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侵入者との日常

一人を複数人が隠すように囲んでいる。隠されている一人も含め、全員紺色のブレザーと灰色のチェックのパンツという同じ装いをしていることから学生だということがわかる。

「がふっ……がはっ……」

いつの時代もいじめというものは無くならないもので、まさに一人はいじめられている。きっかけはなんだったか、きっと何かが気に食わなかったのだろう。

「無様なもんだな、月満財閥に次ぐ棟万千財閥の御子息だっつうのに」

複数人の中の一人がいじめている相手――棟万千イグサの髪を持って顔を上げさせる。

棟万千は一切抵抗せず、ただ短く「ほっとけ……」と漏らした。

「ケンジさん、そろそろ帰りましょうよ」

「おう、腹も減ったしな」

ケンジと呼ばれた学生は棟万千を叩きつけるようにして放した。

棟万千の頬をズサッと砂交じりの地面が削る音がした。

「じゃあな、棟万千クン。また明日」

ケンジは棟万千の頭を踏みつけて取り巻きと笑いながら去った。

声が遠くなって全く聞こえなくなった頃、棟万千はのそりと起き上がった。

壁にもたれて天を仰ぐときれいな赤色をしていた。

「……帰るか」

うーんと伸びをすると当然だが、さっき殴られ蹴られしたところがズキズキと痛んだ。

「今日もこっぴどくやられたなあ」

再度伸びをしながら棟万千は帰路についた。



「ねっみ……」

あくびをしながら棟万千はかなり立派なホテルの前についた。

棟万千はこのホテル……の裏にある質素な建物に入った。

外見の質素さとは裏腹に中はかなり豪華だ。

「おかえりなさいませ棟万千様」

入り口にいた同じくらいの年齢の女性が流れ作業のように声をかけてきた。

仮にもコンセルジュだろと内心呆れながら棟万千は会釈をする。

「お部屋でお客様がお待ちです」

一瞬首を傾げかけたがすぐに思い当たる人物がいた。

「わかりました。ありがとうございます」

お礼を言ってエレベーターに乗り込む。

ここにはもう通って一年以上になる。さすがに慣れたものである。

学生証をリーダーにかざしてロックを解除する。

中は例えるなら一般的なツインの部屋にシングルベッドが一つというなかなか広い造りになっている。

「あ、おかえりー」

そのベッドの上にはクラスメイトの女子が寝転がってマンガを読んでいる。

「毎日毎日何の用だよ」

腰に手を当てて呆れ顔で言う。

「宿題終わって暇なんだもん。だから遊びに来た」

にこっと笑う彼女は月満カケラ。棟万千はツキと呼んでいる。

「暇ってお前なあ、俺の都合は関係なしかよ」

部屋着とハンガーを持って浴室に向かう。さすがに異性の前で下着姿になるわけにもいかないからだ。

「つーかいくら鍵持ってるからって勝手に入ってくるなよ」

「えー、なんのために権力持ってると思ってるのー」

「お前のじゃねえだろうが」

制服をかけたハンガーをクローゼットにしまう。

「そう言ってくれるのはトウ君だけだよ」

カケラはどこか嬉しそうに言った。

「ったく。速攻で課題終わらせるからちょっと待ってろ」

棟万千はリュックからテキストと筆記用具を出して課題に取り掛かった。


三十分後

「……おわったー」

課題が終わり、達成感と共に息を吐いた。

カケラは別のマンガに移っていた。

「自分で言うのもなんだが男臭くないのか?」

「臭かったら横にならないしそもそも部屋に入らないって」

それもそうかと備え付きの小型冷蔵庫から水のペットボトルを取り出した。中身を飲みながらカケラを見ながら考える。

月満カケラーーー棟万千が通っている月満学園学長の孫娘で世界有数の財閥、月満財閥の御令嬢。そして、月満学園は『お金が無くても最高の教育を』がスローガンで成績優秀者が最も優遇される。

そんなわけでカケラと仲良くしたい人間は学園中にいる。

しかし、本心から仲良くしたい奴は片手でも多いくらいだろう。

ちなみに棟万千は大人数でもなければ片手の中の一人でもない。一方的に付きまとわれている、というのが正しい。

まあ、そう思っているのは棟万千とカケラ、多くてもカケラの家族くらいで他は逆で棟万千がカケラに付きまとっていると思っている。

正直成績が良いだけのバカばかりだ。

「そういえば今回の定期試験も特特キープ?」

「キープしないと教師共がうるせえからなあ」

月満学園は学年順位百位以上で学園内で使う費用が割引になる。

支払いは定期試験が終わり、長期休暇に入ったタイミングだ。

敷地内の売店・食堂は当然、自販機でさえ現金不可だ。全て学生証で払うので金を使っている感覚がなく、中学一年の前期が終わり、帰省した時親に怒られたというのが恒例なのだという。

二人が言っている『特特』というのは『特級特待生』の略称で各学年の一位~十位の生徒のことを指す。

特特になると売店・食堂はもとい、学費・寮費でさえ全額学園側が負担してくれる。

もちろん、棟万千は中一から特特をキープしている。そうでもしないと学費が払えない、かつすぐにでも退学させられそうだからだ。


本来棟万千は苦労して特特をキープしなくても学費は払える。

棟万千は先程ケンジが言っていたように棟万千財閥の人間だ。

棟万千財閥は医療系機器のシェアは月満を追い抜いている。医療系機器は月満も出しているが、棟万千のほうが安価だとかなんとかで、なかなか抜けないらしい。

そこの長男であるイグサは愛情をもって育てられた。小五まで、は。

お読みいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします

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