閑話 キカイノココロ 漆
あと十話程度で二部完結予定です。
1
むかし、むかし、あるところにとてもえらい王様がいました。
王様は世界中の珍しい食べ物や、月まで行ける乗り物など、なんでも持っていました。
王様は国民を城へ招待し、得意げに「この世で私の手に入らないものはないんだぞ」といいました。
それを聞いていたイタチが「確かにこの国の王様はたくさん宝物を持っているけど、世界に一つしかない『死なない薬』は持ってるのかな? 持っていれば死なずにずーっと宝物に囲まれて楽しく生きられるのにね」といいました。
それを聞いた王様はその薬を飲めば永遠に宝物をみんなに自慢できると思い、家来達に『死なない薬』を探してくるように命令しました。
でも、家来達が世界中を探しても『死なない薬』はみつかりませんでした。
王様は家来たちを怒っていると占い師のカエルが王様にいいました。
「ゲッ、ゲッ。王様、王様。なければ作れば良いのです。私が作ってみましょう」
王様は喜んでカエルに『死なない薬』を作るように命じました。
カエルは言います「王様、薬を作るのにお金が足りません」
王様はお金のたくさん渡しました。
カエルはいいます「王様、おなかがすいて薬が作れません」
王様は食べ物をたくさんあげました。
カエルはいいます「王様、家来たちが私のことを嫌っていて薬が作れません」
王様は家来たちを城から追い出しました。
カエルは王様に会うたびに欲しいものを言います。
気が付くとたくさんあったお金や宝物、大切な家来たちもいなくなり城はからっぽになってしまいました。
カエルはなにも言わなくなりました。
ある日、王様がカエルに会いに行くとカエルはいなくなり、カエルの部屋には綺麗なだけの珠や木を混ぜて作った人形などのガラクタしか残っていませんでした。
王様は怒って「カエルを探せ! 」と大声で叫びましたが空っぽの城にはそれに答えてくれるものはいません。
王様はいつまでもいつまでも「誰かいないのか」と叫び続けました。
その様子をカエルが城の窓から隠れてみていると、後ろからイタチが「今回もうまくやれたね」とニヤニヤしながら話しかけてきました。
カエルは「そうだね、うまくいったね」とゲコゲコと笑いました。
二人は『死なない薬』なんてどこにもないのにね」と笑いながら森の中に消えていき、あとには王様の泣き声だけが残りました。
〖欲張りな王様〗 作 ヴァリラート
2
『………』
ユーズレスはエメラルド色の瞳を何度も点滅させた。
「いまや、絶版となった絵本の昔話さ。この昔話で一番悪いのは誰だと思う」
木人がユーズレスに問う。
『………』
ユーズレスは木人にイタチとカエルだと答えた。
「そうさね。そう考えている意見が多いねえ。しかし、私はこう思ってるよ。誰も悪くないってね」
『………』
ユーズレスは混乱した。問題と答えが一致しない。
「ただただ皆が、自分の欲に忠実だっただけさ。皆本当にニンゲン臭いただの普通のどこにでもいる悪人であり善人だね。自分の気持ちに正直なね。自分が持っていないモノを欲しがった欲、死にたくなかった欲、怒鳴られて逃げたしたい欲、他人を陥れたい欲、最近だとザマァなんていうのかいね。酷く利己的で誰もが持ってるものさ何も珍しくない」
ポツリ、ポツリ、ポツリ
外は雨が降ってきたようだ。
「難しかったかねえ。そうさね。ここにおとぎ話の死なない薬があったとしようね」
木人は懐から先ほどの小瓶を取り出して中の青い液体をチャプチャプと振る。
「お前さんはこの死なない薬を何に使う」
木人がユーズレスを試しているようだ。
ユーズレスはエメラルド色の瞳を何度も点滅させた。
坊とずっと一緒にいたいと……
「あんたは極悪人だね」
木人がユーズレスを見ながらチャプチャプと小瓶を降った。
3
『………』
ユーズレスは赤色の瞳を何回も点滅させた怒りの色が伺える。
「今の坊は、自分で選ぶなんてことは出来ない。親であるあんたの選択に従うしかないのさ。そこに、坊の感情はない。ユーズや、あんたは機械だ。もう何千年という時を稼働したのだろう。坊にずっと生きていて欲しい。ずっと死なないで一緒にいて欲しいは、あんたの欲であって、そこに坊の意志はない。それはあんたのエゴであり、傲慢だよ。相手を誘惑して選ばせたイタチや、カエルのほうがまだマシさね」
木人はユーズレスの赤色の瞳を覗き込む。
ユーズレスは《演算》をした。ユーズレスには、理解で来ていることと出来ないことがある。
「すまないね。意地悪をしているわけじゃないさね。長生きをすることを良いと思うのは悪いことじゃないさ。ただし、物事には節度ってものがあるのさ。機械のあんたは数千年を耐えられたかもしれない。だけどね、人種は永遠に近い時間を生きられる精神がないのさ、身体は生きていてもココロが死んでる。そんなもんは、スクラップと変わらないね」
『………』
ユーズレスは、坊が起きないようにそっとその手に触れる。この温かく柔らかい感触や、天使のような寝顔は永遠には続かないものなのかと……
「あんたは坊よりも長く稼働するよ。それは間違いないね。ユフトの最後の子、機械人形ユーズレスよ。よっくど考えな! あんたはそういう悲しみを味わいたいかい。坊を手放す覚悟があるかい。今ならまだ間に合うよ、パーパをやめることがね。なあに、一人前に育ててやるさね。機械でない私がね」
その時ユーズレスには、バグが起こった。木人がおとぎ話の死神や魔女といったものに見えた。
「ただ、私のことを話さないのもフェアじゃないね。さっきのおとぎ話には、続きがあってね」
木人が再び語り始める。
「ウォン」
ホクトが木人に止めろと言っている気がする。
「カエルの実験のガラクタがあったろう。あれは私なのさね」
木人がイタズラでもするようにユーズレスにウインクした。
やはりここは、竜よりよほど恐ろしい巣穴のようだった。
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