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閑話 キカイノココロ 肆

「ホウホウ」

何処からともなくフクロウやって来て目の前にある大樹に止まる。

不苦労フクロウ、留守番ご苦労さん。《創造》、《再生》」

木人が梟(不苦労)に話しかけながら、大樹に魔術を発現する。大樹がその形状の細かな部分を変化させる。窓と階段に扉ができる。

『エラー、エラー、木人の魔術は判別出来ません』

ユーズレスは記録をし、【メモリー】を照合させるがどの魔術とも判別がつかない。

「私の技は、ちょいと勝手が違うんじゃよ。古代魔法なんて呼ぶ輩もおるがのう。さぁ、入った、入った。まずはそこの坊やを休ませてあげないとねえ」

木人が最高難易度クラスの迷宮にも勝る家の扉を開けて…

「ウォン」

ホクトも遠慮するなと催促する。

『………』

ユーズレスは覚悟を決めて巣穴(家)に飛び込む。

「ホウホウ」

梟である不苦労がユーズレスの苦労を知らずに歓迎した。


2

「三階の部屋を使うといい。今は空き部屋でベッドが置いてあるし風通しもいい」

木人がフラスコの様なもので何かを作りながらいう。

『………』

ユーズレスはエメラルドの瞳を五回点滅させてありがとうの意を示した。

「ふっ…どういたしまして。ホクトお客さんを案内しておやり」

「ウォン」

木人はまるでユーズレスの意が分かるかのように返答する。ホクトが尻尾を振りながら部屋まで案内してくれる。


三階の部屋はおよそ八畳程度のベッドと椅子が置いてあり、窓のある部屋だ。余分なものは何も置いてない、木の香りがする優しい気持ちにさせる部屋だ。

ユーズレスが〖感覚センサー〗で様々な情報を《探知》して第二級警戒システムを作動させる。【トラップ】や坊の害となる要因はこの部屋からは感じられない。

「ウォン、ウォン」

ホクトが突っ立ってないで早く坊をベッドに寝かせてやれと促す。

『………』

ユーズレスはエメラルドの瞳を一回点滅させて了解の意を示した。

ユーズレスが坊をベットに寝かせる。ヒエピのお陰であろうか先程よりも幾分顔の表情が良い。

「少しは落ち着いたかい。その服は汗をかいているようだから、《洗浄》した布とおしめにかえておやり。水分を取らせてな。もう少ししたら温かい〖薬膳〗スープができるからねぇ。坊やでも飲みやすい味付けにするから待っといてくれ」

「ホウホウ」

不苦労から木人の声がして、器用に布とおしめを持ってくる。

ここに来て不思議ことばかりだが、一つ分かったことがある。

この巣穴の住人達は非常に親切だ。

「ウォン」

ホクトが私を忘れるなと鳴いた。


3

「だいぶ熱も下がったようだねえ」

坊が穏な顔でスヤスヤと眠っている。まだ油断は出来ないが【バイタル】が通常運転時に近くなってきた。

「目が覚めたらこの吸い飲みの【液体】を飲ませるといい。いいかい、ゆっくり飲ませるんだよ。それと代わりのヒエピも置いておくから、なにかあったら不苦労を通して呼んどくれ」

『………』

ユーズレスはエメラルドの瞳を一回点滅した後に思考する。

ユーズレスは坊の状態が良くなり安堵するも、自身を責めた。坊と誰よりも長く一緒にいる自分より、会ったばかりの木人のほうが坊の体調を把握して対処できたことに無力感を感じる。

外敵や驚異に対する対処法や殲滅、自身の効率的なエネルギー運用方法は知っているがそんなものはなんの役にも立たなかった。

やはり本機は役立たずだ……


「そう難しく考えなくても良いと思うがのう。知らなければ学べば良い」

部屋を出ようとした木人がユーズレスにいう。

『………』

ユーズレスと補助電脳ガードは、木人がおそらく本機の思考を理解していると確信する。

「少なくとも私の友人達はそうしとったよ。ずいぶん古い話になるがね」

木人が懐かしそうに機械を見ながら語る。


「パーパ」

ベッドの中の坊が眠りながらユーズレス(パーパ)を探す。ユーズレスは慌てた様子で、坊を視認して手を出す。坊はいつものようにユーズレスのブリキの冷たい手を握って安心したように眠る。

ユーズレスは思考する。

坊はワガママで言うことを聞かず、騒ぐし、オネショをし、環境適正が【マイナスレベル】の非効率的な弱い生き物だ。だが何故だろう。この小さな手に触れただけで本機は全身を包み込まれるような温かさと数値では計測出来ない【無限のエネルギー】を感じる。

そして、この寝顔は【聖典】に記されていた天使なるものであろう。いくら記録してもしたりない位に【データ】に【バックアップ】してしまう。

怖い…坊を失うのが怖い…自身が壊れるよりも遥かに恐ろしい。出来るのであればこの坊を蝕んでいる風邪という【プロテクト】不可能なウイルスによる【ダメージ】も本機が身代わりになってあげたいと論理的ではない思考をする。


「良い夢を見ると良い、おまえさんものう」

木人とホクトが部屋を出ていく。


「ユフトの機械達も悩みながら一生懸命生きているようで、結構、結構。大いに学び、悩むがよい、あの子らに亜神ユフトの加護があらんことを…」

木人が二人に祝福を送る。


「ウォン」

愛犬ホクトも神々にお願いをした。


「ホウホウ」

森の番人(不苦労)が坊とユーズレスが安心して良い夢をみれるように、怖いものが来ないようにと夜の森に告げた。



ユーズレスは坊を見る。

「その気持ちは私がお前達に感じていることと一緒だよ。ユーズ」

【メモリー】の中のユフトオトウサンが優しく囁いた。


挿絵(By みてみん)




キカイノココロ 参・肆

原案

隠れ家 作画 ヴァリラート様


今日も読んで頂きありがとうございます。

作者の励みになりますので、いいね、ブックマーク、評価★★★★★頂けたら作者頑張れます(笑)

今日あと一話更新予定です。

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