いて息を吐く。
「このガキ……」
「ガキにはガキならの戦い方があるんだよ」
この強盗団はアホだったのか、少人数で一塊になっていた為、簡単に棟万千の毒で制圧が出来た。
数分もすると警察が到着し、犯人を連れて行った。
「はあ、だるぅ」
「映画、良い時間の無くなっちゃたね」
「じゃ、先にチケットだけ買うか」
「え?」
「何だよ? 別に二時間程度なら飯と買い物でつぶれるだろ?」
「うん!」
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