老いては子に従え
今日の更新は終わりです。
外伝でのモブ達の活躍ちょっと紹介してます。
1
『ビィー、ビィー、ビィー』
空からマザー・インテグラが補助電脳ガードを介して警告を発する。
ユーズレスは瞳が紅蓮となり、シーランド殲滅以外の思考がない。暴走した機械神に保護者達の声は届かない。
キュィィィィィン
滅びのメロディーが終曲を迎えようとしている。
ユーズレスのバックパックに設置してある冷却ジェネレーターから高温スチームが排出される。熱を排出しようが、機械神の頭は冷えない。
ユーズレスが七六式タイタンの照準をシーランドに向けた瞬間に…
「おふざけが過ぎますよ《粘度》」
ランベルトがユーズレスの足元の砂の粘性を上げる。ユーズレスの姿勢機構がバグを起こして、前方に姿勢を崩す。ボールマンはすかさず、〖カツンの岩〗に供えてあった六級酒(馬のションベン)をユーズレスの口であろう場所に流し込む。まさに阿吽の呼吸だ。
『! ! ! 』
この【ダブルス】の攻撃を受けたユーズレスは馬のションベンを成分分析で自身に害がないか急いで《演算》をかける。
「どうだ、ユーズ。皆で作った馬のションベンは、まあまあだろう」
ボールマンがユーズに問いかける。
『………』
ユーズレスは記録を検索し、かつて自身が考案したお祝いの液体を思い出す。
キュィゥィィ
魔力の集束が四散していき両の腕に纏わりついた流体金属がその体積を減少させ元の流体に戻っていく。
次第にユーズレスの紅蓮の瞳がその赤を薄めていき、ブルーの瞳(通常運転)となった。
『………』
ユーズレスは空色の瞳を三回点滅させて、皆様に「ゴメン」と意思表示した。
2
『ビィー、ビィー、ビィー』
マザー・インテグラと交信したユーズレスは、補助電脳ガードを介して御叱りを受ける。数千の時を稼働する魔道機械人形ユーズレスといえど、母と子の立場はそう簡単には変わらない。
何もないところでひたすら頭を下げているユーズレスは、古来の神で〖営業の神〗を彷彿させる。
「ガード、お説教は終わったかい」
ボールマンが父に救いの手を差しのべる。坊は本当にできた子に育った。
サラサラサラ
ボールマンの左腕の表皮が少しずつ砂になっていく。
『………』
ユーズレスは、空を見上げブルーの瞳を何度も点滅して叡智なる母に助けを求める。
母からの回答は…「時には逆らえない」
時の女神はもう一度、《延命》がかけられないかと世界の神々に問うた。大神はその時の流れに肉体は耐えられないと、これ以上痛いことはしないであげようと、それ以上は我々のただの【エゴ】だと時の女神を諭した。
ハイケンがユーズレスに触れ、マザー・インテグラがみんなの頑張り(戦闘記録)を空の上より通信する。二人の情報をユーズレスは統合した。
「ガララ、ガララ、ガララ」
シーランドは海の上から《水球》を連発する。十分に待った! 我を一体何だと思っているのかと…
「《砂遊戯》、《粘度》」
ランベルトがリーセルスを介して魔術を発現する。
ユーズレスとボールマンの前に砂の壁ができ、《粘度》によりシーランドの《水球》の粘性を高める。
ベチャ、ベチャ、ベチャ
シーランドの水遊びは眼鏡のタッグ(ランベルトとリーセルス)により【レジスト】された。
「親子の語らいに水球を差すのは不粋ですよ。もうすぐ事切れますが、あと少し私達にお付き合い下さい」
「《コン・クリート》」
準備詠唱を行っていたリーセルスがぶっつけ本番での複合上級魔術を発現する。
シーランドが粘性の高い液体で覆われる。
「流石ですね。リーセルス大尉、私より術の適正が高そうです」
「魔力がほとんど持っていかれます。もって、十秒です。元帥閣下お早く」
リーセルスは慣れない魔術で余裕が無さそうだ。ランベルトの補助ありきであるが、初見の魔術を発現できた彼はやはり天才であろう。
二人がくれた、黄金にすら霞むであろう時間の中で、ユーズレスはダウンロードした。
シーランドと仲間達の祭典を…
海の王者から宝石(瞳)を奪った切り込み隊長クロの勇姿を…
どのような鋸よりも鋭い牙と竜の口に火傷を負わせた美しいシロの花火を…
海のグングニル(一角)に傷を付けたハンサムなジョーの男気を、片道乗車券を喜んで買った満足そうな二人を…
鰭酒の材料を採取して、武神にさえ礼をとらせたおやっさんの想いを…
海蛇のプライドをへし折ったウェンリーゼの海で一番の速さを誇った狼の顔をした漁師を…
神話の時代より、壊れることを知らなかった鱗を打ち壊した火食鳥の職人としての熱さを…
死してもなお、息子を守ろうと枷となった気高き狼の父親の魂を…
誰よりもギンギンに生きた、銀の稲妻を…
ユーズレスは辺りを見回す。
ディックは空の上で、アーモンドは気絶し、賢き竜の魔石は笑い、ランベルトは死にそうである。
ランベルトがユーズレスに「私より大事なことがあるでしょう」と問う。
ユーズレスは、本機の代わりにずっとボールマンを守ってくれたランベルトに頭を下げる。
そして、ユーズレスの一番の宝物は…
みんなまあまあに頑張ったでしょうと、アカンボウの頃から変わらない微笑みを見せた。
『………』
ユーズレスはボールマンに問う。何か本機に出来ることはないかと
ボールマンは失くなった右腕の代わりに、左腕を前に出して「一緒に意地悪な竜をやっつけよう」とユーズレスの左肘に【エルボータッチ】した。
『グランドマスターである。坊の心を理解しました。怖いものはもう何もありません。イジメっ子を退治しましょう』
補助電脳ガードがアナウンスした。
『只今、海王神祭典における、アルパイン様がおっしゃった勝率十二割になるであろう、全ての確定要素が揃ったことを報告致します』
ハイケンが、ここにいないアルパインの代わりに粋なこといった。
【老いては子に従え】といった古代語があるが、子が先に老いてしまったら… 答えは千差万別あるであろう。大神は、怖がらないようにそばにいてあげたいなぁと機械人形を見ながら頷いた。
今日も読んで頂きありがとうございます。
作者の励みになりますので、いいね、ブックマーク、評価★★★★★頂けたら作者頑張れます(笑)




