面白いもの
★が一つつきました。
ありがとうございます。
励みになります。
1
ハイケンの【ブラックボックス】がこれ以上ないほどに光輝く。
神々もその眩しい光に目を閉じる。
「ガララララララ」
シーランドは叫び。
アーモンドは、ハイケンの勇姿をみること叶わず砂穴で意識が薄れゆくなかでも絶望する。
リーセルスは、気絶したまま道連れコースだ。
『ビィィィ、ビィィィ、エラー、エラー【自爆シークエンス】は発動出来ません。……なっ! 』
ハイケンと神々は状況が飲み込めない。
『ビィィィ、機械人形ハイケンは先ほど神々に生命体と祝福を受けました。よって【自爆シークエンス】は、ユフト師の四原則である機械は人を傷付けてはならないに抵触します。自爆は解除されました』
騎士ハイケンの一世一代である賭けは、やはりババ(ジョーカー)であった。
ハイケンの願いは神々に届かない。
死神は鎌を下ろし損ねた。
リーセルスは助かった。
主人殺しの機械人形は、ボールマンの命と自爆未遂という対価をもとに皮肉にも機械人形の一つの到達点である生命体となった。
しかしそれは、ハイケンが望んだ結果ではなかった。
「ガララララララララ」
シーランドは、茶番は終わったかと頭部を犬が濡れた身体を水を切るかのように振り回し、ハイケンを振りほどく。
特攻に失敗し思考が【オーバーヒート】寸前のハイケンは反応が遅れ、空中でシーランドに咥えられる。
シーランドは牙こそ折れているものの、その強靭な顎の力でハイケンを胴体から真っ二つ噛み砕く。シーランドはそのまま、ハイケンの上下となったボディを味わうが顔をしかめ、不味いと吐き捨てた。
潮の流れは元に戻った。
手札はなくなった。手札がないと【ゲーム】はできない。
ガゴン
ハイケンの真っ二つにされた上半身が、カツンの岩の近くで【シャットダウン】したユーズレスにぶつかった。
ハイケンとシャットダウンしたユーズレスの目が合った。
2
ウェンリーゼ海岸 戦闘地点より五百メートル離れた
「おや、おや、こんなところにいたのかい。随分探したもんだよ。よっぽど、坊のことが心配だったようだね」
三十歳半ば~四十歳前半の外見をした木人が、子犬になったホクトを撫でる。
「キャン、キャン」
ホクトが悪気もなく幼い声で鳴く。
「相当力を使ったみたいだね。身体が子犬になっちまってるね」
「キャン、キャン」
ホクトが木人に何かを訴えている。
「そうかい、そうかい。あの坊やは逝けたのかい。親に抱かれて、満足そうじゃないかい」
「キャン、キャン、キャン」
「そういいでないよ。偽誓薬を使ったのも、死に方を自分で選んだんだ。すべては、あの坊やが自分で決めたことさね。例え、外道鬼畜に成り果てようが、最後に息子に介錯してもらえたなんて幸せなことだよ。まあ、あの二人の絆が強すぎたせいで海蛇は生き残っちまったがね」
「キャン、キャン」
ホクトがまた力を使おうとしている。
「お止め、それ以上《干渉》を使っちゃいけないよ。次は子犬どころが、あんたの存在が無くなっちまうさね」
「キャン、キャン、キャン」
ホクトがだったら代わりに助けてあげてと鳴く。
「助けてやりたいけど、世捨て人は基本的に戦いはできないのさ。ある制約で縛られてるからね。遊んでやることは出来るけど、あれだけ強力な加護が付いちまった海蛇相手じゃ遊びじゃ済まないからねえ」
木人が崖の上から高みの見物を決め込み、手で輪っかを作って遠くを覗くようにして海蛇を見る。さらに、ユーズレスと上半身となったスクラップ寸前のハイケンに視線を移す。
「おや、おや、これは面白いことが起こりそうだね。また若返っちまうよ」
「キャン、キャン」
ホクトが講釈を垂れてないで何とか助けてあげてと鳴く。
「分かったよ。確かに、見物料払わないってのもよろしくないね」
木人は懐から三枚の【写真】を取り出す。
「ちょうどいい【リリーフ】がいたね。繋ぐことが大好きな王様がね」
木人が意地の悪い顔をしながら指を鳴らし魔法を発現する。木人が非常に悪い顔をしている。木人が心躍り若返る。
「おいで、あんたの大好きな兄弟の【ピンチ】だよ」
木人が意地悪そうに出した手札が、吉であるか凶であるかは神々も知るところではない。
「ウォン、ウォン」
子犬になったホクトが嬉しそうに鳴いた。
3
「ガラララララララララララララララ」
シーランドが叫ぶ。これで邪魔者はいなくなった。シーランドは海王神祭典の勝利を、母なる海と水の女神に捧げる。母に感謝を、愛を叫ぶ。
その叫びは聴くものが聴けば気高き祝祭の鐘に、またその轟叫ぶ唸りは声は大いなる海の怒りにも聞える。
海と水の女神は砂の防空壕から出てきて「可愛い坊や、もう海へお帰りなさい」という。しかし、手負いのシーランドには母達は見えない、聞こえない。この高まった血の滾りを抑えること叶わない。狂気を孕んだ海の竜王は、海に戻らずに母なる祝福を纏い大地へと歩を進めた。
母なる海と水の女神は混乱し、神々もこの事態を重く受け止める。海王神シーランドは本来、海の管理者であって陸地を制定する権限は持たない。
大神と隻腕の武神は死神のローブで隠れている身体に巻かれた鎖を見る。二神は顔を合わせて頷き「仕方がないか」と大神と武神が死神の鎖を掴む。死神は何かを決意して頷き、二神が鎖を引きちぎろうとした刹那に…後方のカツンの岩付近から大きな光の柱が発現する。
大神はその神力を感じ、鎖の手を離し世界中の神々にこういった。
「面白いものがみられるぞ」
死神はやれやれといいながら鎖を見て一安心した。
今日も読んで頂きありがとうございます。
作者の励みになりますので、いいね、ブックマーク、評価★★★★★頂けたら作者頑張れます。




