プロローグ
機械と悪魔 プロローグの続きです。
前回は、クリッドが作ったカードによる魔獣の召喚からの続きです。
魔界大帝が激レア『天王鳥ラーロット』を引き当てました。
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悪魔城
「召喚するぞ! こい! 天王鳥ラーロット! 」
魔界大帝がカードに精神力を注いだ。
七色の光が悪魔城を包み込んだ。
「来ましたよ! 第一位階が! 」
クリッドが魔界大帝をあおった。
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお! えっ!?」」」
「ピヨピヨ」
光が収束した先には、一羽のヒヨコがいた。
「……ヒヨコ? 」
魔界大帝の開いた口が塞がらない。
「ピヨピヨ、ピヨピヨ、」ピヨピヨ」
ラーロットが魔界大帝に一生懸命寄ってくる。
「おおお! おめでとうございます! 父上、どうやら、ラーロットに気に入られたようですね」
クリッドが祝福の言葉を贈る。
「あああ、我が息子よ。ありが……とう、これが、一位階の神獣? いや、見た目で判断しては」
「ウォン」
灰色悪魔の第三位階『古狼ギグナス』がラーロットに向かって吠えた。
「ピピピピピピッ、ピヨーン、ピヨピヨ」
ラーロットは泣いた。
「ああ、説明不足で申し訳ございませんでした。実は、第二位階以上は成長型の魔獣なのです。第三位階までは完成されておりますが、第二位階からは育成によって自分好みにできますよ」
「育成? 育成とはなんだ? 」
魔界大帝を始めとした他の悪魔も混乱した。悪魔は基本的に、闇から生まれるがすべて成熟体として誕生する。生まれながらに格が決まっている。そのために、悪魔は『育成』や『成長』『世話』という概念がないのだ。
「ラーロットは、今はまだ何も知らない、分からない、弱い存在です。それでこそ、我々が息を吹きかけるだけで滅される雛です」
「ピイピイ」
「そんなもの、無価値ではないか」
「ピピピピ」
「今はそうでしょうね。何の役にも立たない。自分で自分の世話もできません。餌をやらなければ死にます。床を用意しなければ死にます。存外に扱えば愛情不足のストレスで死にます」
「これのどこが当たりなのだ! 目障りだ! 」
魔界大帝の機嫌がどんどん悪くなる。
「本当に目障りでしょうか? よーく、見てあげて触れてみて下さい」
「こんなもの、うっ」
魔界大帝がラーロットを見つめる。
「ピピピピピピ」
「なんだ、この胸をくすぐられる感じは、精神系の魔法か? 柔らかい、温かい」
魔界大帝がラーロットに触れた。
「ピピピピピピピピピピピピ」
「ラーロットも嬉しそうですね。大事にしてあげて下さい。その気になれば、神をも超える神獣ですから」
「「「「は?」」」」
「第一位階の魔獣は成長速度が恐ろしく遅いです。ですが、成長限界を設けていないので、幾億年もかければ神に迫る神獣となるでしょう」
クリッドはいった。
これを聞いた悪魔たちの思考は停止した。
いや、高速で頭をフル回転する。これは、分岐点だ。
生まれながらに序列が決まった悪魔の力関係が、時間をかければひっくり返る事態である。高位の悪魔は危機を感じ、低位の悪魔は希望を持った。
「よーし、よしよしよし」
魔界大帝だけはラーロットを愛でることに夢中だった。
次回からは、クリッドとユーズレスの地上再生編です。




