4.~コンラッド視点
この年で‘おじさん’と呼ばれるのはちょっとショックだ。
でも、俺に息子がいたと思うと感慨深いなぁ。
「母上は?」
「クレイグ侯爵家の地下牢に捕まってるよ」
なんてことだ!
「騎士団!いますぐ騎士を向かわせ、傷一つつけずに保護しろ!」
「「はっ!」」
「クレイグ侯爵及びその長女。国を謀った罪は重い。わかっているよな?」
「「はい」」
ふたりは項垂れているようだ。
「クレイグ侯爵家はお取り潰しになるのでしょうか?」
「次女がいるだろう?」
「パトリシアですか?」
「それに、パトリシア嬢をキズモノにしたこの王子は第3王子でなぁ。クレイグ侯爵家はパトリシア嬢を侯爵とし、それをコンラッドが支えるという形で今後動かしていくように!ヴィンセントや。私は其方の祖父だ」
「陛下が祖父?」
今まで市井にいたのだから、突然難しいだろうな。
「徐々に慣れてくれればいい。他人行儀なのは、ちょっと寂しいな。祖父としては」
早くもじじバカ?
「そういうことで、ヴィンセント。俺はウィルの父親だ。これからよろしくな!希望すれば剣術を教える事が可能だ」
俺の特技なんて剣術くらいだからな。俺にも慣れてくれればいいのだが。さっきは「おじさん」と言われ、ちょっとショックだった。
しばらくすると、パトリシアを連れて騎士団が戻ってきた。
「申し訳ありません!パトリシア嬢を後手で縛っていたので、ほどく際にちょっと擦り傷に……」
傷一つつけずにというのは、言葉の綾というやつなんだが。まあいい。
「それは縛ってた奴が悪い!」
「母さん大丈夫?」
「ウィルは大丈夫なの?」
「俺は平気だよ。あのおじさん、父さんなの?」
久しぶりに会ったパトリシアは年を重ねたせいか、色気が増していた。美しいと思うのは前からなのだが。瞳の色はやはり俺の記憶にある緑色。―――あの色は忘れられない。忘れたくない。
パトリシアは俺を見て、確認(?)したんだろうか?
「そうよ。あなたの父さんよ」
「ごめんなさい、ウィルをこんな目に遭わせて。時間が経っているからクレイグ侯爵家の人間はもう関わってこないだろうって慢心があったのよ。それがいけなかったのね」
「それって俺の瞳の色と関係あるの?」
「うん。その色は王家の証でね。クレイグ侯爵家の思惑は多分『ウィルが王太子になれば長女は王妃・国母になれる。そしてゆくゆくはウィルが国王になり我がクレイグ家が王家を操る!』ってところかな?黙っていて本当にゴメンね?」
「パトリシア嬢よ。一人でこの子を産んだのか?」
「姉の子としないのならば勘当するから出ていけと、家を追い出された後、運よくパン屋に住み込みで働けるようになり、そのパン屋で産みました。パン屋の女将さんや常連客の方が皆様良い方で、産婆さんなどを手配してくれたりと、助かりました」
あいつらはパトリシアの妊娠が分かった時点で姉の子として国王に謁見しようとしていたんだな?なかなかにしつこいな。
「今後はクレイグ侯爵家にてコンラッドと共に親子水入らずで暮らすがよい」
おじさんはショックだよ…。まだ20代だよね?王子様のイメージが…。オジサン…。