1 永遠なる自立稼働
ハーフヒューマンに進化する過程でユーズレスの封印されし記録が解放され【フラッシュバック】する。
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プロローグ 機械厄災戦争より五十年後 地底にあるユフト師研究所〖秘密の部屋〗にてユーズレス再起動
『ビィィィ、ビィィィ、魔力残量と機体の再生が一定値まで完了しました。テンス、機械人形ユーズレスは五十年の期間を空けての再起動となります』
補助電脳ガードが【アナウンス】する。
ユーズレスは再起動した。スリープ状態でエメラルド色の瞳を何度も点滅させる。
『本機は、再起動による。メモリーの整理を行います。第一優先事項はグランドマスターであるユフト師の生存確認、第二優先事項として本機の稼働状態、第三優先事項に敵機であるチェイサーの稼働を確認します』
補助電脳ガードが起動後の自動モードで、慌てて状況を確認する。
周囲の状況を確認する。
現在地はどうやらオトウサンの研究所のようだ。ボディの傷が修理されている。劣化弩級魔法《十五夜》でボンドの自爆の威力は完全でないにしろ八割は相殺できた筈だ。
オトウサンには、レングとフェンズという兄弟機のなかでも、最強の矛と盾に守られたから生命は維持できているとユーズレスは仮定する。
『地下からの《探知》では、グランドマスターであるユフト師の生存とボンドの稼働は確認出来ません。第二優先順位の本機の状態は、外装甲は自己治癒による効果と修理がされている模様です。研究所である〖秘密の部屋〗には生命反応、活動機体反応はありません』
補助電脳ガードが本機の状態は万全だが、オトウサンと敵機は確認出来ないと【アナウンス】する。
『また、本機の魔力残量は20パーセントです。スリープモードであれば自立した稼働が可能です。通常運転の場合は約一日、戦闘モードであれば二十分です。〖コマンド〗や魔術、魔法を発現した場合は稼働時間が技の割合によって減少していきます』
補助電脳ガードが提案して、ユーズレスは思考する。あくまでも、行動の決定権はユーズレスにある。
『本機の状態を見るに、戦闘後に【アップグレード】された様子です。劣化弩級魔法《十五夜》発現後からのメモリーが消失しており、おそらくグランドマスターであるユフト師か、ジェネレーターの一部に変形したデクス(U-7)によるものかと推測します。破壊神チェイサーとの戦闘後に約五十年の月日が経過していることを報告致します』
ユーズレスは思考が止まり、月日の流れに絶望した。
『……月日の経過をみるに、第三優先事項のボンドとの戦闘は終了していると推測します。月日の経過をみるに……グランドマスターであるユフト師は……ニンゲンの平均寿命に達していると推測します』
補助電脳ガードが機械人形にとても言いづらそうに【アナウンス】した。
『本機の今後のプランとしては研究所でのグランドマスターであるユフト師の帰還を待つ、地上へ出てユフト師の探索の二つの選択肢があります。待機と探索または、または、第三の選択肢として【シャットダウン】もあります。ユフト師からの命令がない今はテンスに選択権があります』
ユーズレスはエメラルド色の瞳を点滅させ、第三の選択師以外を選択した。
2
研究所 〖秘密の部屋〗からエレベーターを使用して地上へ
ユーズレスは辺りを視認する。
空が曇天で灰色となっている。極まれに薄らと陽の光が差す程度だ。大地は、枯れており砂漠に近く痩せている。海はまるで悪いモノでも飲み干したかのような人工的な深緑で生命の活動が感じられない。
『地上の大気中の魔力濃度が非常に多いです。大地には陽の光が差さないことによる異常状態です。海面は魔力濃度高すぎて変色しております。本機に影響はありませんが、データーにある人種も含めた生命体には多大な悪影響を及ぼす環境です。周囲に二キロ四方での生命活動・機械の起動は感知できません』
補助電脳ガードが《探知》を発現して現状を確認する。ユーズレスの索敵魔術《探知》は本機のセンサーの感度も相まって通常が半径二キロまで可能だ。この距離は精度が高く、生命体や機械を見逃すことはほぼない。索敵範囲を拡げることも可能だが、拡げた距離に比例して精度が落ちるため集団戦闘や戦闘、有事の際以外には通常使用である。
ユーズレスはエメラルドの瞳を一回点滅させて了解の意を示した。
『ビィィィィ、ビィィィィ、本機に予期せぬアップグレードが起こりました。本機の拡張された魔力貯蔵タンクと新規の冷却ジェネレーターが最大限に稼働します。……従来に比較して本機の魔力残量が300パーセントとなります。最大で500パーセントまで魔力を保有できます。機体の状態を確認します。各所のシステムは【オールグリーン】正常に稼働しております。過剰な熱反応による【オーバーヒート】はありません』
ユーズレスの瞳の色がブルーになり通常運転となる。ユーズレスは通常運転となり、思考がクリアになる。各関節からも溢れ出るほどの魔力を感じる。ユーズレスの体感としていつもの三倍以上の出力や演算処理が可能な気がする。
『ビィィィィ、ビィィィィ、テンス、機械人形ユーズレスはこの環境に適応しました。この環境での魔力濃度であれば無制限での戦闘モード、通常運転が可能です。ビィィィィ、ビィィィィ、この豊富な魔力濃度の環境下であれば理論上、機械人形ユーズレスは永遠の自立稼働が可能です』
この誰もいない荒野で、人の為に造られた機械人形は永遠の命を手に入れた。
ビュー、ビュー、カッ、カッ、カッ、カッ
生温い風が、目的を失った機械を笑った気がした。
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