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7 祝福

1


 それはアーモンドが扉を開けようとした瞬間だった。


 ドッゴーン


 王都に雷撃が走る。


 王宮の天井が何ものかによって破壊された。




「なんだ! 王宮に敵襲! 」


 アーモンドがラザアを庇うように背を向けた。


「ラザア様、アーモンド様、お下がりを! 」


「ご主人様! 」


 リーセルスにラギサキが前に出る。サンタとクロウも臨戦態勢だ。マロンハイケンにも緊張が走った。ハイケンも『赤橙』を抜いて垂直切りを構える。




「ラザアァァァァサマー! 申し訳ございません! 遅れました! ドレスを! ドレスを! お持ちしましたー! 」


「クルルルゥゥゥ」


「えっと! ジュエル!」


 天井からジュエルとフェリーチェが降りてきた。






2


それは、幾千幾億の星や星座全てを合わせても足りない輝くブロンドの髪に、深海の底の一番清らかな部分のみを掬いとったような澄んだブルーの瞳は全てを許してくるようだった。




「素敵! ありがとう! ジュエル! でも、着替えている時間が」


「お任せください! 」


マロンが指を鳴らした。


「「「「おおおお! 」」」」


一瞬でラザアの着脱が終わった。


不覚にも戦闘職であるアーモンドですら、マロンの手技を目で追うことが出来なかった。




『愛寵のドレス』


フェリーチェの羽をベースにした糸に流体金属を絡ませた生地で作ったドレス。


大勢の曇りなき慈愛と願いが込められている。


元の『聖女のドレス』の性能に加えて、所有者の任意によってデサインの変形が可能。ただし、デザインは登録されたパターンのみ。十万人を越えた大規模な儀式により作られた唯一無二のドレス。




「うっうっ、あああ、あぁあああ」




ジュエルは言葉を失った。




「素敵でございます。ラザア様、美の女神すら嫉妬する美しさでございます」




マロンがジュエルの言葉を代弁した。




「まぁ、お上手ですこと、御世辞でも嬉しいわ」




ラザアが『寵愛のドレス』を嬉しそうに見る。その場でくるりと回り鏡で全体を見る。




「どう? ジュエル? 」




「あああ、あああ、尊いですぅぅぅ」




ジュエルはいつものように鼻から血を出した。


皆の緊張が和らいだ。


「でも、このドレス、その……お直しするのに凄く手間とお金がかかったんじゃないのかしら、私に払えるかしら」


「経費なんて全く掛かってないんですぅぅぅ! 人件費も、そのボランティア団体の方々のご厚意で! ああああ、い、今、魔力登録を」


 ジュエルは有無を言わさずに、神速の歩法でラザアとの距離を詰め流れるように魔力登録とした。


 ちなみにジュエルは、嘘は言っていない。素材となった元の『聖女のドレス』はエミリアの形見であり、『流体金属』は木人が寄付したものだ。手間は、ミクスメーレン共和国国民の善意である。善意の数が十万人と規模が多いだけである。




「ラザア、とっても綺麗だよ」


 アーモンドもラザアを素直に褒めた。


「エスコートを御願いするわ」


 ラザアがアーモンドに手を差し出し、アーモンドが手に触れた瞬間だった。


 ヒィヒィィィィィン


 馬の嘶き声とともに、アーモンドの皮鎧と『寵愛のドレス』が共鳴するかのように光り輝く。


「なんだ、これは! ジュエルは! どうゆうことだ! 」


「ああああ、分からないですぅぅ」


 ジュエルもあたふたしている。


 アーモンドとラザアを光が包んだ。




3


 査問会会場


ザワザワ、ザワザワ


「地震か、いや、王宮に攻撃? 」


「馬鹿な! 王宮には多重結界が張ってあるのだぞ」


「世界会議と査問会でいつもより、人が集まったところでの襲撃か! 」


 先のフェリーチェの《雷撃》は会場の皆を不安にさせていた。




「面白い、さきほどマウに止められてウズウズしていたんだ! 」


 獣王が興奮気味にいう。


「おい! フェンズ! レング! 邪魔するなよ! 賊は俺様が叩き潰す! 」


「どうぞ、ご自由に」


「モノだけは壊しちゃダメね。昔それで、タダ働きしたんだから」


「ぐうう、うっ! うるせえ! 」


 ボンドも先のフラストレーションが溜まっているようだった。


「バーゲン! 俺が! 」


「ピーナッツ陛下は十分、遊ばれましたのでお控えください。それと親衛隊の仕事を取らないで下さい! 皆様!どうかそのままで、早急に事態の収拾に動きます」


 戦闘狂達を押さえつけてバーゲンが素早く事態の収拾に入る。




 ギィィィィィィ


 その時、扉が開いた。




4


 カッ、カッカッ


 その足音は会場にいる皆の耳を支配した。


 親衛隊の騎士達は臨戦態勢で、緊張が走る。


「ウェンリーゼの当主ラザア・ウェンリーゼ様、アーモンド・ウェンリーゼ様のご入場でございます」


 マロンが大声で言った。


 会場の皆は視線を奪われた。


 純白の皮鎧を着用したアーモンドは容姿も相まって物語の英雄『聖なる騎士』であった。


「白? あの鎧は灰色だったはずだが《鑑定》」


 ピーナッツが『神の瞳』で《鑑定》を発現する。




『セカンドの鎧』


 アーモンドを主とした白馬の祝福の鎧。


 ラザアの騎士として『寵愛のドレス』に付与された美の女神の祝福を受けた。物理耐性大、魔法耐性大、軽量化、持久力と直線加速度増加の効果あり。


「馬鹿な!装備が進化しただと……人馬一体、魂の祝福だとでもいうのか」


 ピーナッツが驚愕した。


「なんと高貴なる気を発する鎧なのだ」


「白、いや、白銀ともいうのか」


「災いを切り裂きし者に相応しい」


「銀狼、いや、白狼(聖なる騎士)か」


 会場の印象も悪くはない。


「……」


 アーモンドが皆に会釈をした。それはまるで「私は前座に過ぎません」とでもいっているようであった。


 カッ、カッツ、カッ


 アーモンドに手を引かれてラザアが入室した。

ストック全て使いきりました。

また、用意したら投稿します。

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『機械人形(ゴーレム)は夢をみる~モブ達の救済(海王神祭典 外伝)』 https://ncode.syosetu.com/n1447id/
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