水は血と同様に濃い 第一部完結
文字数が十万を突破しました。
明日から職場が新年度ですね。何年かに一回転勤のある私からすると、みんな本当にファイトです。
この作品が、明日からの少しでも活力になれば幸いです。
1
「アーモンド、止めなさい」
父は叫ぶ、かけがえない息子の名前を
「………」
息子は振り向きもしなければ、声も出さない。もう別れは済んだのだろう。
「ガララ、ガララ」
シーランドは、アーモンドに向かって《水球》を放つ。アーモンドにはもはや《水球》を避ける力はない。
バシュ
《水球》はアーモンドに着弾する前に蒸発した。〖パーシャルデントの鏡〗や〖水皮のマント〗の魔法耐性(大)の効果とも違うようだ。アーモンドの周りの空間が歪む、一体どれほどの代償を払って彼は魔力を練っているのだろうか。アーモンドがフラフラとシーランドに一歩近づく。
「ガララ、ガララ」
シーランドは、再び《水球》を放つ。
バシュ
しかし、その水の魔法はこの未完のパラディンには届かない。アーモンドはまた一歩進む。
「ガララ、ガララ、ガララ」
シーランドは、《水球》を続けて三発放つ。
バシュ、バシュ、バシュ
結果は先ほどと変わらない。
「ガルルルルルラァァァァァア」
シーランドは、痺れを切らし上級魔術《水月》を発現しようと背鰭を発光させ、魔力を折れた一角に集束するが上手く魔力を練ることが出来ない。
シーランドは、命の危険を感じるほどの致命傷ではない。しかし、海上でモブ達(ジョー、ベン、スイ、ヒョウ)により傷つけられ、むしり取られた背鰭や折られた一角は、ここに来て海の竜王の手札を確実に減らしていたのだ。
余談だか、アーモンドに対しての初手のブレスはシーランドが万全の状態であれば、パーシャルデントの鏡(胸当て)でも《反射》出来なかったであろう。シーランドの《水球》にしても威力が通常より弱い。これはシロの《花火》による口内の火傷によって、通常の威力が出せないことによるものだ。
モブ達は確かにシーランドに致命傷を与えることは出来なかった。しかし、モブ達(円卓の騎士達)は自分たちの役割を十二分に全うしたのだ。
「ガラララララァァ」
アーモンドは進む。シーランドはアーモンドのその練り上げられた魔力に戦慄を覚える。だが、この海の竜王は退かない。偉大なる海と水の女神の眷属である海の竜王が、たかが一人の人種ごときに退くわけにはいかないのだ。
「アーモンド、アーモンド頼む!行くなぁー」
ボールマンは叫ぶしかし、その叫びは届かない。ボールマンは目を閉じて願う。
ウェンリーゼを守護せし機械神、インテグラ・アナライズ・◯◯◯・アギール・ジスト・フェンズ・◯◯◯・ツール・ディックよ。我等が父、亜神ユフトよ。私のこの萎れた命などどうなってもいい、今ここに全ての罪を精算致します。貴方達、神を呪ったこともあります。汚い言葉を吐いたことも、人には決して言えない外道畜生と成り果てたこともあります。この罪は、黄泉の国にてこの身が焼かれようが、悪魔に魂を喰われようが構いません。どうか、どうか、この若人を私の息子をお救い下さい。神よ!
「オトサーン」
ボールマンは叫んだ。
かつてない程に心を叫んだ。そして、数十年振りに父の助けを呼んだ。
死神の鎌がボールマンに迫る。
「ワォーン」
何処かで犬が鳴く。
死神が鎌を振るった。死神は犬の鳴き声に驚き手元が狂う。その鎌はボールマンではなく、彼がずっと背負っていた重そうな荷物に振られた。
その刹那、ボールマンの瞳に一人の人影が映る。その影は影というよりは光だ。光がボールマンの頭を撫でながら囁く。
「皆、ずっと君のことを許したかったんだよ」
風が吹いた。ウェンリーゼの風、浜風だ。
トンッ
大きな手がボールマンの肩に触れる。ヒンヤリとしたような、温かい懐かしい感触だ。振り返らなくても誰(機械人形)の手だか分かる。ボールマンが生まれたときから、どんな時もその背中を支え続けてくれた一番安心できる手だ。
ボールマンは、すでに魔法の杖を二回目振った。古来より神々の【ボール遊び】は三回振って当たらなければ、失格らしい。
ボールマンの残りの一回は…物心がついた時から寝食を共にし…時には喧嘩をし…そして、仲直りをした魔道機械人形ユーズレスを使うようだ。
だか、ボールマンは数十年振りの機械人形を使うのに神々に捧げる舞い【準備運動】をしていない。
海と水の女神は、苦労して手に入れた〖救う権利〗を使おうとしたが、武神と大神に止められた。
この機械人形と人種は当たり前だが、血の繋がりはない。だが、この二人の絆は
「オトサン…」
【血より水のほうが濃いようだ】
ユーズレスはブルーの瞳を何度も点滅した。
二人にとっては数十年振りの【ボール遊び】だが…この親子に【準備運動】は必要無さそうだ。
神々は大神を見る。大神は何も言わないが、神々(子ども達)を見回して優しく微笑んだ。2つの月(女神とインテグラ)がウェンリーゼを優しく照らす。
ユーズレスはボールマンとその後ろにいるユフト師を見る。ユーズレスは記録する。二人が一緒に機械人形に微笑んだことを…
魔道機械人形ユーズレスはブルーの瞳から赤の瞳を点滅させた。
第一部 完
いつも読んで頂きありがとうございます。急ですが、第一部は完結です。プロットの練習で始めた作品でしたが、文字数二万を目標にしてましたが、皆さんの応援もあって十万文字いきました。
最近、アクセス解析という機能を覚えたせいで、アクセス数とか気にしちゃってちょっと迷走してるので一旦小休止しようかと…
今後の予定は後で活動報告に記入しときます。
それとは別に作者の励みと創作意欲向上になりますのでよろしかったら、ブックマーク、いいね、評価等して頂けたら幸いです。
あんまり長く休載してたら応援のコメ下さいね笑
それでは皆さんも良い夢を…




