キカイノココロ
短めです。
ハイケンとユーズレスのパートです。
あと二話くらいかなと
1
ガゴン
ハイケンがシーランドに真っ二つにされ、シャットダウンしたユーズレスまで飛ばされる。ハイケンが瞳の色がないユーズレスと目が合う。
『すべての作戦の失敗の報告を終了致します。主を殺したポンコツは、スクラップにすらなれませんでした。主よ、ニイサン……』
ハイケンがボールマン(首)とユーズレスに、本作戦の失敗を報告する。
ユーズレスとボールマンは何も答えれない。
『《演算》を行います……ここからの逆転の芽はないことの報告を終了致します』
ハイケンが完全敗北を宣言する。
『これが私の……超早熟型機械人形の限界のようです。ニイサン、超大器晩成型のニイサンならどうでしょうか』
ハイケンがユーズレスに問う。ユーズレスの瞳の色は光らない。
『《演算》を開始します。ビィィィィ、ビィィィィ、エラー、エラー、魔道機械人形ユーズレスについては予測が不可能です。やはり、ニイサンの可能性については私の物差しでは測れないことの報告を終了致します』
ハイケンがユーズレスのボディにある開閉ボタンのコードを入力する。ボディの一部が開き、ユーズレスのブラックボックスである魔光炉が見える。
『本当は、聞こえていますよね。ニイサン……言い訳は致しません。主を斬首したのは私です』
ハイケンが自分の胸部に手を当てる。
『言い訳は致しません』
ハイケンが胸部にあるブラックボックス(魔光炉)を引き抜く。動力である魔光炉を失ったハイケンは動かないブリキの人形となった。
2
ギィ、ギィ、ギィ
歯車がゆっくりと回った。
神々は耳を疑った。心の臓を失った機械が、無表情に動いた。
ギィ、ギィ、ギィ、ギィ、ギィ、ギィ
歯車が絡み合い流れを作る。その音は鳴らないオルゴールを回すかのようなぎこちのない音色だ。
ハイケンの右手がゆっくりと動く。
元々表情のないハイケンは、無表情だ。動力を失った機械人形が自身の右手にあるブラックボックスをユーズレスに近付ける。
バキバキ、ベキ、ベキ
ハイケンのボディから歯車が欠け落ちる。
バチバチバチバチバチ
稼働部の関節からは火花が散る。
ハイケンであったものが崩れていく。
ユーズレスは、シャットダウンしながら色のない瞳で弟が壊れるさまにただ眺める。
当たり前だ稼働していないのだから、しかし動力を失ったハイケンは動く。
自身の心の臓であるブラックボックスをユーズレスの予備収納部に向けて、近付ける。
キカイノココロを近付ける。
神々は無理だ無駄死にだと叫ぶ。
加護を授けた武神は黙ってみてろと怒鳴る。
女神達は手を握りしめる。
「恨んでくれて構いません」
ハイケンがユーズレスとボールマン(首)に言う。
ギィ、ギィ、ギィ、ギィ、ギィ、ギィ、
バキバキ、ベキ、ベキ、ベキ、ベキ
バチバチバチバチバチバチバチバチバチ
ハイケンが壊れていく。もはやスクラップどころではなく部品が剥がれバラバラに崩れ去る一歩手前だ。
だが、右手は止まらない。
「でも、皆のお姫さまを一人にはしないで下さい」
ハイケンが言う。
「主であった御方の皆の宝物を、未来を頼みます」
右手がユーズレスのボディに触れる。予備収納部まであと少しだ。無茶苦茶な稼働でボディが分解されようとしている。
「本当は、ニイサンみたいに……なりた……か……た……」
バキバキ、ベキ、ベキ、ベキ、ベキ、
バチバチバチバチバチバチバチバチバチ
ハイケンであったものが、首だけを残して崩れた。奇しくも、主であったボールマンのように首だけを残して、部品はウェンリーゼの砂に還った。
ユーズレスの予備収納部にハイケンの魔光炉が置かれた。
『ビィィィ、ビィィィ、ハイケンのブラックボックスを確認しました。ハイケンのキカイノココロを統合し理解を試みます。テンス、隠されし機械神ユーズレスよ。いつまでも甘えてないで、父親や兄らしい事の一つでもしなさい』
補助電脳ガードがユーズレスを起こしにいく。
神々が大神に何かしましたかと聞いた。
大神は何もしてないといった。
動力のないブリキが何故動くのですかと神々は問う。
ココロを持った機械人形が起こしたただの奇跡だと、大神は何を当たり前のことを聞くと呆れた。
死神は何故だか、鎌を振り下ろせなかった。
ジャラジャラジャラジャラ
死神を縛る鎖が少し弛んだ気がした。
女神達の雫がココロを持って痛みを分かち合った機械人形を濡らした。
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