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エピローグ


閑話休題終わりです。

剣の宴より数週間後


「キーリ、主として命ずる東の彼の地にある〖始まりの迷宮〗を攻略してこい。それまで、私の前に姿を現すことは許さん」

「殿下、あそこの迷宮は未だに攻略したものがいない最難関の迷宮では……」

デニッシュは、キーリにウェンリーゼに行って帰って来るなといった。


「それと、キーリ。娘が出来たらエミリアと名付けろ」

「急に何ですか? 」

「今回の命令の見返りに、お前の娘を王族に迎えてやる。エミリアとは、建国王アートレイ様の奥方であった方の尊き名だ。格としてはこれ以上にない、古文書によればエミリア様も東の地の御出身と記録がある」

「中央の貴族達が黙っていないと思いますが、それに色々と話がブッ飛んでいます」

「安心しろ、その頃には私はアートレイを超えていよう」

「出来れば殿下のお側で、玉座への力になりとうございます」

キーリは、譲らないと強い視線をデニッシュに向ける。デニッシュはその瞳に好意を抱きなからも、拒否した。

「私は学園を卒業したら、学院には行かずに軍に入隊する。お前は、東部の海軍を掌握しろ。いずれ私が王となるときのために東のパイプが欲しい」

デニッシュは、キーリに好いた女と東の海で幸せに暮らせという。


「それは、本心でございますか」

キーリが視線を外さない。


「褒美の前借りだ。これをやろう」

デニッシュが絶剣満天をキーリに投げる。


「これは剣帝である殿下のものでは」

「私は二刀流ではない。それに、餞別ついでに今日からお前が剣帝を名乗れ」

「私は、殿下に忖度無しに負けましたが」

「あれは、私ではない。納得いかなければその剣は貸しといてやる。迷宮の踏破と海軍の掌握が済んだら娘を連れて返しに来い。それに安心しろ、私には別の二つ名を名乗る」

「また、無茶苦茶なご命令ですね。ちなみに二つ名は一体なんと」

「決まっていよう」

デニッシュは後ろを向き数歩進んだあとに、キーリに向かって振り返った。

「剣の帝のその先の剣の王、剣王だ」

デニッシュの笑顔が爆発した。


この人には敵わないなぁと、キーリはデニッシュ以上に、ニヤリと神々に爆発した笑顔を見せた。



2


その後キーリは五の月に東の地へと旅立った。女神の祝福を胸に抱いて……


皐月、五月を表すこの古代語は異国の地では〖フラワームーン〗と云われた。

キーリはそれから二人(双子)の子宝に恵まれた。


キーリの横にはいつも、五月の月のような花畑を照らす月の女神がいたそうだ。

それが誰だか……そんな野暮な話は答えなくても分かるであろうと、大神は物語に書き記した。


古代語で【華】という字がある。

その字には、外見だけでなく内面も美しいという意味もあるそうな。

デニッシュがキーリに聞いた「女神のことをどう思っている」に対して……

キーリがいった「華でございます」とは……

古代語に訳すと「好きでございます」とも訳される……


どうやら、デニッシュには初めからずっとキーリの気持ちがバレバレだったようだ


………………


数十年後ウェンリーゼ海岸


デニッシュは、まだ死者全員の名前が彫られていない、途中であろう石碑をなぞる。


ウェンリーゼ家当主代行、キーリライトニング、エミリア(妻)、ギーンライトニング(子)


デニッシュは石碑の前に膝をつく。

「キーリ、お前でも海竜には勝てなかったのか……」

デニッシュは、砂浜を拳で殴りながらいう。


「戦争は終わったよ……私はお前に本当は誰よりも側にいて欲しかった。死にそうなときや、挫けそうな時や、部下達に名ばかりの突撃で、死んでこいと言ったこともあった。自分が嫌になり、このまま楽になりたいと思ったのは一度や二度じゃぁない」

戦時中ですら、泣かなかったデニッシュの目に涙が溜まる。


「だが、目を瞑るといつもそこにはお前がいた。そして散歩でもするかのように歩きながらこういうんだ」


お先に行ってますね。ゆっくりどうぞ


「そしてお前がいつもの迷宮探索ように、帰ってくる。いつもの軽口を叩きながら」


「キーリ……フラワーは笑っているか」

デニッシュは泣いた。


護衛の近衛達がいようが関係無しに泣いた。

護衛達は影となる。彼らは知っている、例えこの広大な海であろうと陛下のお心を癒すことが出来ないことを……


ひとしきり泣いた後に石碑にもたれかかり、海を見た。波が押し寄せては返すその様を、死人のようにただ眺めていた。


きゃっきゃっきゃっ


金髪の少年と少女が砂浜で棒を振り回しながら遊んでいる。その後ろには、大柄なブリキの人形が付いてくる。


「陛下……」

近衛騎士団長がデニッシュに声をかける。

「お前達もすまなかったな。余のワガママに付き合わせてしまったようだ」

「滅相もございません」

近衛騎士団は臣下の礼をとる。

デニッシュは立ち上がり、ウェンリーゼの海をもう一度よく見回し石碑を撫でた。

「帰るとするか」

デニッシュが立ち去ろうとした瞬間に……


「元つ月」

ヒュン


海風がデニッシュの耳をくすぐる。


懐かしくも幼さの残る風が吹く。


「あれー、なんか違うんだよなぁ」

「ギーンは、ちょっと肩に力が入りすぎなのよ」

「だったらエミリアがやってみろよ」

「女の私に出来るわけないでしょう。後でまたユーズに【映像】を再生して貰いなさい」


『………………』

ブリキの人形がエメラルド色の瞳を一回点滅させた。


デニッシュが振り返った先には……かつての親友と想い人の面影を残した幼子達を目にした。


(あの二人は……間違いない)

(あの綺麗なブロンドの髪と、生意気そうな顔は……二人そのものではないか)


時の女神は、数十年前にデニッシュから貰った雫石の対価に【リプレイボタン】をポチっとした。そして、かつて幼子だったデニッシュに「今度は遠慮しないで、仲間に入れて貰いなさい」と背中を押すように囁いた。


デニッシュは泣きながら、まるで少年のように二人の双子に向かって砂浜を駆け出した。


〖元つ月〗古代語でこの月は、年と年を結ぶ仲睦まじい始まりの月と云われている。


剣は巡る。次の時代へ


そのお話はまたの機会に……



オマケ ()()のタコ 完




今日も読んで頂きありがとうございます。

試験的に連続投稿してみましたが、ストックないとキツいですね。

ちょっと、本編直したら再来週辺りから、第二部やる予定ですので良かったらまた遊びに来てください。

第二部の前に感想とか分からない話があればネタバレしない程度にストーリー構成編集しますので、どんなコメントでもアドバイスでも嬉しいです。

初心者の文面にいつも付き合って頂いてありがとうございます。

これからも頑張りますのでよろしかったらブックマーク、いいね、評価★★★★★して頂ければ作者頑張れます(笑)

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