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8 世の中そんなに甘くない

1


 三日後 パンドラの迷宮 付近の畑



「全然、味がしないメェェェ」


『《鑑定》……土壌の魔力濃度はまだ、濃いですね』 


 補助電脳ガードは「ご重傷様」とでもいうようにアナウンスした。




 食料が無くなってからのクリッドの行動力は凄まじかった。


 クリッドはほとんど農業の知識はなかったが、『秘密の部屋』にある『ビックデーター』から、荒れ地でも育てやすい作物』と検索した。


 サツマイモ、キャッサバ、ジャガイモ、カブ、大根、ニンジン、ネギ、ニラ、シソ、が対象として出た。


 クリッドは、サンプル室からこれらの種類の種を持って地上に出た。


 ユーズレスと補助電脳ガードは「もう少し勉強してから」といったが全く聞き耳を持たなかった。クリッドは「メェェェ! 」と叫びながら素手で大地を耕した。そして、種を蒔いた。


「早く出来ないかなぁ」


 クリッドはウキウキとしゃがんで一日中自分で耕した畑を見ていた。ユーズレスと補助電脳ガードは純粋なクリッドに「食べられるまで数か月はかかる」とは言えなかった。




「生えてきたメェェェ」


 だが、予想に反して畑からは一晩で芽が出た。そして、三日後には収穫可能になってしまったのだ。


「大量だメェェェッェェ」


 クリッドはウキウキだった。


 ユーズレスはその場で調理器具と水をバックパックの四次元から取り出して、簡単に調調理した。まずは、クリッドの好きな『ジャガバター』を作った。


 クリッドは本当に嬉しそうにジャガバターを食べたが、不思議なことにバターの味はするのだが、素材の味は全くしなかったのだ。


「なんでだメェェェ! 美味しくないメェェェ! 」


『クリッド、大変に言いにくいのですが、大気に比較して土壌は未だに魔力濃度が高いのです。もしかしたら、作物が急激に成長したのはその影響かもしれません。急激な成長の代わりに味が比例して落ちたとか……でしょうか』


「なんだメェェェ! 全然意味がないメェェェッェェ! 」


 クリッドが空しく叫ぶ。


(なあ、ガードもしかしてこの野菜って物凄い純度の高い魔力触媒なんじゃないか? )


 ユーズレスが、野菜を持ちながらいう。


『《鑑定》! ! ああああ! これは不味いですね! 野菜一個で第一級魔石の純度があります』


「そんなんじゃないメェェェ! 求めていたのはこんなんじゃないメェェェッェェ! 」


(種植えるだけで、一晩で上級魔石って時代が時代ならお金の匂いしかしない)




 クリッドは騒いでいたが、補助電脳ガードから言わせれば管理さえしっかりすれば、作物が土壌の魔素を引き抜いてくれるので、作物として扱わなければ相当にコスパのいい霊薬のようなものだった。


 ただし、この野菜の純度では人種には魔力の過剰摂取になり人体に影響が出るのでお蔵入りとなる。


「全然! 意味ないメェェェッェェ」


 クリッドの食楽園は夢のまた夢だった。


 その年に食用とは別に、多くの作物を植えた。味はともあれ、土壌から魔素を抜いてくれるので、地上の浄化には一役買ってくれた。魔力芳醇な作物の用途は、食用以外では使い道は多いのでしばらくは死蔵となるがいずれ役に立つときがくるであろうと補助電脳ガードは思考した。




2


 十年後(三十年後)


「また、負けたメェェェッェェ」


(クリッド、弱すぎる)


 クリッドとユーズレスはカードゲームを楽しんでいた。


 クリッドとユーズレスはダラけた。地上の作物生産計画は順調であったが、やはり味はしなかった。ユーズレスは大根やニンジンなどの根菜類は、調味料で味をつけたり、スープにしてクリッドに出した。少し味気ないがクリッドは「うーん? メェェェッェェ? 」と食べれるレベルだった。少し気の毒に感じた補助電脳ガードは、素材型の迷宮である『ダイアン迷宮』を教えた。この迷宮は四十階層の中規模迷宮であるが最下層にはトラップがあるので、大事を取って三十階層まで攻略する案を出した。


 ダイアン迷宮の魔獣である魔牛は食用としても可能で、深層に行くほど美味とのデーターがあった。


「肉!肉!肉! 肉だメェェェッェェ! 」


「グモ? グモ? 」


 クリッドは狂ったよう魔牛を乱獲した。ユーズレスと補助電脳ガードが引くほどのレベルだった。


 補助電脳ガードとの約束通り、三十階層までの攻略とした。魔牛はクリッドのシルクハットの『四次元』とユーズレスのバックパックの『四次元』に収納した。控えめにいって、五百体程度の魔牛の肉が手に入った。


 ユーズレスはクリッドに魔牛のビーフシチューを作った。野菜の旨味は染み込まなかったが肉が追加されたことでビジュアルはかなりのものだった。幸いなことに、高級ワインが隠し味になったようだった。


「ウンメェェェェェェエッェェェッェ! 」


 クリッドは甦った。


 それから、クリッドは魔牛の半分は冷凍にして、半分は燻製肉と、ハンバーグやソーセージなどの加工品にした。


 手順は『ビックデーター』から動画で学習していたが、所詮は素人仕事なので多少は失敗したがご愛敬だろう。


 食料問題が解決したら、クリッドは気が抜けたのかカードゲームを始めた。古来のゲームで、カードに魔獣の絵が描いてありそこには『戦闘力』『レア度』『名前』等が書かれている子供向けの玩具である。レア度が高いほど、カードに加工がしてあり、表面がキラキラに光るものや、『名前』が黄金で書かれているものはクリッドの心をくすぐった。


「きたメェェェ!『雷帝バルレ』! 」


(こっちは『土亀レーベル』! )


「また、負けたメェェェ! 」


 後にこのカードゲームが、『悪魔遊戯』に代わり、神々と悪魔を巻き込むのは少し先の話である。

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